〝技巧最強〟 ~DEX極振りの刀使い、異世界に転生す~

こ〜りん

第一部:都市ランデール編

第1話 異世界転生! わお!

 バハムート・鎮魂歌レクイエム・オンライン。トップスリーには選ばれないが、完成度の高いゲームを一〇個提示しろと言われたら必ず挙げられるタイトルだ。

 ステータスの最低値=レベルであり、初期状態での上限は一二〇〇。そして、ステータスに割り振ることの出来るポイントは合計で二〇〇〇のみ。


 振り直しには課金か、レベルの初期化を求められるため、ポイントの割り振り方が最も重要と言われているこのゲームで、私――早瀬桃華はDEX極振りを選んだ。

 プレイヤーネームの『ツァラトゥストラ』は、当時たまたま聞いていたクラシック音楽の題名から引用している。


 期間限定イベントの上位報酬である【ステータス上限解放券】も全てDEXに費やし、私は三ヶ月ほど前にDEX二一〇〇という理論値に至った。九〇〇ポイント分の上限解放券を集めるのは苦労したけど、苦労に見合う成果は得られたと思う。


 だって、〝技巧最強〟という唯一無二の称号が手に入ったんだから。


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〝技巧最強〟

『ツァラトゥストラ』

レベル一〇〇

HP:一〇〇〇〇

MP:一〇〇〇〇

STR:一〇〇

INT:一〇〇

END:一〇〇

DEX:二一〇〇

AGI:一〇〇


メインウェポン:【竜魂之魔刀・終式】

サブウェポン:【妖刀神喰・終式】

防具:【桜花繚乱・終式】

アクセサリーⅠ:【竜魂の耳飾り】

アクセサリーⅡ:【堕落の腕輪】

アクセサリーⅢ:【超速抜刀鎖】

アクセサリーⅣ:【ケルティックポーチ】

アクセサリーⅤ:【アルハザードリング】


祝福:【アールヴの祝福】【バハムートの祝福】

呪禍:【獣祖の呪い】

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 全てのバハレクプレイヤーに自慢できるこのステータス! ほんと、我ながらよく頑張ったと思う。

 ま、HPとMPはそれぞれENDとINTの一〇〇倍だから、DEX除けば普通に弱いんだけどね。

 でも、これは間違いなく最強。私を最強たらしめているのはDEXが二一〇〇になると同時に得た称号と、それに付随してきたスキルだ。


 〝技巧最強〟と【艶麗繊巧】。これがとにかくチートなのだ。

 まず〝技巧最強〟にはDEXが常に一・五倍になるとんでもねぇ性能がある。スキル補正と装備補正も加えたら実数値は一万を越えるんじゃないかな。


 そして【艶麗繊巧】、これがぶっ壊れだ。なにせ、全ての判定をDEXで代用できるんだから。筋力も速度も全部実数値一万の暴力で代用できる快感! マジでたまんねぇ~~~!


 …………でも、サ終するんだよね。

 はぁ、装備を強化するためにラスボス裏ボスマラソンしていたのが懐かしい……涙ちょちょぎれそう。


《接続が切断されました》

《ホーム画面に戻ります》

《メールが届いています》


 うーん? メールくれるようなフレンドいたっけ? いやいるけどさ。差出人不明ってどゆこと?

 疑問に思って開いてみるとあら不思議、バハレク運営からじゃあありませんか!

 えっと、次回作のテスター? え、バハレク次回作あるの? あんな大団円迎えたのにまだなんかあるの?


《受諾しますか? YES/NO》


 うーん、まあ権利だし、もらっといて損は無いかな。データも引き継げるみたいだし……こんなぶっ壊れステータス持ち込んで大丈夫なのかって思わなくはないけど……愛着あるこのアバターを使い続けられるなら文句はない。

 よし、受けよう!


 ――そう思ったのが、間違いだった。


《確認》

《我々はツァラトゥストラ様を歓迎します》

《新たな世界での冒険をお楽しみください》


 次の瞬間には、私は見知らぬ草原のただ中で突っ立っていたんだから。

 VRじゃ再現できないリアルな感覚がある。風も、匂いも、温度も、まるで私がここにいるみたいに感じる。


「……ほわい?」


 頬を抓ってみた。痛かった。なんで?


 恐る恐る目線を下に向けると、マイアバターの貧相な胸があるじゃないですか! さらば私の大きなおっぱい……。君のことは忘れないよ。

 じゃなくて。


「……まさかこれって、異世界転生ってやつ?」


 そんな疑問に答えてくれる人なんていないわけで。

 私、これからどうやって生きていけばいいのだろう。

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