迷い犬
入学式を翌日に控えた4月上旬。
私は今日から新しく来たキリンを見に動物園に行き、満ち足りた気持ちで家路についていた。
けどその途中、道路沿いの植木の下で動く何かが目に入った。
なんだろう、誰か倒れてるのかな?
そうだとしたら、大変だっ!!
私は慌ててその植木へ駆け寄った。するとそこにいたのは
体長は50センチほどで均整の取れた体つき、そして白と黒の長めの毛。この犬は、
「......ボーダーコリー?!」
ボーダーコリーは牧羊犬(羊を追いかけて誘導や見張りの仕事をする犬だよ)で中型犬に分類される大きさ。犬の中で一番賢くて、その知能は人間並!賢すぎてしつけが入らず、走って車を追ってしまうことも多い。
だからこの子も車追いかと思ったけど、ぱっとみ首輪は見当たらないから、野良かな?
「にしてもひどいケガ...」
かろうじて立ってはいるけど全身泥だらけの血まみれ。右前足は折れてるのか、変な方向に曲がってしまっている。
「大丈夫...?」
目を合わせて聞いてはみるけど動物が話せるはずもなく。けれど無言でじぃっと見つめられた、ような気がした。
あまりにも透き通った目で見つめられるものだから、少しドキッとする。
なんていうか、私の心の奥底を見透かされたようなキモチ。
「ごめんね、怖いよね。手当してあげるからうちにおいで。」
しゃがみながらそおっと両手を差し出して抱えあげる。不思議なことにコリーは私にビビることもなく大人しく抱っこされた。
「よっこいしょ...っと」
気合を入れて持ち上げるけど、さすが中型犬、余裕で15キロはある。
「うっ、オモい......肩が外れそう」
いやいやいや、犬のため!頑張れる!!
よおし、と再度気合を入れて家に向かって歩き始めた。
🐾
「よしよし、いい子だねー」
頭を撫でると気持ちよさそうに目を細める犬。無事に手当も完了して、今はクッションの上でくつろいでいる。あたかも最初からうちの犬ですよーって顔で。
背中を撫でながらはぁ〜っとため息をつく。
「......どうしよう......」
実はうちの家ペット禁止なんだよね。犬を部屋に隠しているのがバレたら大目玉食らっちゃうよ。それこそ一週間図鑑を没収されそうでコワイ。
でもでもっ、犬を助けたことに後悔はしてないよ!放っておけるわけないじゃん。
「君は迷い犬だよねー、どこから来たの?」
首輪はついてなかったし野良犬だと思ってたんだけど、汚れを落とすためにシャンプーしてたらクビにネックレスがついてて。しかも全然取れない!
普通は付いてるはずの金具もないからどうやって外せばいいかわかんなくて結局そのまま。
きれいな銀色の犬の形のネックレスなんだけどなー。犬に犬つけるってよほどの犬好きなのだろう。
「すぐに飼い主さん見つけてあげるからね」
そういって背中を撫でているといつの間にか晩御飯の時間になってた。
「ごめん、すぐに戻って来るから大人しくしといてね!絶対吠えちゃだめ!」
人差し指を唇に当ててしーっと言う。理解してくれたかはわからないけど。
その時私は焦ってて窓を閉めるのを忘れていた。
だから全く気づいていなかった。隣の家の窓から私の部屋に残された犬を見つめる人影に。
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