第4話 美少女との出会い 〜日本の貧困化と自助努力の重要性

 ◆◆◆訂正のお知らせ◆◆◆


 お読みいただき、ありがとうございます。


 主人公の名前を「インデックス」としてスタートさせ、第一部完結までのストックがある状態なのですが、第3話公開の時点で「有名な作品のヒロインと同名だ」との指摘をいただきました。


 取り急ぎ、主人公の名前を「インデックス」から「インディ」に変更します。


 変更前の「インデックス」のタイミングで第3話を読んでいただいた方には申し訳ありませんが、以降「インディ」とさせていただきます。


 また、順次公開予定のストックについても名前の変更を行いますが、もしかすると抜けれがあるかもしれません。


 その際には教えていただくなり、広いお心で脳内変換していただけたら助かります。


 今後とも、よろしくお願いします。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 城塞都市のメインストリート沿いに建つ商店の軒先で、鏡に映った自分の顔を見ていると、ふいに後ろから声をかけられた。


「いらっしゃい。お客さんかね?」


 驚いて振り返ると、がっしりした体格を持つ壮年の男が仁王立ちしている。


 この店の主人、もしくは従業員だろう。


「いや、申し訳ない。身なりを整えるために、窓ガラスをのぞかせてもらったんだ」


 買うつもりもないのに接客をさせては申し訳ないので、素直に事情を打ち明ける。


「なんだ、そうかい。まあ、お役に立てたなら何よりだ。身なりなんぞ整えて、取引先にでも行くのかい?」


 気を悪くさせるかと思ったが、男は第一印象よりも人当たりが良いらしい。


「いやいや、そんなに良いものでもなくてね。冒険者が集まっているところに行きたいんだが、ご存知だったら教えていただけないかな?」


 ここは思い切って、男の親切心に賭けてみることにする。


「なんだい、困りごとの相談かい。ちょっとこっちへ来てみな」


 完全に、冒険者ギルドへの依頼者だと思われているようだ。


 商店の男にしても、まさか俺みたいなおっさんが冒険者志望だとは思わなかったのだろう。


 まあどちらにせよ、場所を教えてもらえるのなら結果オーライだ。


 男は俺を連れて店先から往来に出ると、「あそこを右に曲がってだな⋯⋯」などと親切丁寧に説明を始めてくれた。


 このような無償の親切は、近ごろの日本ではなかなか見られなくなった。


 俺が子供の頃までは、当たり前にあった風景なんだけどな。


 近代化にともなう社会情勢の変化が原因だと言われているが、俺から言わせれば「日本に余裕がなくなった」からだと思う。


 日本社会全体が貧しく・忙しくなったから、他人に優しくするだけの精神的な余裕も失われたのだ。


 だからこそ俺は、「金銭的に豊かになることで精神的な余裕を得る」ためにもインデックス投資を始めたのだった。


 もはやあの世界に還ることはかなうまいが、自分の証券口座にある投資信託だけが気がかりだ。


 あれを現金化したあと現物のゴールドにでも変えて、この世界に持ち込めればよかったのに⋯⋯




 そんなことを考えつつ商店の男の説明を聞いていると、彼はいきなり道を歩く二人の女性に声をかけた。


「おおい!オルカちゃん!エスピーちゃん!」


 どうやら知り合いを見つけたらしい。


 一人はスカイブルーのワンピース(丈が短いので、ミニワンピースとか言ったか?)を着たグラマラスな若い女性。


 もう一人はワインレッドに染められたローブ&とんがり帽子に身を包んだ女児だ。


 女児といってもパッと見た印象が女の子っぽかったというだけで、男の子である可能性も十分にある。


「こんにちは、店長さん。先日の買い取り、お世話になりました」


 スカイブルーの女性がにこやかに店の主人へあいさつした。


 ワインレッドの子供は恥ずかしがり屋なようで、帽子を目深に被りスカイブルーの影に隠れてこちらをのぞいている。


「今日はなにか?」


 スカイブルーが首を傾げると、店の主人は横に立つ俺の背を押した。


「いや、この人からね、冒険者ギルドへの行き方を尋ねられてたもんだから」


「あら?」


 紹介されたので、スカイブルーと目を合わせてあいさつする。


「こんにちは。店長さんに道を教えてもらっていたんだが、とても親切な方だね。人間としての器が大きいんだろうな」


 事態が飲み込めていないが、とりあえず愛想よくしておくほうが良いだろう。


 ついでに店長を褒めることも忘れない。


 あらためてスカイブルーの全身が目に入るが、体のラインが浮き出たワンピースの衣装と、そこからむき出しにされる白い肌は、目の保養どころか毒になるほどだった。


 いわゆる「」体型を惜しげもなくさらす若さゆえの傲慢ごうまんさに、おっさんの俺は気圧される。


 美しいのはボディだけではない。


 軽やかにサラサラとたなびく長髪は金色に輝き、たまご型の小ぶりな顔には愛嬌のある垂れ気味の目に青く輝く瞳と、小ぶりだがスラリと伸びた鼻、微笑みをたたえる薄い唇がバランスよく配置されている。


