第3話兄神

次に戦いか、模擬戦かをした時に自分の失落に気付くだろう。


妹は「兄様がやらないのなら私がアーミャと結婚する」と言い出す。


「な、なにぃ!」


「私は女神よ?男として人間になるくらいわけない」


アーミャの好みも熟知しているだろうから、ルルティアイナのアタックを、好きな彼女は避け切れないだろう。


「勝ち目がないからやめろぉ!」


そこは自分もじゃあ参戦する、くらいは言ってくれれば良いのにと、ルルティアイナは呆れた目を半分にして、じっとり見つめた。









恋人と別れて数ヶ月後、この都市の大きなイベントの一つである競技が行われる。


力試しという項目で行われるそれは、別に言い換えると武闘大会。


闇鍋式、やり方の大会だった。


武器もバラバラ。


男女は別。


大会会場に入るとプログラム通りに進行されていく。


見ていると横から肩を、とんとんとされた。


「え……ルルっ、ルル!?」


現実の世界にいることなど一度もない女神が、そっくりな顔で横に座っている。


「きちゃった」


「き、きちゃったって……外に出なくて良いって昔から豪語してたよね、豪語」


ルルティアイナ、いたずらっ子の笑みで誤魔化す。


「それはそれ、これはこれー」


「でもなんでこの日?」


「あなたを傷つけたやつの、坂道を下さる様を一緒に見届けるためよ!」


既に別れた男、ロレントの失落は決定付けられている。


まあ、自分もそれを重々理解してここにいるけど。


それにしても、加護を剥がしてから人に見られるまで、剣や木刀を握らなかったらしい。


己の強さを把握する期間は、それなりあったと思うんだけど。


分かってるけど、引き受けたから後には引けぬということなのか?


ロレントともう一人は……コトノス。


「えっ、なんでコトノス!?」


コトノスは普通の人だったイメージ。


武闘とは全く関連がない。


「あらぁ、あなたの恋のお相手候補じゃないの」


ルルティアイナはにまりと笑う。


「ん?恋のお相手?」


「ふふ、そうよー」


さらににまにまするルルティアイナ。


それを横目に、コトノスとロレントの戦いが繰り広げられていた。


とは言え、ロレントが瞬殺だった。


試合が開始されて、ロレントが芯のなってない戦い方をしていた。


素人のアーミャでも分かるくらい、モニョモニョしていた。


十秒もせずに一太刀で、やられていた。


「ぐはっ」


と、一撃。


「ぐは!」


二撃。


「ごぼっ!」


三撃も加えられ、最後に顎にくらう。


その間、ロレントは反撃もできずに全てがわずかな時間で行われて、勝敗は見たままの状態で終わった。


あまりのロレントの弱さに観客達がザワザワする。

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