第2話 走って飛んで、町探し!
「うーん、どうしよう。ほんっっっっとどうしよう」
かれこれ三〇分。悩みに悩んで私が出した結論は、バグかもしれないからとりあえずじっとしておこう、だった。何も改善しなかったけど。
見渡す限りの草原。町どころか道すら無いなんてオワタ。
「……はぁ。しゃーないかな。うん、切り替えよう。実家暮らしでよかった」
私めっちゃ交友関係浅いから、もし一人暮らしだったら発覚遅れて見るも無惨な腐乱死体~ってのもありえたしね。嫌だよ自分の腐った死体を他人に処理させるの。
実家暮らしだから早ければ今日中に発見されるはず。まだ成人してないのに葬式させちゃってごめん。
「太陽はほぼ真上……地平線見る感じ、たぶん地球と同じぐらいなのかな」
具体的な数字は忘れたけど、地平線って実はそんなに遠くないって話を聞いたことがある。ちょっくら木登りすれば、更に遠い場所まで見渡せるはず! 近くに木なんて無いけど。
「持ち物は……分かってたけど装備は無事だね。でもインベントリは開けないから壊滅っと。そんで、いつの間にかポーチにあった小銭が少し」
……お金消えちゃった。バハレクだとお金持ちだったんだけどなー。
服は防具装備の【桜花繚乱・終式】のみ。和洋折衷した桃色の和風装備で、上下に分かれています。下は膝丈のスカート。
ポーチの中身も消えちゃってるし、すっからかんだよこんちくしょう。
「色的に金貨と銀貨と銅貨かな。指先程度の大きさしかないし、ガチの金で出来てるな?」
内訳は金貨一枚、銀貨五枚、銅貨二〇枚。うん、絶対少ないよね。
金本位制だとしても薄いし小さいし、これ一つで大金持ちとかありえないって。いや、大きかったらそれはそれで本物か疑わしいんだけど。
「やっぱ歩き回るしかないかー」
そんで結論。動かなきゃ野垂れ死ぬから移動しよう。もう誰でもいいから人間に会いたい。会って近くの町を教えてもらうんだ。
「とりあえず……〈ハイジャンプ〉!」
バハレク時代はアクティブスキルの類は音声認識で使ってたけど、こっちでも使おうと思って口に出せば使えるみたい。木登りしなくて済むね!
〈ハイジャンプ〉は一メートルから五メートルほど跳躍するだけのスキルだけど、ギミックの回避だったり咄嗟の回避だったり、ボス戦でも対人でもお世話になったなー。
それで見えた景色なんだけど、草原を挟んで森と海と山ばっか。町isどこ?
道らしきものも見えないし、森の側まで行ったらもう一回〈ハイジャンプ〉で確認する?
「……って、着地のこと考えてなかった!」
ええと高所から無傷で着地するには五点設置なんたらで……覚えてるわけなあい!
でも無事! DEX高くて助かったぁ~。この体が出来ることを覚えている(キリッ)的な。咄嗟に動けてよかったほんと。
「ふぅ……〈アクセラレーション〉!」
軽く息を整えて、次に使ったのは加速スキル。
一定時間ダッシュ行動時の速度を倍加するスキルで、もちろんお世話になりました! 対人だとダッシュからの急停止超速抜刀が刺さるんだわー。
鍛えたので熟練度もMAX。持続時間は一分だけだけど、【艶麗繊巧】を乗せると亜音速で走れるからほぼ公式チートなんだよね。【艶麗繊巧】が強過ぎるともいう。
「っと、もう着いちゃった。〈ハイジャンプ〉! 〈エアジャンプ〉!」
今度は二段ジャンプして空中から探すぞー!
さてさて町は~……お、あれは!
「壁! つまり町! ひゃっほい野宿とはおさらばじゃ~!」
森の先に壁がある! ちょっと遠いけどこれなら行けそう。
道具も無いのに野宿とか自殺行為だからね。
「方向はおっけー。あとは真っ直ぐ突き進むだけ!」
見た感じそこまで広大な感じじゃなかったし、時々ジャンプして方向を確かめれば遭難はしないはず。
補助スキルが問題無く使えたから戦闘スキルだって使えるはずだし、もしモンスター的なやつと遭遇してもモーマンタイ!
武器も防具も最大まで強化したからね。むしろオーバーキルだと思うよ。
ふっふっふ。〝技巧最強〟はDEXのみにあらず。扱う武器も最高だからこそ最強なのだー!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます