第3話兄神
次に戦いか、模擬戦かをした時に自分の失落に気付くだろう。
妹は「兄様がやらないのなら私がアーミャと結婚する」と言い出す。
「な、なにぃ!」
「私は女神よ?男として人間になるくらいわけない」
アーミャの好みも熟知しているだろうから、ルルティアイナのアタックを、好きな彼女は避け切れないだろう。
「勝ち目がないからやめろぉ!」
そこは自分もじゃあ参戦する、くらいは言ってくれれば良いのにと、ルルティアイナは呆れた目を半分にして、じっとり見つめた。
*
恋人と別れて数ヶ月後、この都市の大きなイベントの一つである競技が行われる。
力試しという項目で行われるそれは、別に言い換えると武闘大会。
闇鍋式、やり方の大会だった。
武器もバラバラ。
男女は別。
大会会場に入るとプログラム通りに進行されていく。
見ていると横から肩を、とんとんとされた。
「え……ルルっ、ルル!?」
現実の世界にいることなど一度もない女神が、そっくりな顔で横に座っている。
「きちゃった」
「き、きちゃったって……外に出なくて良いって昔から豪語してたよね、豪語」
ルルティアイナ、いたずらっ子の笑みで誤魔化す。
「それはそれ、これはこれー」
「でもなんでこの日?」
「あなたを傷つけたやつの、坂道を下さる様を一緒に見届けるためよ!」
既に別れた男、ロレントの失落は決定付けられている。
まあ、自分もそれを重々理解してここにいるけど。
それにしても、加護を剥がしてから人に見られるまで、剣や木刀を握らなかったらしい。
己の強さを把握する期間は、それなりあったと思うんだけど。
分かってるけど、引き受けたから後には引けぬということなのか?
ロレントともう一人は……コトノス。
「えっ、なんでコトノス!?」
コトノスは普通の人だったイメージ。
武闘とは全く関連がない。
「あらぁ、あなたの恋のお相手候補じゃないの」
ルルティアイナはにまりと笑う。
「ん?恋のお相手?」
「ふふ、そうよー」
さらににまにまするルルティアイナ。
それを横目に、コトノスとロレントの戦いが繰り広げられていた。
とは言え、ロレントが瞬殺だった。
試合が開始されて、ロレントが芯のなってない戦い方をしていた。
素人のアーミャでも分かるくらい、モニョモニョしていた。
十秒もせずに一太刀で、やられていた。
「ぐはっ」
と、一撃。
「ぐは!」
二撃。
「ごぼっ!」
三撃も加えられ、最後に顎にくらう。
その間、ロレントは反撃もできずに全てがわずかな時間で行われて、勝敗は見たままの状態で終わった。
あまりのロレントの弱さに観客達がザワザワする。
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