日々で感じる疑問をカースト上位の妹と議論してみた

清川陽葵

オタクの文学的苦悩

 突然だが、私にかカースト上位の妹がいる。


 いや、転生系の昨今のアニメなどではなくて。リアルで。


 妹のスペックをなんとなく書いてみると、テニス部女子で体型はやせ型。たぶん他人から見たら美人だろう。わぁ、典型的にカースト上位だ。


 一方私は、アニメと文学をこよなく愛するオタクである。

 (ちなみに、私以外に家族にオタクは一人もいない。すごく肩身がせまい。)


 なぜ一世帯でこんなにも差が出るのかとちょっとひがんでしまうが、性格と好むものの違いなので仕方がない。


 さて、今回の議論のテーマは

「なぜオタクが気持ち悪いのか」である。


私「そもそものテーマに異議あり」


妹「いや、あんたが提示したテーマでしょう」


 妹のツッコミも最もなので、コホンと咳払いしてから説明させていただく。


私「いや、そもそもオタクが気持ち悪いって言われているけどさ。

  インターネットの海を漂ってるとね、かわいいオタクの子がたくさんいるじゃな

  い。そういう人を『気持ち悪い』って言う人、少なくない?」


妹「そりゃ、その人たちは気持ち悪くないからでしょう」


妹「それに、見た目がいい」


私「た、たしかに…」


 ひるむな、私!


私「で、でもさ。世間一般的には、オタクって気持ち悪いって言われてるじゃない」


妹「それはさ、オタクの人は気持ち悪いっていう意識があるんじゃない?」


私「それ、もっと詳しく」


 妹は、腕を組んでちょっと考える。うわ、ちゃんと美人だ。


妹「今はさ、かわいいオタクの人たちがたくさんいる。

  でも、きっと昔はそうじゃなかったから、その先入観が残ってるんだよ」


私「はぁ…」


 なるほど、それか。










 ちょっと前まで、オタクは迫害の対象だった。


 いや、迫害は言い過ぎか。


 いい年した中年のおじさんたちが、アニメに夢中になっている形相は、世間一般からしたら本当に気持ち悪いらしい。

 


 当時、アニメは子供が見るもので、大人が見るなんてもってのほか、という考え方が主流だったらしい。そこから、「子供向けなのにいい年してアニメを見るのは気持ち悪い」という考え方が生まれた。少数派に対する迫害だね。


 自分が好きなものを「好き」と言えない時代。

 私はこの時代に生まれてほんとによかった。




 妹をはじめとするカースト上位の中にはその文化がまだ根付いてしまっているようだ。


 …いや、ちょっと待てよ。


私「ね、アニメ好き?」


妹「好き」


私「オタクって気持ち悪い?」


妹「…気持ち悪い人もいるんじゃない?」


 お、妹、濁したな。


私「なんであなたもアニメ好きなのに、アニメ好きのオタクは気持ち悪いって思う

  の?」


妹「アニメとオタクは関係ないよ」


 確かに。関係ないな。


私「じゃあ、アニメ見ている人が気持ち悪いんじゃなくて、気持ち悪いって言われ

  ている人自身が気持ち悪いってこと?」


妹「そうじゃない?」


 うわ。残酷だな。天使のテーゼもびっくりだ。


妹「さっきもあったけど、アニメ好きのオタクで、かわいい子もたくさんいるよ」


私「じゃあ、何でカースト上位層だけにオタクを馬鹿にする文化が残ったんだろ

  う?」


妹「カースト上位層はカースト上位層なりに頑張っている人が多いんだよ」


私「それ、詳しく教えて」


妹「言葉にすると残酷なことになるよ」


 上等だ。天使のテーゼでもホロコーストでもどんとこい。


妹「あのね、カースト上位って、基本的に『他人からどう見られるかががすべて』。

  つまりね、美貌や仲間の結束が重要なの。

  

  それで、きれいになろうと努力をたくさんしている人や、少しでも人当たりをよ

  くしようとしている人が多い。


  でも、オタクの人たちは、そんな努力を全くしないで自分たちだけで楽しくして

  るワケ。それってちょっとモヤモヤしない?」


私「なるほど、モヤる」


妹「そのモヤモヤをもとに、共通の敵をつくって結束感を高めてるの」


 なるほど。納得できた。


私「で、そのモヤモヤの原因がない、努力してかわいさを手に入れたかわいいオタク

  は、その『敵』の対象にならない、と」


妹「そういうこと」



私「そうかそうか。なんかグロいね」


妹「人付き合いってそんなもんだよ」


私「えぇ…。コミュ障加速しちゃう…」


人間ってグロいな、と改めて思いました。

  

  

 

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