 まごうことなき美女、というより、美少女から美女へと変貌を遂げる只中ただなかの、奇跡の瞬間を切り取ったかのような女性だった。




 ワインレッドの子供が、俺とスカイブルーの間にスッと割り込んできた。


 とんがり帽子のつばを上げると、それでも影に隠れた顔の中からキッと俺を睨みつける。


 美しい琥珀こはく色の目をした子供、おそらくは女児だった。


「あ、ええと、こんにちは。冒険者ギルドへの行き方がわからなくて、店長さんに教えてもらっていたんだよ」


 場をつなぐために同じ説明を繰り返しながらも、ワインレッドが態度で示していることの意味は分かっていた。


 ようは「スカイブルーを、イヤラシイ目で見るな」と訴えたいのだろう。


 彼女(彼?)の言い分はわかる。


 スカイブルーの美しさは常軌じょうきいっしている。


 これまでも、いろいろとはあったことだろう。


 ただ分かって欲しいのは、「俺の方から彼女に近づいたわけではない」ということと、「こんな美女に何の下準備もなく対面させられたら、大抵の人間は挙動不審になってしまう」ということだ。


 分かってくれ、ワインレッドさん。


 けっしてやましい気持ちがあるわけじゃないんだ。





 店の主人から説明を聞いて分かったのだが、彼女たちは冒険者ギルドに所属する冒険者ということだった。


 たしかによく見れば、スカイブルーは腰に帯剣しているし、ワインレッドの姿形は魔法使いのそれだった。


 彼女たちは冒険者ギルドへ向かう途中ということだったので、同行させてもらうことにして共に往来を歩く。


「インディといいます」


 道すがら少しでも情報を得ようと思い、愛想よく自己紹介をする。


 ワインレッドは無口なまま、その警戒心が解けた様子は無い。


「私はオルカ、この子はエスピーと申します。人見知りですが、根はいい子なのですよ」


 なるほど、スカイブルーがオルカちゃん、ワインレッドがエスピーちゃんか。


「よろしく、オルカにエスピー。俺はこれから冒険者になろうと田舎から出てきたんだ」


 さきほど依頼者と間違われたばかりなので、早めに釘を差しておく。


「えっ?」


 オルカは驚きの声を上げ、エスピーにいたっては今までの無表情がネタフリだったのかと思うほど、目と口を開いて「ウソだろ?」と言わんばかりに俺の顔を凝視する。


 やはりこの二人も、俺のことを依頼者側だと思い込んでいたのだ。


 それほどまでに、俺のような高齢者が冒険者を志すのは珍しいことなのだろう。


「なんか、すまないね、常識ってものをよく分かってなくて。冒険者になるのに年齢制限かなにかあるのかな?」


 田舎から出てきた純朴なおっさんを演じてみる。


「え〜っと、制限とかは無いと思うんですけど⋯⋯。いいんですか? 冒険者って、危険で荒っぽいお仕事ですよ」


 思い切り心配されている。


「ああ。この街の衛兵さんにも心配してもらったんだがね、覚悟は決めてあるんだ」


「なにか経験があるのですか?」


 などほど、冒険者ギルドには登録していなくても、モンスター討伐の経験でもあるのかと思われたのだろう。


「いや、恥ずかしながら戦いの経験は無いんだ。元冒険者の行商人と仲良くなって、ひととおりを教えてもらったくらいさ」


 てきとうにウソをついてみる。


「武器の扱いとかですか?」


「そうだな。武器の取り扱いもそうだし、冒険者としての心得だったり基礎知識だったり、あとは探索の技術とか⋯⋯」


 この世界における魔法の希少性がよく分からないので、魔法関係のことは黙っておこうか。


「そうですか⋯⋯。覚悟ができていると言うなら、無理に止めようとは思いませんが」


 ちょっと不安になってきたぞ。


 女神から与えられた特殊スキルが「勇者」とかだったら、もっと自信を持っていられるんだろうけど。


 なにせ、俺に与えられた特殊スキルは「インデックス投資」だからなぁ⋯⋯。


 元の世界で活用するなら、ある意味では最強のスキルなんだけど。


 オルカの美しすぎるご尊顔そんがんを間近でおがみながら、それでも気分が落ち込んでいく俺だった。







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