捨て子のアギト


 長寿の老人は、生きているのか死んでいるのか分からない。

 壁に立てかけた杖、本人は前後に揺れる椅子に座っている。目を閉じていると眠っているのか死んでいるのか分からないが、百歳を既に越えている老人が、今更ぽっくりと逝くこともないだろう。


 今死ぬなら随分と前に死んでいるはずだ。


 目を覆う白い眉毛、そして同じく白い口周りの髭が特徴的だ。

 まるで山籠もりでもしてそうな見た目である。


「じいさん、今日も生きてるか?」

「……アギトか。あぁ、今日も生きてしまった……」

「相変わらず長生きだな。なにかオレが手伝うことあるか?」


 赤髪の少年だった。

 彼は赤ん坊の頃に拾われ、目の前の老人に保護された。彼にとっての里親だ。


 気づけば、老人に育てられていて……その老人の見た目は一切変わっていない。さすがに年齢のこともあり、椅子に座っていることが多くなったが……。


 忘れっぽくなるとか、歩けなくなるとか、そういった不具合は今もまだない。


「手伝うことか……特にない。アギトは子供らしく外で遊んでいればいい……」


「そういうわけにもいかないだろ」


 里親である。たまに町の人たちが様子を見にきてくれて、ついでに家のことも色々とやってくれるが、本来ならアギトの役目なのだ。


 アギトは七歳だが、充分に大人っぽいとよく言われる。個人の成長速度が早いこともあるが、環境のおかげもあるだろう。


 親がこうも弱々しいと、子供が「しっかりしないと」と気合を入れるものだ。


「オレはあんたの子供なんだ、遠慮するなって」


「それは儂のセリフでもあるがな。……遠慮しなくていい」


「してないよ。貰えるもんは貰っておくし、充分貰ってる。オレは恵まれ過ぎてるだろ」


 捨て子だったのだ。拾われていなければ、アギトはこの場にいなかった。既に死んでいた運命だったのだが……、親切な冒険者に拾われ、アギトは生きてしまった。


 もちろん生きることができて不満はないが、誰かに強く、なにかを強いてしまっているのではないか、と何度も思ってしまう。


 目の前の里親に、不要な労力をかけてしまっているのではないか、と。


「恵まれてるんだ、どこの誰かみてえに恩を仇で返すことはしない」


「…………儂はそれが心配だよ」


「え?」


 老人は言ってから目を瞑り、すう、と寝息を立てた。


 ぐったりしているので生きているのか死んでいるのか分からないのが気になるが、顔色が悪いわけではないので生きているだろう。


 しつこいと言われるほど生きている長寿だ、そう簡単に死ななそうだ。

 殺されても死なないかもしれない。


「まさか、あんたより先にあの人が逝くとはなあ……」


 アギトと同時期に拾われた捨て子……名はロック。

 彼の親である冒険者が、つい最近、亡くなったと報告された。


 高難度の依頼を受け、凶暴な魔物の餌食となったのだと言う。彼のレベル適性は合っていたのだが……、適性を凌駕する凶暴な魔物だったのかもしれない。


 実際に、現場にいってみなければ分からないが、不確定な要素で足をすくわれ事故を起こし、死んだとも言える。


 高レベルがそう簡単に死ぬわけがない、という先入観は捨てた方がいいだろう。


 魔物の強さも年々上がってきている。東の方に依頼が集まっているらしく、冒険者たちは東へ流れていっている。どうやら東の世界樹が、毒に犯され真っ黒になってしまったようで……?


