第6話 異世界権利を賭けた闘い、クールと朗らかのファーストコンタクト
7階で自転車をさげた男性が乗り込んで来た。服がガチというか、自転車乗りのそれだ。格好はあれだが、透明感のある黒髪、涼やかな目元に高い鼻、自転車乗りなのに意外に綺麗な肌だ。どこか知性を感じさせる塩顔イケメンである。
彼の顔の造作は、まるで私の理想のタイプを具現化したかのように完璧だった。特に目元は、その涼しさがかえって熱を帯びた私の視線を受け止めているようで、思わず息を飲んだ。彼の顔面偏差値は、異世界に連れて行っても最強クラスだろう!
『顔をガン見はやめた方がいいですよ?』
私は現実に引き戻された。
え、ちょ。っていうかなにこれ奇跡のイケメン?
彼は私に向かって頭を下げる。
「狭くてすみません。」
「いえ。大丈夫ですよ。お気になさらず。」
私はにこりと微笑んだ。ていうかなんで駐輪場に停めないんだろう。謎である。
『彼のロードバイクは高価です。盗難防止と外に置いて傷がつくのが嫌なのです。』
なる程。私はロードバイク、クロスバイク、マウンテンバイクの違いがイマイチ分からない。
『クロスバイクは普段使い。ロードバイクはクロスバイクに比べてタイヤが細いです。車体重量は軽く走りに特化していますね。マウンテンバイクは車体重量は重いですが悪路も走行できます。』
へー。詳しいねナビさん。よし、せっかく情報を手に入れたのだ。マンション住人と会話してみよう。イケメンだしね。コミュニケーション能力極小が生かされるぜ!
とか言いつつ内心ビビりまくりである。この情報を会話のきっかけにするなんて、ニートの私には高度すぎる!でもこの顔面を前にして逃す手はない。 ビビってはいられないのだ。
この国宝級のイケメンと話すチャンスを棒に振るわけにはいかない!今私の勇気は試されるのだ!!
『早くしないと着いてしまいますよ?』
はっ。イカン。
「高いロードバイクを外に置いて盗まれるのも困りますよね。」
「そうなんですよ!!分かってくれますか!」
あら嬉しそう。彼はニコニコしながらエレベーターを降りて行った。私はただその後ろ姿を見つめていた。な、何だこの充足感は……!!美しく締まった背中のラインが……。
『いちいちオーバーすぎやしませんか?』
やっとか。いつツッコミ来るのかなって待ってた。
『まさか体型にまで言及するとは思いませんでしたから。』
はー。それにしても大人イケメンの無邪気笑顔ギャップ萌え眼福だわー。良いものを見たー。
『報酬 イベント エレベーターで
なんじゃそりゃ。二言話しただけだっての。
『ロードバイクをエレベーターに乗せるのは嫌われる行為ですからね。理解されたのが嬉しかったんでしょう。』
なんと、嫌われる行為なのか。確かに雨の日とかは嫌かも?
公園に到着した。最近太り気味だったからしっかり走らないと。
『その体型は太り気味では無いです。認識を改めないといけません!』
毎日走れば痩せるのかなあ。たった30分で。
『特に痩せる必要は無いですが運動して引き締まれば服が入る可能性があります。』
やっとの思いで走り終わる。
『報酬 敏捷アップ そのまま1分待機。』
ええ。連続イベント発生の予感。
『ど、どうしてそれを!!』
棒読みでわざとらしく動揺すんな。
『緊急イベント発生。逃げた犬を捕まえろ』
報酬情報が無いんだけど。
無視である。
前から走ってくる犬。え、でか!!ちょ!まさかのハスキーである。私豆柴くらいのを想像してたよ?!こわっ!え、でかい!怖い!!
「カリク待て!止まれ!そこの子どいて!どいてー!カリク!止まれ!ストップカリク!!」
立ち尽くす私に犬がダイブしてくる。
そして私が犬に捕まえられた。
うわー!舐めるなー!うわーうわー!ちょ!くさーい!!
思わず犬と自分の顔にクリーンする。
『報酬 解体』
は?!?!この犬解体すんの?!
ちょ!怖いなんなの?!
『あなたのその発想が怖いです。解体するのはコッコです。生きている動物の解体は不可です。』
冗談じゃん!ツッコミ長いよ?もっと短くシャキッとして?
『今のはボケだったのですか?!な、難易度が高いです。』
「だ、大丈夫ですか?申し訳ない。」
男性が犬を私の上からどけ、外れてしまったハーネスの紐を付け直す。彼の明るい茶色の髪と瞳 が太陽の光を反射しており、汗をかいているのに 朗らかで健康的な印象 だった。坂本さんとは対照的な、少年っぽい無邪気さ を残した 童顔イケメン だ。
『さっきからイケメン描写がやたらに激しいですね。面食いですか?』
あ、やっとツッコミ入った?実はね、待ってた。でもまだツッコミ長いかな。
「カリク伏せ!人に飛びついちゃダメだ!」
伏せてなお尻尾がバタバタとテンションMAXな犬カリクに私はちょっと恐ろしくなる。犬の猛省を促す佐々木さんの表情は真剣だが、どこか困った子供を見るような優しさ があり、大型犬と無邪気な飼い主 という、 絵に描いたような「可愛い」構図 だった。
『ツッコミ待ちですか?事実なのでツッコミはしませんが。』
いや、ツッコんで?
「すみません。とりあえずベンチに。怪我はありませんか?頭を打っていませんか?ああ…服も髪も泥だらけに。」
まずい。顔だけクリーンして綺麗なんですけど。
「何ともないですよ!わ、私はもう帰りますので。ご心配なく!」
私は手を横に振る。
「僕は佐々木と言います。これ名刺です。タクシー代と医療費をお支払いしますので今から病院へ。」
「いえいえ!大丈夫です。」
「あの、お名前を。後日クリーニング代だけでも、振込先を教えていただければ。」
「け、結構ですので!」
私は逃げる様に帰宅した。
それにしても…。礼儀正しいけれど、まるで弟か年下の男の子のように見える。真面目な顔をしても、その親しみやすい雰囲気は隠せない。この世の至宝超絶クールイケメン坂本さんとは大違いだ…。
『どんだけ坂本さんの顔気に入ったんですか。』
そろそろツッコミ慣れて来た?その調子。
私は改めて名刺を見た。
『報酬 カリクと佐々木さん カリク好感度アップ 佐々木蒼太好感度アップ』
はぁ?!
ととととにかく落ち着け。
突然の好感度アップイベントと、金持ちと人脈ができた事にダブルで動揺するも、私は善良な小市民。クリーン一発の汚れやこの強靭な肉体で佐々木さんから金をせしめるなんてあり得ない。
父は私をそういう育て方をしなかった。いや知らんけど。父も母もあんまし家には居なかったからな。
管理人さんは父親と同じくらいのだったと思うので、代理の人がこの人だとは父親に話しておこう。
ていうか、好感度アップイベントで飼い主の佐々木さんではなく犬のカリクの方が前に表示されたのなんで?
『カリクの方が親密度好感度ともに高いからです。』
ちょwwカリクとは初対面なんですけど謎の親密度ww
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます