第2話 SNSでの出逢い
百合とはSNSで知り合った。出会った当時は俺が31歳、百合は19歳だった。
俺から見たらまだ子どもっぽいあどけなさがあったが、そのことを本人に言うと『私、周りからは大人っぽいと言われるのに……』と不満げな反応をするのも微笑ましかった。
『やっぱりまだまだ子どもだな』と思っていたが、そのうち百合から頻繁に連絡が来るようになる。隠しているつもりだろうが、メールの内容は好きな女性のタイプや彼女の有無など恋愛絡みの内容ばかりだったので気があることはすぐに分かった。
そのうち「休みの日っていつですか?何していますか??」という内容が来たので会うことを提案したら数分で「会いたいです!!」と返信がきたので確信に変わった。
(19歳か……若いな。でも早生まれで今年20歳で成人するって言っていたからギリ犯罪にはならないか……。)
別に悪いことをする気はなかったが、万が一もっと若く『実は高校生でした』なんて日には俺の人生が終わる。本人が同意の上でも周りの大人たちが関与するからだ。
(19歳だと年上の男に憧れる時期なのか?年上と言っても俺は31歳のおっさんだぞ?大人過ぎないか?)
19歳の頃の俺は同世代の子が良かった。
20代後半の女性は眼中に入らず恋愛対象外だ。これは男と女の違いなのか……。自分のことをおっさん扱いしたくなかったが、19歳から見たら俺は十分おっさんなのではないか。何か高額な物でも請求でもされるのか。あの当時はなかったがパパ活の相手として選ばれた気分だった。
相手に変な言動でもあったら、やましいことは一切せずに大人しく帰ってもらおう。
もし……万が一、純粋に興味を持ってくれているのなら大人の男を演出して楽しんでもらおう。俺は約束の日に、百合がバイトが終わってから向かうと聞いていたので温かいミルクティーとほうじ茶の2本を用意し、店先で車から降りて待っていた。
「え、昌大さん?迎えに来てくれたの?」
百合は写真で見るよりかは目の印象は薄くさっぱりとした和風な顔立ちだった。写真の加工技術の進化に驚かされた。それでも凛としてどこかエキゾチックな雰囲気もあり年上に見られるのも分かる。
子どもっぽく見られないよう黒のニットとタイトスカートだった。しかし底が厚いブーツが学生っぽさを醸し出している。それでも背伸びしようと頑張ってくれた百合に好感を持った。
一方の俺は、年が離れすぎていると思われないようにライトグレーのダウンジャケットにデニムにスニーカーとカジュアルな格好にした。
小走りで駆け寄ってくる百合。
「バイトお疲れさま。好みが分からなかったからどっちがいいかな?」と手渡すと、「飲み物まで用意してくれるなんてすごい!昌大さんすっごく優しいね」と驚きながらミルクティーを選んでいた。
担当の顧客でもそうだが、結婚記念日や誕生日は覚えている。そして日が近くなったら打ち合わせの時に手土産を持っていくと喜ばれた。高価なものではない。1輪の花でも驚きとうっとりした顔で喜ばれる。百合もコンビニで140円のドリンクを大事そうに握り微笑んでいた。
車に乗り走り出すと「私、男の人がこうしてお迎えに来てくれたの初めて。なんか……すっごく嬉しくてドキドキしちゃう」と教えてくれた。店に向かう途中もそわそわしながら辺りを見渡し、視線が定まらない百合が面白くて観察していた。
「百合ちゃん、美人でモテそうなのに彼氏とかいないの?」
「そんなことない、全然モテないし彼氏もいないよ」
すごい勢いで慌てて手を振り否定する百合。モテるでしょ?と聞いた時の反応で大体わかるが、たぶん百合は縁がなかったんだろうなと想像がついた。
「昌大さんは……思った通りかっこいい…………です」
語尾が少しずつごにょごにょしているのが褒め慣れていない感じで新鮮だった。
店では料理の取り分けをしながら百合の過去の恋愛を聞いた。
片思いが多かったこと、告白されて一瞬付き合った人はいるが百合に引っ張って行ってほしかったらしく遊びに行こうなどの誘いも連絡もなく、デートもしないまま自然消滅となったそうだ。2人で出掛けたこともない人を付き合った人数にいれるのかも微妙と苦笑していた。
「昌大さんは、どんな女性と付き合っていたんですか?」
俺は返答に困った。19歳にはどう答えるのが正解なのだろうか……。
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