第12話 死神の大太刀 什弐
逃げた盗賊を追跡し、
犬神の祠から集落へ戻る途中。
しかし、状況は一変する。
「根無し草だと、まぁあれだな・・・自分が野盗じゃないと証明するだけで一苦労だな。まったく、身形が悪いよな身形が。あーあ、
冗談混じりに呟く。だが、この場でそれを笑えるのは
現在、
既に背中を見失って久しい。やはり奴等は山歩きに慣れている。どこかに足跡でもあれば追跡も容易だろうが、自分達がお尋ね者だと自覚している奴らはそうそう馬鹿ではない。
多少土地勘はあるにせよ、
今は早く奴らの殲滅を終わらせたいところだ。
盗賊と戦いながら
「・・・数が多する。」
集まっていると言っても、多く見積もって精々が二百から三百程度だと考えていた。昨日までに切り倒した者達でおそらく二百程度になるだろう。集落で待ち伏せしたのだ四十。先の戦闘で斬ったのが四十。それから、逃がしたのが数十人。助けを求めた先の戦力が低いとは考えにくい。さらに百と想定すると・・・総数は四百より多い。
小競り合いのような戦争を行っているのは
「それら全てがここに集まっている?」
この
一斉に槍の穂先が
「弓兵、放て。」
号令が響く。槍衾の向こうから一斉に矢が舞い上がる。そして、それらは一斉に落下を始めた。
迫る矢の雨。
「第二射、用意。」
先と同じ声が響く。それから別の号令が響いた。
「左右から回り込んで奴を炙りだせ。」
動いているのは短槍を持った歩兵隊。正確な数は分からない。得物が短槍なのは、林の中での戦闘を想定した結果だ。この部隊は戦慣れしている。
少数を追い詰める策として罠を張られた。誘い込まれたのだ。では、こちらの選択は?逃げるか、隠れてやり過ごすか、それとも・・・。
そんな中で
「ふふ・・・こんな奴等に逃げる?そんな選択をしていてはよ・・・ふふ、追いつけねぇよな、あの人には。」
「推して参る。」
叫ぶと同時に大太刀を抜き放った。漆黒の刀身が露わになる。
この動きが指揮をとる者の虚を突いた。
槍衾を敷く部隊に向かって駆ける。間合いに入った途端に振るわれた大太刀は、槍襖をかち上げるには十分な威力だった。槍衾の一角が崩れる。陣形にできた穴に
踏み込むと同時に漆黒の一閃を放つ。両断するには至らなかった。だが、陣形を破壊する大穴を開けた。
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