過去

1

side Chihiro











私には5年前まで付き合っている人が居た






名前は大志(たいし)






とても仲が良く、この人と将来一緒になるんだって






私の運命の相手なんだって






そう思っていた











でも、大志は私の運命の相手ではなかった






ううん






私が大志の運命の相手じゃなかったのだ






あの時の事は結婚した今でも忘れたくても忘れられない






5年前の8月初旬の事だった





梅雨が明け、日差しが強く、アブラゼミの鳴き声が街中に響き渡る時期






結婚発表会見の時と同じような日






大学も夏休みで、バイトも休みだった日






いつも2人で食べるスイカバーをコンビニで買い、元彼の家へ







合鍵を使って部屋に入った











『大志ー? いるのー?』











返事は無い






ただ、彼がこの家にいる事は分かる






玄関にはいつも通り乱雑に脱ぎ捨てられた彼のスニーカー






床にはいつものように投げ捨てたかのように転がっている彼のリュック






ソファには脱ぎ捨てたTシャツとベルトが付いたままのジーンズ





















だけど、それだけじゃなかった






玄関には私の物じゃない赤いパンプス






床には私の物じゃないショルダーバッグ






寝室に向かう迄に脱ぎ捨てられたワンピース











『ふふっ………。 さいっ、てぇ……。』











寝室にはまさに行為の真っ最中の2人の姿






私が来た事すら気が付かない位盛り上がってるみたい






聞きたくもない声を聞きながら、キーケースに付いていた合鍵を外し、テーブルに置き、






私は大志の部屋から出て、姿を消した






連絡先も消し、SNSも、繋がっている物は全て消した






これで良い






忘れれば良い






その時の私はそう思っていた





















だけど、そういう訳にはいかなかった






それから始まったのだ






大志からのストーカー行為が





















*











「何でそんな大事な事、今まで黙ってたの?

 知ってたら、会見の事も考えたのに。」






『警察沙汰になったからもう現れないって思ってた。』






「え?」






『この2年近く、何もなかったの。

 だからもう大丈夫だと思ってたの。

 それにこんな事でさっくんの負担になr……』






「こんな事……?

 こんななんて言葉で片付けられる話じゃねぇだろ。

 何もなかったから大丈夫じゃねぇし、

 何年経とうが関係ねぇんだよ。


 それに俺の負担って何だよ。

 いつ俺が負担になってるって言った?

 この先、一緒に居るのに、何で言わないの?


 展示場の時もそうだったけど、

 ちーちゃんに何かあった時の俺の気持ち分かる?


 成人喘息って言われたのなんか比にならない位、

 辛いんだよ。」











彼に初めて怒られた






そんなに怒らない彼が怒ったんだ






優しさで怒ってくれてるって分かってる












『ごめんなさいっ……。 ごめんなさいっ……。』











謝る事しか出来なかった











「俺ってそんなに頼りない……?」






『ちっ……、違うっ。

 ちゃんと言ってなかった私がいけないの。

 大丈夫だなんて余裕ぶっこいてたから。』






「取り敢えず、今日は帰って休もう。」











家に着いた時には既に遅かった











「何だよ、これ……。」






















〝佐々木稑と佐々木千紘の家はここ〟











と書かれたビラがマンションのエントランスから玄関前まで貼り付けられていた











To Be Continued……











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