第3話


 緊急のアナウンスにはなったものの、ネットでは、今日の【バビロニアチャンネル】系列の特番は凄まじい話題になっているという。一体どのくらいの視聴率を叩き出すだろう。

「フフ……。」

 アリア・グラーツは腕組みをして、嵐の前の静けさを思わせる【グレーター・アルテミス】の街並みを見下ろし、笑みを零した。

「フフフフフ……」

 側を通りすがる職員が、アリアさんがなんか笑ってる……! と怯えながら通り過ぎていく。

 

 お疲れ様です。声がして、彼女は振り返った。

 シザとアイザック、そして少し遅れてライルがやって来た。


「ウキウキしてんなぁ、アリア……」

 アイザックが呆れ顔だ。

「そんなことは無いわよ」

 アリアは表面上は装った。

「言っておくけど。貴方が下手なことをしたら【バビロニアチャンネル】は大打撃を負うのよ。グリムハルツ氏が貴方を信頼してこの会見を許可したこと、忘れないでよシザ。

 結果によっては、貴方は【アポクリファ・リーグ】に二度と復帰出来ないかもしれないんだからね」


【アポクリファ・リーグ】を辞める心構えなど、シザはいつでも出来ていた。

 未練もない。

 それでもシザがこの会見に臨むのは、ただひたすら引き離された恋人の助けになりたいからだった。


「……そんなことにはしませんよ」


 心得ています。

 シザは冷静な顔で言うと、控室の方へ歩いて行った。

「なんだ。落ち着いてるじゃない」

「逆にあの落ち着きが俺は怖ぇよ……。俺隣の部屋で待機させてもらうからな」

「いいけど、五月蝿くしないでよ」

「お前こそ余計な小細工とかすんじゃねーぞアリア。

 ここまでシザ追い込めば、番組としてはもう充分だろ」

「充分かどうかは結果次第」

 

「アリアさーん。中継、始まりまーす」


「今行くわ! それじゃあね」

 アリアは軽やかに去って行った。

 スタジオにシザが入って行く。

 指示があったようで、すでに入っている観覧の客からは拍手も声も掛からなかった。

 司会進行そして質問をする男性レポーターが振り返り、シザと挨拶をした。

 彼もさすがに緊張した面持ちだ。


 服にマイクを取り付けられているシザは表面上は落ち着いている。

 

「はー……っ、頑張れよシザ……我慢だぞ……」


 アイザックが隣の部屋に移動して座り、マジックミラー越しにスタジオを、祈るような表情で見つめている。

 ライルは座らず壁に凭れかかって、腕を組んだ。



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