第25話 ある小説家との邂逅

帝国での騒動も終わり1ヶ月が過ぎた。政務もある程度余裕が出来たため、最近の僕は市井で流行っているものを独自に調査している。


「へー、今はこういう小説が流行っているんだね」


『何を読んでいらっしゃるんですか?』


僕が書籍に目を通しているとメアが顔を覗き込んできた。


「ああ、今流行っているという小説をね。【転生したので最強魔法使いを目指します】ってタイトルかな」


『…なんというか安直なタイトルですね。肝心の中身は面白いんですか?』


「そうだね…誰でも強くなれるかも、っていう憧れを抱ける点では一般市民の方が感情移入しやすくて、大衆向けなのかもね」


『あまり貴族や王族向けではないという事ですか…。参考までに私にも読ませていただけますか?』


「うん、ちょうど読み終わったしゆっくり読んでいいよ」


『ありがとうございます。それでは失礼して…』


メアは武闘派ではあるけど、王妃教育を完璧にこなしている才女でもあるんだ。ただ貴族や王族としての教養は備えているものの、一般教養という意味ではそれほど造詣が深いわけじゃない。僕も人の事は言えないんだけどね。


熱心にページをめくるメアを横目にしながら、僕はティータイムを楽しむ。平和だなぁ…。


やがてメアも小説を読み終えたようで、本がパタンと閉じられる。


『作中に見た事も聞いた事も無い魔法が出て来ていましたが、この小説の作者は魔法に造詣が深いのでしょうか?』


「うーん、あくまでも空想の物語って感じっぽいから詳しいわけでもなさそうだけどね。僕もちょっと興味があるから、この作者を訪ねてみようと思うんだけど…護衛を頼めるかな?」


『はい、勿論です』


心なしかメアがワクワクしている気がする。こういう所は年相応で可愛いんだよな…口にすると怒られるから、今はやめておこう。


メアを連れて城下町を歩いていると、ちょっとした人集りが見えた。もしかするとあそこに探し人がいるのかな?


「申し訳ありません。本日用意した初版分は先程売り切れとなりました。また準備が出来次第、販売再開致しますので何卒よろしくお願い致します」


その声に対して人々は不満を散らしながら辺りに散って行った。僕は確認も含めて書籍を販売していた人物に声をかける。


「失礼するよ。この本の作者は君で合っているかい?」


「ええ、【転生したので最強魔法使いを目指します】でしたら私が執筆したものです。貴方がたは…⁈もしかして!」


「しーっ。お忍びで来てるから静かにね。君の想像通りで合ってると思うよ」


「分かりました…お会い出来て光栄です。それにしても王子殿下に私が書いた小説を読んでいただけるとは…」


『実はこの小説に登場する魔法について伺いたくて、こうして伺ったのです。失礼ですが魔法についてはお詳しいのですか?』


「いえ、多少は知識として覚えましたがその辺の一般市民と同じ程度だと思いますよ?」


「へぇ…想像でこれだけ魔法について描写出来るなんて逆に凄いね。でも何かしら秘密がありそうだけど…」


「ははは、王子殿下は流石に鋭いようです。ここだけの話ですが、私の名前はトウヤ・イサカ。この世界とは違う世界から転移してきたものです」

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