第2話 Play国

 ところで、この謎のiPhoneを投げてきた救世主は一体誰なのだろうか。

「ところでお前は一体全体誰なんだ。」

「ああ、すっかり自己紹介を忘れていたよ。俺はPlay。ここから1280kmほど離れたPlay国という国の王をしている。」

 驚きを隠せなかったジョルジョバは、思わず「え!?」と失礼ながらも大きな声を出した。『Play国』という国は知らないが、どちらにしても国王なのは驚くべきことである。

「君もPlay国の住民にならないか?」

 突然Playはそう言った。少しためらいもあったが、ここにいるよりはマシだと思ってすんなり引き受けた。ただし、一つ聞き逃していたことがあった。それは、1280kmという距離である。Playが国王であるという事実に引っ張られ過ぎて、他のことを気にしていなかったのである。これは大失敗だ。文句を言っても仕方ないので、なんとか1週間かけて徒歩でPlay国まで行った。


 Play国に着いた。もう激しく息切れをしている。ここまで酸素を欲しているのを認識するのは初めてだ。しかし、Playは全く息切れをしていない様子だった。おそらく、この距離を歩くのに慣れているのであろう。

「そういえば、何故あの時俺を助けられたんだ?」

 そう不意に尋ねると、Playは迷いなくこう答えた。

「元々はPlay国の住民を募集するために辺りを見回っていたのだけど、俺も君が危険にさらされているのを知っていたからさ。やっぱり、その集団の情報を集めたいし、第一、目の前で死人が出るのは嫌なんだよ。」

 話を聞いたらもっと訳が分からなくなった。Playが住民募集をするためにわざわざ1280kmも歩いているのも変だし、何故なんの関係もない集団の情報を集めたがるんだ。何もかもがおかしい。まあ、実際は口に出してはいないが。

「ところで、その弱っちいiPhone8持ってるだけで、他に武器はないのか?」

 Playはそう質問した。少々腹が立ったが、冷静に考えてみるとPlayもiPhoneで戦っている。どっちも同類なような気がしたが、コイツが投げるiPhoneは何かが違う。

「他に武器はないよ。お前もだろう?ただ、俺が持っているiPhone8とは何かが違うよな。あれは何なんだ。」

「ああ、俺のはiPhone14なんだ。機種が強いと、威力も格段に違うのだよ。」

 さらに、Playはゆっくり歩きながらこう言った。

「この国には鍛冶屋や訓練場がある。君もこの国で強くなり、あの醜いてるみや達を倒す程の力を身につけた方がいいぞ。もしかすると、アイツらはこの国にまで襲ってくるかもしれないからな。」

 そう聞いて、すぐに鍛冶屋へ行こうと思った。新しい武器を買えるなら、それはもっとマシになることだろう。

 鍛冶屋に着くと、職人の今家が横たわって新聞を見ていた。そんなことお構いなしに、ジョルジョバは今家に話しかけた。

「すみません。ジョルジョバという者なんですが、今謎の集団に...」

続けようとすると、遮るように今家は「ジョ、ジョルジョバ!?」と大きな声を出した。どうやらこの国の者は全員俺の名を知っているようだ。あいつ、どれだけ話をばら撒いてるんだ...

「そ、それで、武器が欲しいんだよね?すぐ用意するから!」

焦った感じで今家は武器を取りに行った。あんなに横たわって怠けていたのに、すごい行動力だ。待っている間、この国も被害に遭うんじゃないか?とか、俺は死んでしまうのか?とかをずっと考えてしまっていた。どれだけ前向きに行こうとも、衝撃は半端なかった。そうしているうちに、今家が武器を持ってきた。

「これが『iPhoneソード』だ。」

いや、またiPhone!?強い武器が出てくるのかと思ったら、なんとも弱っちそうな見た目の武器が出てきたのである。

「あの...ふざけないでもらっていいですか??こっちは本気なんです。」

「そう言うと思ったよ。でも、まだまだ判断力が足りないね。」

「いや、どこからどう見ても雑魚そうですが。」

「見た目に囚われるなよ。」

そう言って、今家はiPhoneソードを振った。すると、見た目からは考えられないような強い衝撃波が出て、目の前にある変なおっさんのコレクションのようなものを完全に真っ二つに斬ってしまったのである。

「これはiPhone8の100倍の力があるんだ。iPhone系武器では最も強いと言われている。」

「は、はあ。・・・とにかく、ありがとうございます!えっと、何円払えばいいですか。」

今家は少し悩んでから言った。

「まあ、今回は特別にお金は要らないよ。頑張って。」

そう言って遠くへ行ってしまった。この恩は一生忘れない、と一瞬思ったが、さっきの台詞を言った今家の顔が「こんなこと言える俺かっけー」というドヤ顔だったのを思い出して、やっぱりいいや、と感じてそのまま鍛冶屋を出た。


鍛冶屋を出ると、目の前には待ち構えるようにてるみやが居た。そう、あのiPhoneXを投げる厄介な方のてるみやである。しかも、最初の時と同じ4体。でも、この武器を試すのに丁度いい。

「今度こそお前をぶち...」

言わせる間もなく剣を振った。すると、全員が真っ二つに割れた。やはりこの剣は強すぎる。もう俺の前に敵はいない。どんどんかかってこい!・・・と言いたいところだが、そもそもここまでもう軍が押し寄せてきているのが問題だ。こんな短時間でどうやってここまで来たのだろうか。これは国王であるPlayに報告しなければならないな。そう思ってジョルジョバは城へ急いだ。


― 一方その頃...

辺りが闇に包まれ、颯爽と風が吹き抜ける森の中で、その集団はある『作戦』を立てていた。

「そろそろ、出番のようですよ?夜てるみや君。」

「あのクズ共がやられたんですね。」

「ああ。あいつらはゴミだ。お前が行って、格の違いを見せつけてくるのだ。」

「承知しました。今すぐ向かいます。」

夜てるみやはそう言って全速力で北西へと進んだ。

「はっはっは、夜てるみやで国を崩壊させてやる。そして、ジョルジョバ... いや、俺の人生を壊した犯人を一刻も早く暗殺しなければなあ。」

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