Episode:1-B —Heroine Race—
「お前たち席につけー。ホームルーム始めるぞー」
間延びしたような声色で壇上に上がるロリ。
ファンタジーな世界観と『LoT』の癖への守備範囲に頭を抱えた。
だからだろうか。つい口を締めていた紐が緩んでしまった。
「……どうしてロリなんだ……」
「なんじゃ!? 喧嘩を売るのか!? 買うよ!?」
壇上のロリ……否、先生は私の口から漏れた言葉に激昂する。
ぷんぷんと擬音がつきそうな様子の先生に緊張感がごっそりと削られ、ついラフな調子になってしまう。
「すみません、可愛らしいなぁ、と思ってしまったので」
爽やかな笑顔と共にそう口にする。
先生は少し当惑しながら、トテトテと教壇へ戻った。
(……あの先生、やっぱチョロインだよな……)
内心で聞き違えば酷い文言を呟いた。
あのロリ先生は『LoT』唯一教師陣で攻略できるヒロイン──メスティア・ノーヴァである。
能力はなかなかピーキーで主人公とメスティアの力の育成具合によって変化するようなものであった。
しかし、ふと疑問を感じる。
メスティアの能力は、主人公ありきの能力であり、この世界ではどんな能力に変化しているのだろうか。
疑問が頭を支配するが、なんとか隅に追いやりメスティア先生の話を聞く。
「早々に厄介な奴を認識できたのは僥倖……こほん、皆の衆待たせたの。我がこのクラスの担任であるメスティア・ノーヴァじゃ。魔法のことならなんでも聞くがいい」
クラスメイトの視線に尊敬心が乗る。
メスティアは限りない幸福を感じていた。
(師匠として慕われるのも遠くないのじゃな……む?)
ぼーっとメスティア先生を眺めていると、目線が合ってしまう。
先生は私を見るなり、頬を膨れさす。
「……お前、名前はなんだ?」
「ティオ・ネヴィレアですが……」
「後で職員室にくるのじゃ」
「えぇ……」
「拒否したら単位あげないから」
「仰るままに」
職員室への迎え入れに嫌な表情と声を隠さずに出すと、メスティア先生は単位を人質に出してきた。
分が悪いので従うことにした。解せぬ。
「本当何してるのティオ……」
フィリンは呆れた表情で私を見ていた。
「僕だって知らないよ。ただ口を滑らせただけなのに」
「貴女って肝が座ってるよね……」
感心したような言葉をいうも、フィリンの表情は呆れの色を示すばかり。
私は居た堪れなくなって、教室を飛び出した。
「それで、先生。何か御用ですか?」
職員室に入ると先生は私の腕を引っ張り、彼女の席まで連れられる。
「えっと、ティオ君……と言ったか。我をロリ呼ばわりするとは……」
「それまだ気にしてたんですか……」
意外と執着深い先生の対応をどうしようかと考えていると、隣から助け舟が出された。
「メスティア先生はちっちゃいから仕方ないですよねー」
「なんじゃとぉ!?」
訂正しよう。極大の爆弾が投げられた。
「ティオ君だっけ。ちゃんとメスティアちゃんを可愛がってあげてね? あと生徒と教師じゃ熱い夜は過ごせないわよ?」
「アンヴィ先生!? 我とティオ君が、その……と、とにかくそんなこと先生が言うべきじゃ──」
二人でわちゃわちゃしているこの空間を壊すのを躊躇いつつ、間に割り込んだ。
「あの……、僕男じゃないので熱い夜にはならないですけど……」
「「……へ?」」
二人ともが私を射抜く。
居心地が悪くなった私は職員室を後にしようと思い踵を返した。
しかし、メスティア先生とアンヴィ先生に捕まり、小一時間体を調査された。
……1時間目の授業には間に合わないことを、小さく悟った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます