、、
「……なんだったんだ?」
ぼくが尋ねるとまつりは肩を竦めた。
「さぁね? たぶん、守衛さんみたいなものでしょ。不審者の事もあって危ないって止めに来たんだと思うよ」
いや。ぼくらが不審者扱いされていなかったか。
保険とか張り付いてるとか、暴力制度とか言ってなかったか。
(だけど、どうみてもアレは女子高生では……)
「反応がやけに速いな」
「速すぎるよ。きっと、すぐ妨害できるように監視しているね」
まつりはなんだか感慨深そうに頷く。
「監視って、さっきなんか乱闘になったとか言って無かった?」
「そうなんだよ。懲りたかと思ったのに。最近また個人情報の濫用に厳しくなってきていても、これだよ」と独り言をつぶやいている。
「なのにまだ隠れて見つめていたのか」なんていうと、ちょっとロマンチックな気もしなくはないが、ともくん――――櫻子さんみたいに太田さんが堂々と民間から情報を盗んで回せるような社会では、単にセキュリティが不安になってしまう。
「その手のプロによると期間限定任務の、他人へアドバイスとして「推奨しない」は悪手なんだとさ」
「握手?」
「悪手。例えばソシャゲ的にいうと、私は私の判断でやりませんでした、ってのわかるし、『2つめを貰っても、活かせる監督は多くない』っていうのは割と思う。「でも今しか作れない」「今後のアップデートで出番が増える可能性がある」って所を踏まえて考えると少し頑張れば取れるものを取らない方向で推奨するのは怖くて難しいわけですよ」
「努力家の泥棒みたいな矛盾だ」
そういうのは盗れるかどうかじゃなくて、あとからどうとでもひっくり返せるリボ払いみたいなもんだって気づいた方が良いのに。
「ギャンブルみたいに考えて居るのかもね」
金庫のお金が根こそぎ無くなって烈火のごとく怒り出すような……
行く行くは恥ずかしい禍根を残すという事がわかっていたとして、それが抑止力になっただろうかと言えば、それは難しいだろう。
ギャンブル依存症のように目の前しか見えないのだろうから。
「個人情報、ね」
ぼくが反芻すると、まつりは頷いた。
「ただでさえ――屋敷が無くなった今も尚、分裂した佳ノ宮家の勢力はややこしいし、それでいて各々があまりにも常人離れしている」
あの組織は、表向きもう無いように見えるけれど。
それでもまだ世界は、静かにはならない。
そもそも後見人計画のような非人道的計画でも喜んでやってしまう程の団体なのだから、尚更権力闘争に使えそうなものならなんだって引っ張り出して来る筈。
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