第12話 私が恋に落ちた日・後編 ~未来side~

 柴犬公広場の柴犬公銅像前でチャラ男に絡まれてた私を助けてくれたのは、クラスメイトで隣の席の葵だった。

 その葵と共に入ったオシャレな喫茶店の客席で私は逆プロポーズをした。

 それから1時間ほど過ごしてから退店し、葵に抱きつきながら目的もなくブラブラと渋谷の街を歩いていた。

 ちなみに昼食は喫茶店で済ませたわ。


「私に会わなかったら葵は今日、どう過ごす予定だったの?」


 隣を歩く葵にそう聞く私。


「当初の俺の予定は総合ショッピングモール【テリア】で昼食を食べてから軽く買い物をして、それから帰宅するつもりだったよ」


「ふ~ん、なるほどね」


「そう聞く未来は今日、どう過ごす予定だったんだ?」


「私? それなら何処かで昼食を食べてから洋服屋を数件見て回った後に帰るつもりだったわ」


「俺とそんなには変わらない予定だったんだな」


 そのやり取りを経て、私と似た感じで過ごすつもりだったんだなぁって思った。

 葵と似た予定だと知って、私は嬉しかった。


「そうかもしれないわね。

 案外私達って似た者同士なのかもね!」


 思ってたことがつい口から出てしまい、ちょっとだけ恥ずかしかったけど。


「似た者同士って……そんなに嬉しいことか?」


「うん、嬉しいわ!

 恋人と似た行動パターンなのよ?

 そんなの嬉しいに決まってるわよ♪」


 うん、だって恋人と似た行動パターンなのよ?

 そんなの嬉しいに決まってじゃないの!

 いえ、私にとってはご褒美ね!

 あまりの嬉しさに私は更に強く葵の腕に抱きついたわ。


 そう思った時、私はあることを思いつく。


「あ! ねぇねぇ葵!

 私が今、思い付いたことがあるから言うわね♪」


 私がこう言ったら葵が何かを察した表情で見てくる。


「葵の住んでいる家で遊べばいいんじゃないかって思ったのよ!

 だから私を招待して欲しいの!」


 葵の顔を見ながらそうお強請りする私。


「何がどうしたらその考えになるのかな?」


 私のお強請りに対してそう聞いてくる葵。

 まぁ、当然の問よね……なんて思ったわ。

 だから私は葵にこう答えたわ。


「恋人の家に行ってみたくなったから!

 それに恋人の部屋を見てみたいって想いもあるわね♪」


 気になったから仕方がないよね?

 恋人が普段過ごしてる家を見たくなっちゃったのよ!

 それなのに葵は私を見ながら何かを考え始める。

 だから私は追撃しようと思ってホールドしてる腕に更に更に力を入れ、上目遣いで葵を見つめながら言う。


「ねぇ葵……ダメ、かな?」


「………い、いいよ?」


 そうお願いしたら葵は苦笑いし、根負けした感じでOKしてくれたわ♪

 だから心の中でガッツポーズをした私は悪くないはず!

 それから私は葵に先導される形で彼が住む家に向かったわ。



◇◆◇◆◇



 渋谷から清水ヶ丘区に移動して住宅街を歩くこと10数分後。

 葵がある建物を指さし、そこに俺は住んでるんだって言ったので私もその建物を見る。

 けどその建物を見た私は驚いてしまったわ。

 だって超高級マンションで超が付くほどのセレブ達しか住めないマンションとして有名な【フロンティア】だったんだから!

 そんなマンションに住んでることを知って驚かないはずがないわ。

 この時点で牧野家が超セレブ一家であることを私は理解した……いや、理解させられてしまったわ。

 一般家庭で育った私が葵に釣り合うのか一瞬だけ不安になってしまったものの、彼の案内でフロンティア内に設置されたエレベーターに乗って5階に向かった。

 その際にエントランス内の豪華さに目をキラキラさせながら見入ってしまったけれども……。



 エレベーターから降りて廊下を進み、【牧野】と書かれた表札がぶら下がっている扉前で歩みを止めた葵。

 此処が葵の家なんだぁ……なんて私が思っていると、自らの懐からカードキーを取り出して扉横に設置された端末にかざす。

 するとガチャッという鍵が開く音がして、それを聞いた葵が扉を開けて玄関内に入ったので、腕を組んでいた私も必然的に玄関内に足を踏み入れることに。

 玄関で靴を脱いでからリビングに入った私は、部屋の中を興味津々な感じで見渡す。


「今はコーヒーと紅茶しかないが、未来はどっちを飲みたい?」


「此処に葵は住んでいるのね。


 ……あ、紅茶をノンシュガーでお願い」


 見渡すのに夢中だった私はそう聞かれてハッとしてから、そう答えたわ。

 冷たい感じで答えてしまったせいで葵を不快に思わせてしまったかもしれない。

 そう思って葵を見たのだけど、彼は特に気に留めた様子もなくキッチンでお茶の準備をし始めていた。

 それを見て私はホッと胸を撫で下ろす。

 だけど私は不満に思うことがあった。

 それは……抱いていた腕を離したことで葵の温もりを堪能することが出来なくなってしまったことよ!


