星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~
金星タヌキ
第1話 薬種商〈碧猫屋〉
――カランッ カラン… カラン……――
「あ~ ヒマや~。なんかオモロイ話ない~?」
ウインドチャイムが鳴る音と共に薄暗い店内に入ってくる褐色肌のエルフ。
少し低音の柔らかな東方訛り。
それに答える 鈴の鳴るような高音 西方標準語。
「あら? ちょうど良かった
クリーム色の綿シャツに同じく綿の青いスカート。
キャンバス地の大きな鞄を たすき掛けに2つ掛け これまたキャンバス地の大きな
店に入ってきた 闇エルフの眼を見てニッコリと微笑むソバカス娘。
少女の名前はマリノア。
ここ薬種商〈
年の頃は17~18といった風情。
髪の艶めきが 光の加減で不可思議な反射を起こし まるで
「あー ごめん マリノア。今日 ウチ 忙しいんやった……。悪いけど また 今度な?」
「
「えーっ 嫌やし。東の森なんて オモロないやろ? 誰かバイトにでも行かせたら ええんちゃうの?」
褐色の肌に
エルフの女性としては かなりの長身で豊満な身体つき。
大きく開いた濃紺色のレザードレスの胸元は マリノアの
年の頃は 人間ならば20代前半21~22歳といった佇まい。
「それが バイトのヤツ 魔導院の試験だか 何だかで 休みなのよ。なのに急ぎで回復薬の注文入っちゃってさ。上お得意様だし〈
「にしても 東の森なんて ツマランやん? 出ても
「ハァ? アタシ
「魔法使えへんって
「……あのねぇ。薬瓶は その場で最後の調合しなきゃなんないワケ。じゃなきゃ大爆発起こすような薬品 危なくて持ち歩けないでしょ? 薬師は 護衛無しじゃ
「
「どーゆー意味よ?」
「いや そのまんまの意味やけど……」
不満気な表情で
「……わかった。急な仕事で 報酬良いから アンタにも ちゃんと報酬払うから」
「その言い方やと はじめは 報酬払う気なかったやろ? ウチには 分かるで?」
「……そっ そんなこと 無いわよッ? ちっ ちゃんと 払う気だったわよ? 大丈夫だって!」
「それに ウチ 今日は装備品 部屋に置いて来てん。今 持ってんの 護身用の
「
渋々 しょうがなしに……という表情を作って マリノアが
その眼を ジト目で見返しながらの 闇エルフの返答。
「さっき『急ぎの仕事で』って
「……フンッ アンタとは やりにくいわね。10枚乗せるわ35枚」
「折半
「チッ… しょーがないわね。37枚で 手を打つわ。その代わり 荷物持ちも やんなさいよ?」
「嫌やし。それも折半な」
肩掛け鞄を1つ
鞄を たすき掛けにしながら薬師に確認する
「納期 いつ?」
「3日後」
「うっわ。強行軍やん」
「そーよ。モタモタしてる時間無いんだからっ。さっさと出かけるわよッ」
〈
採集時間や調合時間を考えれば 既にギリギリのタイミング。
マリノアと
………。
……。
…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます