第2話 広場にて

「滅亡だってよ」

「これ書いたの勤続2年目のペーペーだってよ」

「それ以上の奴らは軒並み女神様の罰を受けるってこったろ。さぞかしうまい汁を吸ってきたんだろうなあ」

「お陰で滅亡するんだが」

「こういう固い文章は上手いのに、最後に俺らの行く末をお祈りしてるところが甘ちゃんっぽくて草」

「草ってなんぞ?」

「ネラー地方の方言で笑えるって意味だな」

「ああそういう」

「とにかくこのローウェルきゅんってのが甘ちゃんなのは伝わってくるな」

「あら、私はこういう真っ直ぐな人は好きよ」

「お前は男だったら誰でも好きだろうが」

「あ?アンタそれ自分の妻に言うこと?」

「やーめーろ。喧嘩してる場合じゃねーだろ」

「なんたってメツボウするんだからな」

「他人事で草」

「お前だって自覚ねえだろうが」

「まあな」

「他人事じゃねえんだよなあ」

「…………」

「…………」

「…………」


「それよりよ、お前らどうすんだよ」

「どうって?」

「どの国に行くのかだよ」

「ああー」

「それなー」

「それなじゃなくってよ、どの国が一番いいんだ?」

「わからねー」

「俺もー」

「私もー」

「ベラスケスはどうだ?」

「軍事や経済、どれをとっても文句なしに世界一の超大国」

「ただし税金バカ高い上に俺らが難民で行ったとしてもほぼチャレンジ不可能。ずーっと難民キャンプでそのままお荷物扱いだわな」

「ダメじゃんか」

「ダメなんよ」


「龍国ってのは?」

「チェイン思想でガッチガチ。国民は皇帝の所有物という考え方。自分の家を持つことはできるが、開発するから出てけって国から言われたら出てかなきゃならん」

「仮に戦争が始まったら国民はそのまま使い捨ての前線兵になる」

「ダメじゃんか」

「ダメなんよ」


「神聖なんちゃらってのは?」

「神聖アルカディア王国。100年前に魔王倒してアンデッドになった勇者達が建国したっていう超キチガイ国家。税金は3カ国の中で一番安い。チェイン以上の独裁体制だが3カ国の中で唯一ここ100年で戦争をしていない国だな」

「平和なんか?」

「戦争する前に勇者が暗殺に来るらしい」

「最悪じゃんか」

「魔王よりも強い奴がフットワーク軽いとか地獄で草」

「しかも勇者は1人じゃない模様」

「ダメじゃんダメじゃん。もう俺アルカディア行くわ」

「マジで?結論おかしくない?」

「国民の半分ゾンビだよ?」

「税金安いってのが一番だな。最悪また脱出して他の国に行くよ」

「あーそういう手もあるのか」

「帰化の条件とか確認しないとなんとも言えんがな」

「じゃあ俺もアルカディアかなー」

「私もー」


「滅亡まであと半年あるわけだけど、いつ頃出ていく?」

「んー、まあとりあえずは処刑を見物してからだな」

「あーね。女神様を怒らせた馬鹿どもの顔でも見てかなきゃやってられないかも」

「俺達も同罪なんだが」

「妖精姫のこと知らなかったもんな」

「んなこと言われてもってのは正直あるけどね」

「知らなかったもんはしょうがねえや」

「他人事で草」

「ぶっちゃけ他人事だわな。国のトップが知らねえことを俺らが知ってるわけねえもん」

「家畜と大差ないわけですし」

「自虐やめて」

「ま、せめてお偉方に石でも投げてケジメつけようや」

「女神様のお怒りを鎮めるためって書いてあるしな」

「んだねー」


「俺的にはミランダ様が自害してたってのがショックなんだけど」

「あーね」

「人気あったもんな」

「俺あの人に握手してもらったことあるんよ」

「マジ?うらやまー」

「だからぶっちゃけ仇を討ちたいってのもある」

「石投げるくらいしかできないけどな」

「それでもよ」

「だな」

「処刑は誰から?」

「わからん。来月の頭から順次ってことだから取り合えず毎日行くわ」

「殺る気に満ちてて草」

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