第21話

「失礼します」

クロハがミルキィに言う。

「あ、うん」

ミルキィはクロハを見た。

クロハは自分の部屋に戻る。

「一人の女性なのだな」

クロハはシルキィを初めて人間として見た。

今までは白き魔女として強い存在であると捉えていたわけである。

だがシルキィも一人の女性であると実感したのだ。

「水か。霧と化して消えてしまわなければ良いがーー」

クロハはシルキィの心配をする。

この日はそれぞれがゆっくりと休んだ。

朝、ホークはフウを連れて姿を消す。

「何も言わずに行ってしまうのね」

ホークの部屋でシルキィが言った。

「別れも言われていない。良く言えばまた逢えるかもしれない」

クロハがシルキィに言う。

「そうね。彼は元居た場所に帰っただけの様だし」

シルキィはコンパクトケースを見ながらクスクスと微笑った。

そこにはホークとフウが映っている。

二人は出逢ったあの砂漠のテントに戻っていた。

「本当に良かったんですか?あの城を出て来てしまって」

フウがホークに言う。

「平気だよ。シルキィなら逢いたくなれば勝手に向こうから来るさ」

ホークは笑った。

「こんな風にね」

「うおっ!」

「あ」

突然現れたシルキィにホークは思い切り驚き、フウは止まる。

「ここからは居なくならないでね、ホーク」

シルキィがホークに背後から抱きついた。

「居なくなったら捜せや」

ホークは帰り道で手に入れたスペアリブを食べながらそうシルキィに言う。

「そうするわ」

シルキィはホークの頬にキスをするとテントから消えた。

「良くわからない関係ですね」

フウが苦笑する。

「俺も良くわからん」

ホークはウイスキーも飲み始めた。

「寝ますか?」

フウがホークに問う。

「寝たい時に寝て食いたい時に食う。それがここでの生き方さ」

ホークはそう言いながらスペアリブをフウに手渡した。

「はい」

フウもスペアリブにかじりつく。

「姉様」

城に戻って来たシルキィにミルキィが駆け寄った。

「独りにはしないわ。貴方と最初に交わした約束を忘れた事は無くてよ」

シルキィは笑顔でミルキィに言う。

その言葉にミルキィは素直に喜んだ。

食事を済ませるとミルキィは昼寝に入った為、シルキィとクロハは二人きりになる。

「ミルキィの不安を吸い取りましたね」

クロハがシルキィに聞いた。

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