秘密のある俺はこのFamilyの家族になれるだろうか? ~家族全員に認めてもらえるまで奮闘します~

夕日ゆうや

第1話 みんな家族だ?

「今日からみんな家族だ!」

 ひしっと熱い抱擁をかわすパパ。

 俺たちが戸惑っていることにも気がついていないらしい。

「オレは馴れ合う気はないから」

 反抗期真っ盛りの長男であるライトはぐいと押し返し、輪から外れる。

「おい、ライト」

 パパは苛立った様子でライトを、引き止める。

「オレら家族じゃねーから」

「パパに謝りなさい! ライト!」

 今度はママが声を荒げる。

「ふん」

 ライトはそのまま部屋を出ていってしまった。

 俺も自然と離れていく。

「魔法の練習するね」

 レイナは困ったように眉根を寄せつつ、庭に向かう。

 俺も離れるか。

「ご主人様、俺も失礼します」

「ケイトまで……ああ。残念だ」

 パパは本当に残念そうに呟く。

「パパ。作戦会議ね」

 ママはパパを抱きしめ、落ち着かせる。

 年頃の子どもを持っているとは思えないほど、二人の仲はアツアツだ。

 俺はこっそりレイナの後を追う。

 彼女は家族であることにさほど否定的ではないらしい。

「インフェルノ!」

 詠唱を終えるとレイナの周囲に無数の火球が顕現する。そして庭に立ててあるマトを一つ残らず撃ち抜いていく。

 俺は思わず拍手をしていた。

「なに?」

 思ったよりも低い声を上げるレイナ。

「いや素敵な魔法だと思って」

「そう……」

 浮かない顔をしている。

 やっぱり俺のことだろうか?

「わたしはあなたのことまだ認めてないから」

 辛辣な声で魔法の練習に戻る彼女。

 精神の乱れからか、火球が内側に向く。

「危ない!」

 俺は咄嗟に身を挺する。

「バカ! 逃げて!」

 レイナの優しさが耳朶を打つ。

 だが俺は逃げない。

 背中で火球が破裂し、衝撃と熱波が混じった膂力が撫でつける。

 悲鳴を上げ、気が遠くなる。

「ヒール!」

 レイナは詠唱を唱え、回復を試みる。

「効かない!? これだからポンコツは!」

 火球がおさまったところで俺の意識はシャットアウトされた。


「もう、なにをやっているのよ」

 苦笑を浮かべながら明らかに態度が軟化した、レイナの第一声がこれである。

「案外、カッコいいところあるのね、キミ」

 照れくさそうにしている。

 パパはなんでも口にするので意外だと思いながら見つめていた。

「なによ?」

 ジト目をぶつけてくるレイナ。

「いや、意外だった」

「……。まあ、血のつながりはないし」

「え?」

「そんなことよりも!」

 レイナは俺の部屋にいながら、エプロンをしていた。

 そこに気がつくべきだったのだ。

「クッキー焼いてみたの、食べる?」

「はい。頂きます」

 俺はパンダのクッキーを手にすると口に運ぶ。

 サクッとしていて上品な甘さが口いっぱいに広がる。

「おいしいよ。これ」

「ふーん? キミもそう言うんだね」

「誰かと重ねた?」

 レイナの言葉が気になり、わずかに眉根を跳ねる。

「なんでもないわ。さ、食べて」

 差し伸ばされるクッキー。

「待って」

 待つことを許されないまま、口に詰め込まれるクッキー。

「うふふ。おいしいわよね!?」

 もがもが言いながら、俺はクッキーを咀嚼する。

 あれ。何か大事なことがあったような気もする。

「キミ、意外と冷徹ではないのね」

 鋼鉄のケイトとはよく言われたものだ。

 まあ、俺はそんな噂話気にしたこともないけど。

 でもまあ思われてもしょうがない一面もある。

「冗談を言うな」

「ふふ。ならなぜ庇ったの?」

「それは……」

 なんで庇ったか。

 そんなのは俺にだって分からない。

 でも危ないと思ったら突っ込んでしまった。

 庇わなくちゃ危ないと思ったのだ。

「勘、かな?」

「なにそれ。計算かと思った」

 警戒されていたらしい。

 それでもクッキーを焼くということは相互理解を求めていたのかもしれない。

 俺には充分な答えだ。

「ありがとうございます」

「なによ、改まって」

「でも」

 俺の思考回路が可笑しいのか、くすくすと笑うレイナ。

「いいのよ。家族、なんでしょ?」

「……それもそうか」

「まあ、ライト辺りはずっと認めないでしょうけど」

 胃痛で胸の辺りが痛む。

「それは言わないでおくれ」

「いいわ。あなたが家族になるのをいったん、受け入れる。まあ、バカしたらわたしも、本気で見捨てるかもね」

 一応、レイナは認めてくれたらしい。

 しかし、それが魔法の暴走を止めただけなのに。

「そうだ。俺も魔法を使ってみたい」

「え……」

 きょとんとしているレイナ。

「いやいや、無理でしょ?」

「今し方、無理すればなんでもできると学んだばかりだよ?」

 俺はレイナに認めてもらうのは無理だと思っていた。

 でも実際には認めてもらえることができた。

「いやいや、ないって。ないよね?」

 確かめるように呟くレイナ。

「まあ、やってみるか」

 レイナの中で結論が出たらしく、俺とレイナは庭にやってきていた。

 的を設置し、そこに向けて俺は手のひらを開く。

「魔法はイメージしだいでどうとでもなるわ。まずは腰を落とし、全身を巡る血のにおいを感じ取って」

 血のにおい?

「あー。血管の中にマナがあって、それを媒体に流脈を魔力へと変換して、脳で情報処理するの。それから魔法のイメージを具現化。つまり、血の中にあるマナを意識する必要があるってわけね!!」

 プシューッと音を立てて俺の脳がオーバーヒートする。

「ま、最初はイメージするだけでいいわ。わたしだって解放するのに二年はかかったわ」

「わ、わかった」

 解放の意味は分からないが、俺にできることはイメージだけらしい。

 そういえばレイナは無数の火球を生み出していたっけ。

 俺にもできるかな。

 イメージする。

 俺の周りに火球が浮かぶイメージを想起させる。

「マナが、震えている……?」

 レイナが気になる言葉を呟く。

 ボッと火球の塊のようなものが俺の周りに浮かぶ――がすぐに消える。

「……」

 驚いたような顔をするレイナ。

「す、すごい。たった一回の練習でこれだけの魔力放出量を誇るなんて……」

 レイナは唖然とした顔で俺をみる。

「え。マズかった?」

「うん。ある意味ね。だってケイト、初めての練習でしょう? これだけできれば将来は有望な魔法使いメイジになれるよ」

「ありがとう」

 少しは認めてもらえたってことかな?

 うん。良かった。

「じゃあ、家族になろう?」

「……それ、わたし以外に言っちゃダメだからね?」

「……? なんで?」

「キモいから」

 その言葉にそうとうなダメージを負ったのは事実であった。

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