第15話
「もういい……どうせ閉じ込めるのだろう?」
「奥様が、逃げ出したりしないと約束してくだされば、家の中はご自由に。外は旦那様とご一緒の時だけです。危険ですから」
「あの男はどこに行った?」
「ユリウス様とお呼びするのがよろしいかと。もう少し女性らしい言葉遣いをなさってはいかがですか?」
オデットはじろりとハンナを睨んだ。失礼にもほどがある。これは叱りつけていいはずなのに、相手の態度がそうさせてはくれない。反抗したら何倍にもなって返ってきてしまいそうで、オデットは黙り込んだ。
「閉じこもりたくないのなら、食事は食堂で召し上がってください。高貴な身分の方達は寝台で朝食をおとりになるのかもしれませんが、騎士の家はそうはいきませんよ。食堂は奥の階段を降りたところにありますから、ご自分で来てくださいね」
さっさと出て行ったハンナの足音が完全に消えたあと、オデットは悔しくて地団駄を踏んだ。
このまま引きこもってしまいたかったが、確かに空腹だ。
部屋の外に出るには、あの女に謝罪して、着替えを手伝ってもらうか、自分でどうにかするか、あるいは……。
もう一度クローゼットの中をのぞいてみる。ドレスは前開きのものもあって、自分でも着れそうだが、コルセットの締め方など知らない。オデットはこの質素なドレスを着る価値を見出せず、努力を放棄した。
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