第2話「罠の糸」
朝日が差し込むリビングで、麗子は一人コーヒーを啜っていた。壁にかかった時計は午前6時を指している。哲也はまだ眠っていた。昨夜、彼は深夜2時に帰宅し、酒臭い息を吐きながらベッドに倒れ込んだ。
麗子はスマートフォンで、昨夜の写真を眺めていた。哲也が会社の同僚たちと高級クラブで豪遊する姿。その隣には若いホステスが座り、彼の肩に手を置いている。写真を送ってくれたのは、麗子が雇った探偵だった。
「この程度で済むと思っているのね」
麗子は静かに呟いた。彼女の計画は着実に進んでいた。小雪を遠ざけたことで、哲也は動揺し、仕事にも支障をきたし始めていた。そして次は、彼の仕事そのものを脅かす番だった。
***
「田中専務、お時間よろしいでしょうか」
麗子は電話で哲也の上司・田中専務に声をかけた。
「麗子さん?どうしたんだ?哲也に何かあったのか?」
「いいえ。個人的にお話ししたいことがありまして」
麗子は銀座のレストランで田中専務と待ち合わせた。高級フレンチレストランの個室で、麗子は最高の装いで現れた。
「久しぶりだね、麗子さん」
田中専務は笑顔で麗子を迎えた。60歳を過ぎた彼は、哲也が勤める商社の重役であり、優子の夫だった。
「お時間を取らせてすみません」
麗子は穏やかに微笑んだ。「実は、哲也のことで相談があって」
「哲也?何かあったのか?」
「最近、様子がおかしくて...」麗子は演技の才能を発揮した。「夜遅くまで帰ってこないし、会社での様子も知りたくて」
田中専務は麗子の話に頷きながら聞いていた。
「確かに、最近の彼は集中力に欠けるようだ。何かあったのか聞いてみたが、いつも大丈夫だと言うばかりでね」
麗子は満足げに微笑んだ。彼女の予想通り、哲也の仕事ぶりに影響が出始めていた。
「それで、どうしたらいいと思いますか?」
「私から話してみようか?」
「いえ、それは...」麗子は困ったような表情を浮かべた。「実は、もう一つお話があって」
麗子はスマートフォンを取り出し、田中専務に見せた。画面には、田中専務が若い女性と高級ホテルに入る写真が映っていた。
「これは...」田中専務の顔が青ざめた。
「心配しないでください。誰にも言うつもりはありません」麗子は冷静に言った。「ただ、哲也を守るために、あなたのお力が必要なんです」
田中専務は動揺を隠せなかった。麗子は彼の弱みを握ったことで、自分の計画を進める駒を一つ手に入れたのだ。
***
帰宅した麗子は、リビングのソファに座り、次の一手を考えていた。田中専務の協力を得たことで、哲也の会社での立場を操ることができるようになった。
「麗子、今日も遅くなるからな」
出勤前の哲也が麗子に声をかけた。彼の顔には疲れが見えた。
「分かったわ。気をつけてね」
麗子は優しく微笑んだ。哲也が家を出ると、彼女は再びノートパソコンを開いた。画面には「復讐計画:Phase 2」と書かれている。
今日の目標は、哲也の会社の同僚たちへの工作だった。彼らに哲也の浮気の噂を広めるのではなく、むしろ彼が精神的に不安定になっているという噂を広めることだった。
***
「須藤さん、お久しぶりです」
麗子は哲也の部下・須藤と喫茶店で会っていた。彼は哲也の右腕として働く35歳の男性だ。
「麗子さん、どうされました?」
「哲也のことで心配で...」麗子は演技の才能を発揮した。「最近、夜中に悪夢を見て叫ぶんです。精神科に行くよう勧めても聞かないし...」
須藤は驚いた様子で麗子の話を聞いていた。
「会社では、そんな様子はありませんが...」
「表では取り繕っているのでしょうね」麗子は悲しそうに微笑んだ。「どうか、彼のことを見守ってください」
須藤は麗子に同情的な目を向けた。その場では疑問を抱いていたが、後日、哲也が会議中に突然立ち上がり、意味不明の言葉を口にする場面を目撃することになる。それは麗子が仕組んだ罠の一つだった。
***
「専務、これは調査結果です」
田中専務の秘書が書類を持ってきた。それは、新規プロジェクトの市場調査報告書だった。
「ありがとう。哲也部長の担当だったが、最近の彼の状態を考えると...」
田中専務は秘書に目配せした。麗子との約束通り、彼は哲也から少しずつ重要な仕事を取り上げ始めていた。
***
一方、小雪は地方の姉の家で、孤独な日々を送っていた。麗子からの指示で、哲也との連絡を絶っていたが、もう限界だった。
「私、東京に戻ります」
小雪は麗子に電話をかけた。
「まだよ」麗子の声は冷たかった。「あなたの身の安全が保証されていないわ」
「でも...」
「哲也があなたを追い詰めようとしているの。彼の精神状態が不安定になっているの」
麗子の言葉に、小雪は恐怖を感じた。彼女は麗子を信じていた。彼女を守ってくれる唯一の存在だと思っていたからだ。
「もう少し待って。全てが落ち着いたら連絡するわ」
麗子は電話を切った。彼女の計画は順調に進んでいた。小雪を操り、哲也を追い詰め、そして会社での彼の立場を崩していく。全ては復讐のためだった。
***
夜、麗子は庭のバラを眺めていた。真紅の花びらが月明かりに照らされ、妖しく輝いている。
「もう少しね」
麗子は微笑んだ。彼女の復讐は、まだ始まったばかりだった。
