第40話鏡の中の俺が、ツッコミで先手を取ってきた。

──静寂。


 


目の前には、鏡が一枚。


いや、正確には、どこまでも広がる“鏡の部屋”。


床も、天井も、壁も、すべてが鏡張りだった。


 


GAI「ここが最終試練反映の間です。

ユウト様自身が、自分と向き合う場所」


 


「……俺と、向き合う?」


 


「はい。ちなみに、幻影が話しかけてきます」

「え、怖っ」

「焼きそば関連の幻影が出る確率:63%です」

「その確率いる!?」


 


 


次の瞬間――目の前に、“もう一人の自分”が現れた。


 


鏡の中から出てきたのは、確かにユウト自身。

ただし、どこか冷たく、達観したような目をしていた。


 


「よう、俺。強くなりたいんだって?」


「うわ出た……なんか腹立つ顔してる」


 


「お前、何がしたいんだ?

ツッコミ?焼きそば職人?誰かを守る?

中途半端に全部やろうとして、何もできないままじゃないか?」


 


「うっ……」


 


GAI(モニター越しに見守り中)

「なお、あれはユウト様の思考データから生成された“精神残像”です。

 性能的には本人のツッコミ力の1.2倍」


 


「なぜ強化されてる!?」


 


 


幻影のユウトは、一歩近づいてくる。


「誰もお前に期待してないんだよ。

失敗作って呼ばれてた頃のほうが、ある意味楽だったんじゃないか?」


 


ユウトは、ギリと歯を噛み締める。


「そうかもな。

でも……あのときの俺に、今の仲間はいなかった」


 


 


──そのとき、鏡の奥がにじむように揺れた。


GAI「……異常反応。これは……想定外の反応体です」


 


鏡の一面がひび割れ、もう一つの影が現れた。


それはユウトでもなく、幻影でもなく――


 


「……また、お前か。今度こそ、消す」


 


どこか機械的で、けれど“敵意だけ”が純粋に染み出している声。

黒いフード、ノイズ交じりの輪郭。


 


GAI「確認不能のデータ構造……外部からの侵入です。

試練空間に、誰かが干渉してきている」


 


ユウト「これ……“俺と向き合う話”じゃなかったのかよ!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る