STAGE2 テレビ局爆破を阻止せよ!

第12話 嵐の訪問者①

「ふぁ……眠い」

「言っとくけど、お前のせいだからな……」


 ゴールデンウィーク明けの、5月の学校。朝のホームルームが始まる、ちょっと前。わたしとあおいは、そろって机に突っ伏していた。


「なーにやってんのさ。ふたりそろって」

沙織さおりぃ……」

「ましろのせいで寝不足なだけだ」

「何してたの? まさか、高校生にもなって朝まで知識対決してたんじゃないでしょうね」

「違うちがう」


 そんな無謀なことしないよ。昔はともかく、今やったらわたしがボロ負けするに決まってるじゃん。 ……いや、昔もほとんどあおいが勝ってた記憶しかないけど。


「トランプ……」

「は? トランプぅ?」


 沙織は、2回、パチパチとまばたきをした。


「トランプのスピード対決してたんだ」

「ずっと同点で、なかなか決着つかなくて……」

「……アンタら、アホなの?」

「「………………」」


 沙織に真顔で言われて、反論の余地もないわたしたち。

 と、なんだか急に廊下のほうがザワザワしてきた。


「何あれ?」


 聞いてみるけど、2人とも首を横に振るばかりだ。


「ね、なんで2年の伊瀬海いせみスバル先輩がここにいるの!?」

「わかんない……え、こっちに来る!?」


 そんな声が聞こえた瞬間、教室のドアがパッと光った――ように見えた。

 人だ。光をまとっている人。

 色素の薄い茶髪に、180センチほどありそうな高身長。

 芸能人なみのキラキラオーラをまとっている男が、そこにいた。

 そして、ソイツは爽やかな、ウサンくさくも見える笑顔で、こう言った。


涼風すずかぜましろさんと、風凪かざなぎあおいくんって、このクラスだよね?」


 視線が集まった。教室が、シンと静まり返る。


 ……アナタ、ダレデスカ?


 固まるわたしとあおい。教室を見回したソイツと、バッチリと目が合ってしまう。

 ソイツは、つかつかとこっちに歩いてくると、にっこりと微笑みかけてきた。


「はじめまして。オレは2年の伊瀬海いせみスバル。よろしくね」

「……はぁ」

「「よろしく、お願いします……?」」


 最後のほうは疑問形だ。コイツ――伊瀬海スバルは、何しに来たんだろう?


「で。なんの用ですか」


 あおいが、いつもよりちょっとだけ、ほんのちょっとだけ低い声でたずねた。

 多分、気づいたのはわたしくらいだろう。わたしが朝まで勝負ふっかけて寝不足のところに、こんな意味不明な先輩が来たから、不機嫌になったのかも。


「いや? 特に用はないんだけど、うわさのキミたちの顔を見ておきたいなーと思って」


 ……は?


「ええっと……それだけですか?」

「うん。それだけ」


 …………ハァ? なんなんだ、この先輩、ホントに。


「それじゃ、また来るね」


 伊瀬海スバルは、再び爽やかスマイルを浮かべてひらひらと手を振ると、颯爽と去っていった。


「「……来なくていいです」」


 ざわめきを取り戻した教室で、わたしたちの呟きが重なった。

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