 反対であるここ西の町には影響が少なかった。


 逆側へ向かえば近いが、海しかないのが助かった。誰が名付けたのか、「魔王」と呼ばれる魔物の王が、東からゆっくりと侵攻してきているらしい……。


 いずれは、この西の地までやってくるのだろう。

 その前に冒険者たちがなんとかしてくれる。くれる、はずだ……。



 眠る老人に毛布を被せたところで、扉がノックされた。


 許可も出していないのに扉が開く。いつものことだ。近所付き合いが多く、町全体が家族のような親しい間柄であるため、最低限のノックで構わない。


 慣れてしまえば気にしないが、男女の逢瀬を目撃した時はどうするのだろうか。付き合いが長ければ目撃しちゃったことも気にしないのだろうか。


「アギト、とおじいちゃん。……え、おじいちゃん死んでる?」


「生きてるよ。……いや分かんねえけど」


 家にきたのはファーフナだった。


 アギト(ロック)の幼馴染であり、男勝りの少女である。


 肩上にある短い金髪と、日に焼けた黒い肌。元々黒いらしいが……、彼女の母親が黒いので遺伝だろう。ファーフナは長い足と細い腕を出した大胆な格好でアギトを手招いた。


「なんだよ」


「面白いものが見れるよんっ」


 内容を言うつもりはないようだ。言ってしまうとアギトが動かないことを知っているからだろう。はぁ、と溜息を吐き、諦めてファーフナに引きずられることにする。


 死んでるかもしれない老人に、「いってくる」とだけ伝えて、家を出た。



 ちなみに、老人をおじいちゃんと呼んだファーフナはその通り、老人の孫である。


 ちなみにちなみに、老人は元町長だ。今の町長はファーフナの父親である。



 アギトたちは扉を出て、二階部分から体を乗り出すように下を見る。

 そこには、アギトと同じく捨て子だったロックと――


 彼よりも身長が高いオレンジ色の少女がいた。


 彼女は長い髪を揺らし、腰に手を当て、ふんぞり返るように。


 色白な彼女が、不機嫌を隠しもせず――


「で、あたしを呼び出して、なに?」


 アギトは違和感に気づいた。


 いつもならもっと高圧的にロックをいじめ……、いや、過激なコミュニケーションを取るのだが、今日はおとなしい。

 いつもやられっぱなしのロックも、今日は無愛想な表情はなく、真っ直ぐ、少女を見つめている。


「きてくれてありがとう、ティカ」


「……今日は素直ね。ねえ、逆に怖いんだけど、その…………」


 歯切れが悪いティカだった。


 彼女は毛先を指でくるくるといじりながら、言いたいことがあるけど言えない、のようないじらしい反応だ。


 その程度のものであればいいが、彼女の苦虫を嚙み潰したような表情が気になった。もしかしたら、ロックにいつも通りに強く出られないのは、言えない「なにか」のせいかもしれない。


「今日はティカに言いたいことがあったんだ」


「へえ……聞かせてよ」


 覚悟を決めたようなティカが、ぎゅっと目を瞑り――――



「僕は、ティカの態度が大嫌いだ! 理不尽に強く当たってくるところが、周りを巻き込んで、上から命令して、会話もしないで暴力に訴えてくるところがっ、僕は大嫌いなんだっっ!!」



「…………」


「…………ふぅ」


「えっ、終わり!? 一回あたしのことを落としてから褒めて上げる流れじゃなくて本当に嫌いってことを言いたかったの!? こんな逆告白されたの初めてだよっ!」


 寸前まで、逆ではないことも想定していたあたり、彼女は自分がロックにしてきたことをすっかりと忘れていたらしい。

 天地がひっくり返ってもそれはないだろう……、ロックが重度のマゾヒストでない限りだが……。


 しかし、擁護できる部分もある。ロックの態度が問題でもあったのだ。話し合いさえまともにできなかった。だからと言って暴力で訴えるというのは間違っているが、理不尽をする理由もあったわけだ。