 それから少しして、勧められたソファーに座って待っていた所へ、淹れたての紅茶とコーヒーが入ったカップを手に持った葵がやってきて、ガラステーブルの上に置いてから私の隣に座った。

 なので私は一口飲んでから再び葵の左腕にギュッと抱きついた。


「未来…?」


 抱きついたことに違和感を覚えたって感じで私を見てそう呼ぶ葵。


「さっきの返事……聞かせて?」


 だから私も葵の目を見て単刀直入にそう聞き、急かす。


「さっきの返事…? って、告白の返事を今直ぐにってことか!?」


「うん……今直ぐに聞かせて欲しい」


 急かすようで申し訳ない気持ちでいっぱいだったけど、もう待てなかった私はその問に頷いた。

 そして暫くの時間が経った頃、葵が私を見ながら言う。


「告白の返事……言ってもいいかな?」


「うん、聞かせて欲しい……葵の返事を」


(遂に待ちに待った瞬間が訪れたのね!

 逸る気持ちを抑えながら私は葵の言葉を待つ。

 さぁ葵、答えを聞かせてちょうだい。

 貴方が悩んだ末で出した答えなら……全て受け止めるから)


 そう思いながら葵を見つめる私。

 そして葵は真剣な表情で私を見ながら口を開いた。


「俺も水無月 未来のことが好きだ!

 だから先に言われてしまったが、俺からも改めて言うよ。

 俺と結婚を前提に恋人になって欲し……んぷっ!?」


「んちゅっ♡

 好き…好き…大好き♡んぅっ♡」


 そう言っている途中の言葉を遮って葵の唇にキスする私。

 だって聞いてる途中で嬉しくなっちゃって、我慢出来なかったから…。

 だから自分の頬を伝って流れ落ちる涙を感じつつ、大好きな葵の唇に私は何度もキスの雨を降らせ続けた。

 そしてその後に葵のお父様から電話が掛かってきて、その内容に私は吃驚びっくりしたのと同時に嬉しい気持ちになったの。

 吃驚した理由は、葵のお父様が世界で有名なグローバル企業の”牧野ホールディングス株式会社”のCEO兼社長様だったってこと。

 それで嬉しかった理由は、私が葵の正式な婚約者になったことと今日から葵の家で一緒に暮らすことが決まったからなの!

 それから私はより強く葵の左腕を抱きしめたのは言うまでもない事よね。



◇◆◇◆◇



 葵のお義父様との電話から暫くして夕飯の時間となり、私は葵に教わりながら苦手な料理に挑戦したわ。

 葵の教え方が良かったのか、見栄えが悪かったけど無事に料理を完成させることが出来た。

 完成した料理をテーブルに運んでから葵と並んで座布団の上に座り、楽しく会話をしつつ食事を楽しんだの。

 最後の方は大人のキスをしたせいで恥ずかしくなってしまい、無言で食事を進めてっちゃってたけど……。


 食事後に流し台で2人並んで使った食器や調理器具を洗い、それが終わってからまったりとソファーに座って寛ぐ私と葵。

 当然だけど私は葵の左腕をガッチリとホールドしてる。

 そうしている内にお風呂の時間になっので、家主である葵から入ることになったの。

 だけどその時、悪戯心が芽生えた私は葵が入っている風呂場に生まれたままの姿で突撃していったの!

 恋人&婚約者になった葵には私の全てを見てもらいたいと思ったから、大胆な行動に打って出たのよ。

 ま、葵は私の裸を見て顔を真っ赤にさせて目を逸らしてたけどね♪

 そんな葵を見て私は欲情してしまい、我慢など出来ずに彼を襲い、エッチしちゃいました♪

 何回戦かハッスルした後、ベッドで葵に腕枕をされながらピロートークを楽しんだ。

 ま、シーツを汚してしまったことで葵に頭を軽くグリグリされちゃったけど……それもまた嬉しいって思っちゃってる私♪

 そして先に寝てしまった葵の顔を眺めているうちに、私も眠りに落ちていくのでした。




 ちなみに葵の寝顔はバッチリとスマホで激写し、鍵付きフォルダに保存させて頂きました♪

 ではこの辺で失礼します。

 おやすみなさ~い。



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