第38話

「だって、酷い顔してるから」



泣いたばかりで、きっと酷い顔をしているに違いない。


久しぶりに会ったと言うのに、こんな酷い顔を見られたくなんてない。



そう思ったのに。



「この瞬間の果歩さんを、きちんと覚えていたいんです。それにどんな果歩さんでも、大好きですよ」



そんな甘い言葉が聞こえてくれば、もう我慢なんてできなかった。


本音を言うと、果歩だって早く隼人の顔が見たかった。




身体に回された両腕の中でゆっくりと向きを変えると、一度胸の中に顔を埋めた。




懐かしい香りに、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。



それと同時に身体を包む隼人の腕の力が増すと、得も言われぬ安堵感が胸を満たして、強張っていた身体が解れていくのが分かった。

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