 それにしても、急な変化だ。


 ロックは今まで誰にも心を開かず、周りを警戒し、寄せ付けなかったのに……。町全体が家族のように仲が良いこの町では異端扱いだ。


 それも個性であると優しい町の人たちは納得していたが……、捨て子という環境を加味しても、甘やかしている、とはアギトも思っていた。


 こっちはがまんして人付き合いをしているのに、お前は楽をしやがって、と思わなかったと言えば嘘になる。

 かと言って、ロックのような見える者の全てが敵である、と刷り込むのも疲れる生き方だったが。


「はー、スッキリした」


「こっちはモヤモヤなんだけど……ッ、どういうつもりなわけ!?」


「僕はもう、なにも隠し事をしないよ」


 ――ロックは、ティカに向けて言っている。


 なのに……アギトはまるで自分が刺されたみたいに、強い痛みが走った。


「全部をさらけ出すつもりだ。聞いてくれればなんでもする、ケツの穴だって見せるよ――だから、ティカ。君のことも知りたい」


「…………どういう心境の変化? いや、……ううん、言わないで、いいから……」


「父さんが死んだから」


「――言わなくていいって!!」


「いいや、言うよ。父さんの教えだ。信頼を得るためにはまずは自分が相手を信頼しなければならない――じゃないと、相手は僕を信頼なんてできるわけがないんだからさ。だからなんでも見せる、なんでも答える。僕はこういう人間だと示す。全てを見せるから、ティカも、見せられるところを見せてほしい……そして、家族になろう」


「……っ、それ、は、どうせ町の一員として認めてほしいってことでしょ?」

「もちろん」


「…………なら、もう家族でしょ。あの人の子供なら、町の人は誰だってあんたのことを家族だと思ってる。厄介だと思っても、町から出ていけと言う人はいないんだから」


「それでも」


 中性的な顔立ちのロックが、今だけは男の顔で、ティカを見る。


「甘えたままじゃダメなんだ。ひとりひとり、僕から話をするつもりだよ。今まで思っていたことを全部ぶちまける……もちろん、悪口もあると思うけど……本音なんだ。言うべきことじゃないかもしれないけれど、隠し事はしたくない。僕、器用にできないんだ。だから――」


 嫌われることも覚悟の上で。


 ロックは、全てを受け止めることを選び、逃げなかった。あらためて、再スタートする。町の全員と家族になるために、信頼を勝ち取るために。町の全員のことを、信頼する。


「――ティカ、これからよろしく。今までごめん、そしてありがとう。僕を見捨てたりしなかったことを嬉しく思うよ…………大好きだ」


「っ」


「また、いつもみたいに強く当たってくれて構わないから……って、ティカ!? なんで泣いて――――」


「あたし、なの……」


 膝から崩れ落ちたティカがぽつりと呟いた。……あたしのせい。

 もちろん、ロックに思い当たることはない。上から覗いていたアギトも、ファーフナも、なんのことを言っているのか分からず……だからティカが、きっと墓場まで持っていくつもりだった秘密なのだ。


 だけど、抱えたまま逃げることはできなかった。それだけ重いものだったのだから。


「ティカ……? その、大丈夫……?」


「あたし、なの……」


「?」


 ティカの口が、ゆっくりと開いた。


 震える声が、ロックに届く。




「ダーマ、が、死んだの……きっと、あたしのせいなの……っ」





 人族には【センス】というものがある。


 魔力を消費しない魔法のようなもの――である。


 人には最低でも三つのセンスが備わっていると言われていた。センスの解放には三つの方法がある。――世界樹と呼ばれる場所に住む、女神にお願いして解放してもらうか、命を失うかどうかの危機的状況に陥ることで自然と発現するか。


 もしくは、多くの(強い)信頼を集めることで解放されるか、だ。


 ティカは知らぬ間に解放されていたようで、彼女のセンスは『料理』だった。



「料理って、ティカが作るあの料理だよね……?」


「そうよ、評判が悪いあの料理よ……っ」


「僕は美味しいと思ったんだけど」


「嘘つきなさいよ。……あんたと、ダーマだけよ。あたしの料理を美味しいって言ってくれるのは。よくもまああんな燃えカスみたいな黒い物体を食べられるよね……、卵の面影なんかないじゃない……ッ」


