俺たちの青春に天使なんていなかった
紫龍
プロローグ
高校卒業なんて、別にどうでもよかった。
夢があるわけでも、将来に期待してるわけでもない。
強いて言うなら——今の自分に、未来の話をする資格なんてないと思ってた。
でも、それでも最後にもう一度くらいは、
どうしようもなく騒がしくて、バカで、優しいあいつらと、ただ笑っていたかった。
だから、卒業旅行の誘いを断れなかったのは……きっと、俺の中にまだ“青春”が残ってたんだと思う。
そして、俺は今——
…
……
………
「ぐえぇ……おれはもう……ダメだ……」
船の甲板の隅で、俺はぐったりと倒れ伏していた。潮風と揺れと吐き気の三重奏にノックアウトされ、完全に戦闘不能。
「おい陽翔(はると)ー!まだ出航して一時間も経ってへんぞ!?気合い足りひんのちゃうか、気合いがァァ……オロロロロロ……」
橘 颯馬(たちばな そうま)、テンション高めに叫んだ直後、自分も同じようにうずくまって盛大に海に吐いた。
「お前もかよ……」
俺のツッコミがかき消されるほど、船はゆっさゆっさと揺れていた。
「今どんな気持ち?ねえ今どんな気持ち!? 拙者、今まさに絶好の撮影チャンスと察知したでござるよ〜〜!!」
スマホを構えてニヤニヤしているのは、西園寺 碧(さいおんじ あおい)。
このオタク、最近“拙者”って自分のこと呼ぶようになってしまった。いろいろと終わってる。
「船に乗る前に酔い止めを飲まなかったのが敗因ですよ。千堂陽翔、判断ミスです」
そう言いながら、藤堂 慧(とうどう けい)が俺の目の前に差し出してきたのは——
「……それ、胃腸薬じゃねぇか」
「ちなみに、これもあります」
今度は謎のカプセルをポンと掌に載せてくる。
「……それ、効くやつ?」
「さあ?どんな作用が出るかは、試してみないと分からないですね。路地裏を歩いていた時にガタイのいい外国人に渡されました。凄く飛べるらしいです」
「悪い事は言わない。絶対に飲むなよ。お前の人生が飛ぶぞ」
「陽翔殿、今のやり取り、完璧に録れてるでござるよ!TyouTubeの企画で使えるでござるな〜〜!」
「アップすんな」
そんな感じで、ツッコミと吐き気が交互に押し寄せる中、俺たち4人を乗せた船は、ゆっくりと“常世島(とこよじま)”の港へと近づいていった。
……これが千堂陽翔(せんどう はると)、いや、俺たちの“遅咲きの青春”の始まりだった。
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