第3話 ある日の授業風景

はい、授業を始めますよー。

あれ? 見たことない顔ぶれが何人か…?。

んー、じゃあ復習ということで行きましょうか。

ここは魔獣について学ぶ学校ですからね、テストにもちゃんと出ます。

なので、心して聞くよーに!



魔獣、まあ魔力を持った動物ですね。

彼らがいつ現れたのか、というのは厳密にはよく分かってません。

大体100~200年前、といったところです。

ある日突然、というわけでもなく、隕石が落ちた次の日から、というわけでもなく。

魔力なんてなかった時代に突然凶暴な動物が現れたわけですから、それはもう驚いたでしょうね。

当時では魔力を持たない熊ですら脅威だったそうですから。

世界で最初の魔獣はオオカミ…というかイヌだったのです。

フランスで、散歩中のイヌが突然凶暴になって喰い殺されたのが最初の魔獣被害です。

…日本?

日本で最初はー、えーと、そう、長野県の山中の村ですね。

熊の魔獣だったのですが…誰も気づかない間に村が全滅、実家に帰ってきた男性が初めて通報したっていう、恐ろしい事件でした。

…あれ?

皆さん知りませんでした?

先生の世代は皆魔獣の怖さを学ぶためにこの事件を基にした映画を観たのですが…

めちゃくちゃ怖かったですよ。

今でもトラウマです。


…まあそれからなんやかんやで今に至る、と。


え?雑すぎる?

うーん、魔獣がどうこうについては世界で同時多発的に起こったので、時系列に直すのが難しいのですよ。


じゃあ魔獣への対策について見ていきましょうか。

当時一番対策が進んでいたのはアメリカでした。

未曾有の危機に一番頼りになるのは純粋な武力と国力ですから。

あ、そうそう、魔力を最初に発見したのもアメリカでしたね。

というのも、軍人がライフル銃を壊された時に「焼け死ね」と叫んだら火属性魔法が発動したとか。

まあ「魔法」とのことですが、おそらく「魔術」でしょうね。

これも映画になっています。


魔獣による被害が増えるなかで、各国が出した対策が大都市を大きな壁で囲む、というものです。

あ、今笑ったでしょう?

確かに単純ですけれど、コストが低い上に簡単に効果が出ますから、当時では最も被害を減らすことの出来る手段だったのです。


そんな世界に反して日本は盛大に出遅れます。

だって考えてみてください、人々は全員が都市部に住んでいるとは限りません。

例えば、日本初の被害が出た村、山の中にどうやって壁を造るのか?

海の近くの町はどうするのか?

なら見捨てるのか?

どんな手段を取るにしろ、問題は山積みだった訳です。


しばらくしてから「魔法」の噂が広がり、資源に頼らない「武器」の開発に着手する団体が出ます。

その一つが今の対策局の前身となった団体です。

名前までは先生も分からないです。

同じような団体が分離したり合併したり繰り返してましたし。


その中で半ば国営企業になりかけていて、「対策省」と呼ばれていた時期があったんです。

表立って魔獣の駆除を行っていたのは自衛隊だったのですが、日本は最低限の武器しかなかったので、そこで限界が来ます。


で、どうなったかというと、

「対策省」を解体、

「対策局」を民間企業として再編、

各国と協議した上で、

「自衛隊」の持つ「武装する権利」のようなものを

国民を守ることを条件として、

「対策局」に譲渡したんです。


当然、「『武装する権利』のようなもの」は政府の許可ありきですよ?

それにしても凄い判断です。

あり得ないことですよ、これは。

って先生の同級生は言ってました。


そうして初代局長 春夏秋冬しき 朝陽あさひを中心とした今の対策局ができたんですね。




ふー、先生疲れましたよ。

そもそもこれ、何の授業でしたっけ?

あ、チャイム。

宿題はー、無しで。

でも、特に魔獣関連はこれからテストによく出るので復習しておくこと!

じゃ、お疲れ様でしたー。





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