「でも味はちゃんと卵だったよ」

「舌おかしいでしょ」


 言いながらも、ティカの口元は緩んでおり、言葉にしなくとも嬉しいのだろうと分かった。


 その感情は強くロックにも伝わっており、見ているだけでロックも口元が緩んでいる。


「ティカのセンスは、分かったけど……それでどうして父さんが死んだことがティカのせいになるんだよ」


「……あたしの料理、【レベルアップ】ができるみたいなの――」


 レベルアップ。生物には必ず存在している成長を数値化したものだ。


 過去、レベルアップは戦闘経験を積むことでしか上がらなかったが、現在ではレベルアップの条件は個人で変わっている。


 戦いを繰り返すことで上がるものではなく、本人が恐怖を感じているものに立ち向かう、過去のトラウマを乗り越えるなど、現在の自分では決して上がれない壁を上がることで、レベルアップすることができる。


 つまり冒険者たちのレベルが上がることが稀なのだが、短期間でいくつものレベルアップをした者がいた――それが、ダーマだったのだ。


「高レベルになったダーマは、北のギルドに呼ばれたでしょ……高レベルの冒険者を必要とされていたから」


「うん……」


「ダーマのレベルアップはあたしの料理で上がったもの。数値が上昇しても、ダーマが今の自分を越えるほどの経験をしたわけじゃない。本当に、ただ数値が上がっただけのダーマじゃ、強くなった魔物に勝てるわけないんだよ……ッ」


 たとえレベル5でも、レベル2の経験しかなければ、レベル5推奨の魔物に勝てるわけもないのだ。

 当時の彼では、積み重ねていた経験では圧倒的に足らず、力不足だった。プロの現場に素人が混ざったようなもので、彼はあっという間に魔物に食い千切られてしまったのだ。


 もしも、レベルが上がっていなければ。


 もしも、トラウマを乗り越え、自分よりも高い壁をよじ登る腕力と足腰を持っていれば、ダーマは…………死ななかったかもしれない。


 自覚していなかったとは言え、ティカが、料理を振る舞わなければ。


 ダーマが気を遣って食べていなければ……ダーマは今も……。


「あたしのせい……」

「違うよ」


 ティカの肩に、ロックが手を置いた。


「ティカのせいじゃない」

「…………でも」


「レベルが上がったことで調子に乗って、呼ばれてほいほい飛び出していった父さんが悪いんだ。それに、現場で力量を分からず突っ込んで、魔物に食べられた父さんが悪い。ティカじゃない、全部、父さんが弱かったせいなんだよ。自業自得だ。冒険者なら、引くことも実力だったんだ」


「……そ、その意見に、あたしが、……だよね、なんて言えると思うの……?」


「少なくとも、父さんはティカのせいになんかしない。あれは全部自分の実力不足だった、って言い張るよ。僕は実際、そうだろうと思うし」


「………………」


「ティカのせいじゃないんだよ。それでも責任を感じるなら、どうしようか……、ティカは料理をもっと上手くなるべきじゃない?」


「あたしがセンスを使えば、他にも犠牲者が出るでしょ……。あたしは料理を作るべきじゃないのよ……」


「そんなことないよ。だって操作できるはずなんだ。僕、ティカの料理を食べてるけど、レベルアップなんてしてないよ?」


 確かに、ロックはレベルアップしていない。ダーマとロックの違いはなんだ、と言われたら、色々あるが……。レベルアップしている、と、していないの差は、気になるところだ。


