第25話
「ファウスは王国に残り王国の守りを堅めていてくれ。そもそもお前は国王だ、戦いの前線に出ることは許されない。それに俺たちが奴らの元を訪れるにしても奴らが王国に何もしないという保証はどこにもないからな」
アデルがそう言うと、ファウス様は神妙な面持ちで頷いた。
「アルテリウスは俺たちと一緒にきてくれ。俺だけでも問題ないが、エアリスが一緒となると色々と気になるからな、お前の援護も必要になるだろう。エアリスは万が一の時に治癒魔法や防御魔法を頼む。まあ、必要ないとは思うが」
アデルの話に、私とアルテリウスは力強く頷いた。魔王の力を持つ男と聖女の力を持つシリー。魔王の力を持つ男は得体が知れないし、シリーと同じように残虐的であればどんな戦い方をしてくるのかわからない。気を引き締めていかないと。
「大丈夫だ、エアリス。すぐに片付けてお前との時間をたっぷり取ってやる」
アデルがそう言って妖しげに微笑むから、アルテリウスとファウス様は目を合わせて苦笑していた。
◇
「エアリス!」
話し合いが終わって会議室から出ると、アルテリウスが声をかけてきた。
「どうしたの?」
「いや、お前とアデル、何かあったのか?」
「んん?」
急にアデルのことを言われて変な声が出てしまう。
「な、なんで?」
「いや、二人の様子がこう、なんていうか今までとなんか違うなと思って」
さすが勇者アルテリウス。私はいつも通り振る舞っていたつもりだけど、アルテリウスはきっと洞察力が普通とは違うのね。
「そ、そう?」
ハハハ、と照れ笑いすると、アルテリウスが何かに気づいて私の背後を見て苦笑した。え、なんでそんな顔してるの?そう思ったら、フワッと何かが私に覆いかぶさる。
「何をしている」
アデルが後ろから抱きしめてきた。うう、人前でそんなにくっつかないでよ、恥ずかしい!
「いや、お前たち、なんかやっぱりあったんだろう。今までと違うから気になってエアリスに聞いてたんだよ」
「なるほどな。見ての通りだ」
後ろからアデルが私の顔を覗き込む。だから近いってば!恥ずかしすぎてアデルの顔を見れない。
「一目瞭然だな。ご馳走様」
「ちょっ、アルテリウス!茶化さないで」
私が慌ててアデルから離れようとすると、アデルは離すどころか抱き締める力を強めてる。
「随分仲がよろしいのですね。妬けてしまいます」
少し寂しげな顔でファウス様が言うと、アデルが冷ややかな目でファウス様を見る。
「この通り、俺たちは愛し合っている。お前の出る幕はない。うせろ」
「ア、アデル、そんな言い方しなくても!」
っていうか、愛し合ってるってそんな、恥ずかしい!だんだん顔が熱くなってきて俯くと、頭上からアデルの楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
◇
翌日、私はアデルとアルテリウスと一緒に転移魔法でシリーを聖女としてあがめているという村にやってきた。
「見た感じ普通の村だな」
アルテリウスの言う通り、こじんまりとした村であまり活気さは見られない。シリーたちはどこにいるのだろうかと歩き始めると、建物から人が出てくる。一人、また一人と現れていつの間にか私たちは周囲を囲まれていた。
かなりの人数の人たちが手に剣や鍬を持ち、ゆらゆらと近づいてくる。目から光が消えて明らかに殺気を纏っていて危ない。
「ほう、ずいぶんと統制がとれているんだな」
アデルがそう言って目を細め、村人たちの背後を見つめる。すると、村人たちの中から一人の人影が現れた。
「いい兵たちだろ?自我を取り除いて強化魔法をかけたとっておきの人間兵だ。聖女エアリス、心の優しいあんたにこの兵を殺すことができるか?自我を取り除いているとはいえまだ生きてる。でも殺さなきゃあんたたちが殺られるぜ?」
濃い紺色の髪の毛に血のような真っ赤な瞳の青年がいる。あれが、魔王の力を持つ男……!
「やあ、魔王アデル。俺の名前はデモス。魔王の力を持つ転生者だ。ようやく会えたね」
「つまらん挨拶は抜きだ。ふざけた真似ができるのもここまでだ、観念しろ」
「ははっ、俺に勝てると思ってるの?俺はあんたを殺してこの世界の魔王になる男だ」
腕を組み愉悦な笑みを浮かべるデモス。だけど、次の瞬間ヒュンッと何かがデモスの元へ駆け抜けていった。
キイン!
ものすごい早さでアルテリウスがデモスに剣を振りかざし、デモスは一瞬で剣を出現させてそれを受け止めていた。なんて速さなの!
「よお、久々だな。お前の相手はこの俺だ。お望み通り万全の体制で来てやったぞ」
ギリ、と剣を合わせてアルテリウスが言うと、デモスはニヤリと笑う。
「アデル、こいつは俺がもらう」
「好きにしろ、ここが片付いたら様子を見に行く」
アデルの返事が聞き終わる前に、デモスがアルテリウスの剣をはじいて上空へ逃げるように飛んだ!アルテリウスもデモスを追いかけるようにして飛んでいく。
建物の屋根を走り飛び、周囲に爆発や防風を巻き起こしながら二人はどんどん私たちから遠ざかっていった。
「さて、ここもさっさと片付けるか」
アデルがそう言ってから、ふと視線を横にそらす。
「そう言えばお前のことをすっかり忘れていたな」
「は?ふざけないでよ。古い聖女をあたしが殺して絶望に陥ったあんたをデモスに差し出すの。簡単になんて死なせてやらないから覚悟しなさいよ」
アデルの視線の先には、周囲を村人に守られ顔を歪めて楽しそうに微笑むシリーがいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます