## パート7: 開戦!昇格試験ダンジョン
昇格試験当日。空は快晴だったが、僕たちの心は鉛色の雲に覆われているような重たい緊張感に包まれていた。僕たちはまだ薄暗い早朝に安宿を出発し、他の受験者たちに遅れを取らないよう、指定された集合場所へと急いだ。
目的地は、ブレイクポイントの北門から岩だらけの道を一時間ほど歩いた場所にある、「試験用ダンジョン『試練の洞窟』」の入口前だった。その名の通り、岩山の麓に穿たれた洞窟の入口は、ギルドによって管理されているらしく、鉄格子のような頑丈な扉が取り付けられ、その前には数人のギルド職員が待機していた。
そして、僕たちが到着した時には、既に他の受験パーティが集まり始めていた。ざっと見渡したところ、僕たちを含めて全部で5パーティ。各パーティは3人から4人で構成されているようだ。どの顔も、Fランクからの脱却を目指すだけあって、それなりに場数を踏んできたような、あるいは必死さが滲み出ているような、独特の雰囲気をまとっている。
その中に、やはり奴らはいた。
「……ちっ、やっぱり来やがったか」
僕たちに気づいたリーダー格の髭面の男が、あからさまに舌打ちをし、唾を吐き捨てた。他の二人も、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべてこちらを見ている。隠そうともしない敵意が、ひしひしと伝わってきた。
他のパーティも、僕たち――薄汚れた装備の僕と、奇妙なセーラー服を着た小さな少女二人――の組み合わせを見て、訝しげな視線を向けたり、明らかに侮るような目で見たりしている。ゴビーは僕の後ろで唸り声を上げそうになっているし、ぷるなは僕のマントに顔をうずめるようにして隠れてしまった。居心地の悪さは最高潮だ。
(これが試験……始まる前から、もう戦いは始まっているのか)
ピリピリとした空気が張り詰める中、やがて集合時間になった。すると、待機していたギルド職員たちとは違う、威圧感を放つ人物が一人、静かに現れた。
(……やっぱり、ドワイトさんか)
僕の予想通り、試験官として現れたのは、あのドワイト試験官だった。彼は厳しい表情で集まった受験者たちを一瞥し、僕たちのところで一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、視線を鋭くした気がした。
「時間だ。これより、FランクからEランクへの昇格試験を開始する」
ドワイトは抑揚のない、だがよく通る声で言った。
「試験内容は先日掲示された通り。制限時間は、日没まで。この『試練の洞窟』最深部に到達し、『昇格の証』を持ち帰り、無事帰還すること。証は複数あるが、持ち帰ったパーティの中から、総合的に評価し合格者を決定する。健闘を祈る、などとは言わん。実力で掴み取れ」
彼は淡々と、しかし有無を言わせぬ迫力で説明を終えると、入口の鉄格子を開けるよう職員に指示した。ギィィ……という重い金属音と共に、洞窟への道が開かれる。
「……始め!」
ドワイトの短い開始の合図。それが、号砲となった。
一番近くにいたパーティが、弾かれたように洞窟の中へと駆け込んでいく! それに続くように、他のパーティも我先にと入口へ殺到する。もちろん、あのガラの悪い三人組も、僕たちを睨みつけながら先を急いでいる。
「よし、俺たちも行くぞ! 遅れるな!」
僕はゴビーとぷるなの手を引き、他のパーティから少し遅れて、しかし確かな足取りで洞窟の中へと足を踏み入れた。
ひんやりとした、湿った空気。そして、完全な闇。松明に火を灯すと、荒々しい岩肌の通路がぼんやりと浮かび上がる。
いよいよ始まった。僕たちの実力、チームの絆、そして僕のリーダーとしての資質が試される、昇格への試練が。
緊張と、そして武者震いのような奇妙な高揚感を胸に、僕たちは薄暗いダンジョンの奥へと、第一歩を踏み出した。
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