 ティカが上昇分を操作できるようになれば、料理を食べることでレベルアップ、でなくとも、魔法耐性がつくような効果を加えることができるかもしれない。


 ティカのセンスには、今からでも色々な想像ができる。


「ティカは料理を上達させるべきなんだ。お店とか出すといいかもしれないね」


「じゃあ、お店、出したら……」


「うん?」


「あんた、フリルスカート着て、働いてくれる?」

「それくらいもちろん――え、フリル?」


「似合うと思うんだけど?」


 ティカからの急な無茶ぶりに、ロックはさすがに断ろうとしたが、ついさっき、言ったばかりだ。だから否定はしなかった。ティカにどんな趣味嗜好があろうと受け入れる、と。


「いいよ、付き合う。ティカがお店を出したら僕が手伝うよ」


「ん。約束ね」


 ティカが小指を出した。

 ロックも倣って小指を出し、絡めて約束をする。


「約束、したから……破ったら殺す」


「早いって! 針千本飲んでから……ってどっちにしろ死ぬのか!」



 ティカと和解したロックは、その足で町の人たちに決意表明をして回っていった。

 自分の本音を話し、これまでの素っ気ない態度を謝って、あなたたちと仲良くなりたいですとバカ正直に願望を口にした。


 どんな言葉をかけられてもロックは笑顔を絶やさなかった。


 ロックが本音を言えば町の人たちも本音を言う。墓場まで持っていくつもりだった汚い言葉もあった……だけど、言い合ったことで、関係性は変わった。


 ぐっと縮まったのだ。


 この時、初めて、ロックはこの町の一員になれたのだろう。



「――あー、ロックはさあ、あれ、外に出しちゃダメかもねー」


 上から覗いていた金髪色黒のファーフナが忠告した。


 ロックの心境の変化、そして他人の信頼を得るために相手を全面的に信頼するというやり方は、この町だから被害が少なく済んでいるが、他国でやり始めたらいいカモだ。


 騙されている、丸め込まれていることに、彼は気づくのだろうか。

 気づいたとしても、分かっていながら懐に入る可能性も否定できない。


 既に亡くなり、誰も否定できなくなった親譲りの信念だ……、人を見て態度を変えることを、ロックができるとは思えなかった。


「悪い人たちにほいほいついていっちゃうよー。まあ、ティカに押し倒される男の子が町を出て冒険者になれるとは思えないけどね」


「今はそうだが、成長すれば分からない。ロックが一番身長が高くなる可能性だってあるんだぞ」


「それはそうなんだけど……」


「外に出る理由は今のところないが……んなもん、いくらでも生まれるし、作れるんだ。オレたちはずっとこの町にいるわけじゃない」


 東の世界樹の異変。

 侵攻する魔王と呼ばれる脅威。


 それが、いずれはこの西の辺境までやってくるのだから――この町で骨を埋めるまでなにもないなんてことはあり得ない。


 ダーマが冒険者となったように、子は親を見ているものだ。外野がなにも言わずとも、『僕も冒険者になる』と言うかもしれない――それに。


「……あいつ、オレが外に出るって言ったら、ついてくるんじゃないか……?」


「なんでよ? あなたたちって、仲良かったっけ?」


 捨て子のふたりという枠ではあるが、関係性を言えばただの友人、幼馴染だ。しかし、赤ん坊の頃に一緒に捨てられたからか、まるで兄弟のような繋がりが感じられている。


 喋ったりしなくとも、お互いにいつも気にかけているような、そんな感覚だった。



 だから、ある日の、夕方のことだった。


「アギト」と、呼び止められた。


 ロックだった。


「なんだ?」

「僕は君が気に入らないよ」


「オレもだ。お前のことも、自分自身のことも、気に入らない」

「気に入らないけど、嫌いじゃない。僕は君と同じことはできなかった」


 器用に空気を読むことを――今は他人を、強く警戒することを。


「ああ、オレもだ。オレも……お前みたいにはできないな」


 他人を無条件で信頼することを。


 たとえ自分を信頼させるためとは言え、そこまで身を切れなかった。


 捨て子のふたりには、足りない部分を補うような、差があったのだ。


「アギト、これからもよろしく」


「…………あぁ、捨て子のよしみで、面倒見てやるよ」



 ――憧れていた。


 ロックのように、無条件で人を信頼できたらどれだけよかったか。


 たとえ騙されていたとしても、丸め込もうとしてこようとも、アギトにとっては他人を疑うよりは望んでいたことだった。


 どうしてもできないことを、ロックはできてしまえる――――



 目の前で無邪気に笑顔を浮かべる少年のことは、嫌いだ。


 それは結局、持っていないものを持っている――――分かりやすい嫉妬なのだろう。





 ―― 本編へ つづく

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