永遠の愛の薔薇~溺愛彼氏から執着ストーカーに変わるまで~

中道 舞夜

第1話 振り袖姿の新成人

休日の昼下がり、私はピザとワインを飲みながら窓からの景色を眺めていると振袖姿の若者たちが目の前を通っていった。


『今日は成人式か……。』


そして20歳になる直前で初めて付き合った彼氏、昌大のことを思い出した。



昌大は31歳で12歳年上でハウスメーカーの営業職。SNSで共通の趣味を通じて知り合い、11月終わりに初めて会いクリスマスの1週間前に交際に至った。



自分が好きな相手が自分のことを好きでいてくれる、それは奇跡的なことで私は初めての「彼氏」という存在に舞い上がっていた。



昌大は、私のことを想い、気遣い、大事にしてくれる。友人たちに話をすると昌大の尽くしぶりを羨ましがられ、ついたあだ名は”溺愛彼氏”。私はとても愛されていると実感して幸せに浸っていた。



そう、新入社員の越智君がくるまでは……。





俺、三上昌大はハウスメーカーの営業職をやっている。


「はい、喜んで。ご要望教えてくださいありがとうございます。」

「せっかく弊社を選んで頂いたので西岡様のために出来ることなら出来るとこまでやらせて頂きます。」


この台詞を名字だけ変えて打合せの度に使っている。



言わされているのではなく本心だ。

お客様の要望を叶えたい、しかし出来るとこまでというのも本音。だから、予算に合わないものは一旦持ち帰り、無理と伝え代替案を提案する。その分、トータル的な満足感や期待値を上回すように別のところで調整している。人生に一度の大きな買い物だ。後悔が少ないよう出来るだけのことはしたい。



利益率は保ちつつ顧客の要望に応える。そのスタイルを維持したおかげで以前担当していた顧客からの紹介という形で友人や家族を担当することもある。



そう、俺は”俺が与えたものに満足する見返りをくれる相手”には喜んで与える。

恋愛でもそうだ。そして、そんな俺のことを周りは『溺愛彼氏』、『尽くす男』と言う。



1月最初の連休。

正月ムードもなくなり、みな平常運転に戻そうとしているせいか初売りでは長蛇の列を作り渋滞して混雑しているこの道も今日はスムーズに走行が出来た。



予定よりも早く着いたため、次の打ち合わせの顧客宅近くのコンビニに寄り車の中でホットコーヒーを飲みながら時間を潰しているとバックミラー越しに振り袖姿の若者たちの姿を目にした。


(そうか、今日は成人式か…。)



俺は昔付き合っていた彼女、百合の事を思い出した。

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