翌朝、哲也は重要な会議を前に緊張していた。新規プロジェクトのプレゼンテーションを控えていたのだ。しかし、彼が会議室に入ると、既に田中専務が別の部署の部長とプレゼンの準備をしていた。
「あれ?今日のプレゼンは...」
「ああ、哲也君」田中専務は申し訳なさそうな顔をした。「君も最近忙しそうだったから、佐々木部長に手伝ってもらうことにしたんだ」
哲也は混乱した。彼にとって、このプロジェクトは昇進への重要なステップだった。それを奪われるなんて。
「でも、専務...」
「心配するな。君には別の重要な仕事を任せるつもりだ」
田中専務の言葉に、哲也は不安を感じた。しかし、ここで反論すれば立場が悪くなることを知っていた。彼は黙って頷くしかなかった。
***
「健太郎さん、お待たせ」
麗子は再び哲也の部下・健太郎と会っていた。今回は、高級レストランでのディナーだった。
「麗子さん、こんな素敵な場所に誘っていただいて...」
健太郎は明らかに緊張していた。麗子が彼を誘ったことに戸惑いを隠せないようだった。
「あなたにどうしても話したいことがあって」麗子は真剣な表情をした。「哲也のことなんだけど...」
麗子は健太郎に哲也の不倫のことを話した。もちろん、全てを話したわけではない。哲也が不安定になっていること、仕事に支障をきたしていること、そして何より、麗子が苦しんでいることを強調した。
「それで、私に何ができるんでしょうか?」
健太郎は麗子に同情的な目を向けた。彼は昔から麗子に好意を抱いていたが、上司の妻である彼女に近づくことは避けていた。
「ただ、話を聞いてほしかっただけ」麗子は健太郎の手に自分の手を重ねた。「あなたが私の味方でいてくれるだけで十分よ」
健太郎は麗子の手の温もりに、動揺を隠せなかった。
***
帰宅した哲也は、リビングのソファに座り込んだ。今日も散々な一日だった。重要なプロジェクトを取り上げられただけでなく、同僚たちの目が彼を疑うように見ていた。
「お帰り」麗子は台所から顔を出した。「今日はどうだった?」
「最悪だよ」哲也は素直に答えた。「なぜか、最近仕事がうまくいかないんだ」
「そう...」麗子は同情的な表情をした。「無理しないでね」
哲也は麗子の優しさに、胸が痛んだ。彼は小雪のことを考えていた。彼女が突然姿を消してから、連絡が取れなくなっていた。もう会えないのかもしれないという恐怖が、彼を苦しめていた。
***
翌日、麗子は美容院に行った。ショートカットをさらに洗練された印象に変え、髪の色も少し明るくした。
「麗子さん、お似合いですよ」
美容師の言葉に、麗子は微笑んだ。彼女の外見の変化は、内面の変化を表していた。もはや、哲也の従順な妻ではなく、復讐に燃える女性へと変貌していたのだ。
美容院を出た麗子は、銀座の高級ブティックに向かった。今日は特別な買い物をする予定だった。哲也の会社の創立記念パーティーが近づいていたからだ。今年は創立60周年という節目で、大々的に開催される予定だった。
「このドレスはいかがでしょうか」
店員が麗子に黒のドレスを持ってきた。胸元が大胆に開いた、セクシーなデザインだ。
「素敵ね」麗子は満足げに微笑んだ。「これにします」
彼女の頭の中には、既にパーティーでの計画が練られていた。
***
「健太郎さん、電話ありがとう」
麗子は健太郎からの電話を受けていた。彼は哲也の様子を報告するために、毎日麗子に連絡するようになっていた。
「今日も哲也さんは会議中にボーっとしていました」健太郎の声には心配が滲んでいた。「田中専務も気にしていましたよ」
「そう...」麗子は微笑んだ。「あなたが見守っていてくれるから安心だわ」
健太郎は麗子の言葉に喜びを感じた。彼は知らなかった。自分が麗子の計画の駒の一つになっていることを。
***
夜、麗子はノートパソコンで小雪のSNSをチェックしていた。麗子が用意した偽アカウントに、小雪は日々の不安や孤独を綴っていた。
「もう限界です...誰か助けて」
小雪の投稿を読み、麗子は満足げに微笑んだ。彼女は小雪に返信した。
「大丈夫。私があなたを守るから」
麗子は偽のアカウントを使って、小雪の精神を操り続けていた。哲也が危険な状態にあること、彼が小雪を追い詰めようとしていること、そして麗子だけが彼女を守れるということを、繰り返し植え付けていたのだ。
***
「麗子、今週末の創立記念パーティー、一緒に行くよな?」
哲也が麗子に尋ねた。彼の声には不安が滲んでいた。最近の彼は、麗子の前でも自信を失っているようだった。
「もちろんよ」麗子は微笑んだ。「新しいドレスも買ったわ」
「そうか...」哲也は安堵の表情を浮かべた。「今年は大きなパーティーになるから、一緒に行きたかったんだ」
麗子は哲也の肩に手を置いた。その手の温もりに、哲也は久しぶりに安心感を覚えた。彼は知らなかった。妻が彼の破滅を計画していることを。
***
パーティー当日、麗子は黒のドレスに身を包み、最高の美しさで現れた。会場となった高級ホテルのバンケットホールには、哲也の会社の役員や社員、そして取引先の代表者たちが集まっていた。
「麗子さん、素敵ですね」
田中専務が麗子に声をかけた。彼の隣には妻の優子がいた。
「ありがとう」麗子は優雅に微笑んだ。「優子さんも素敵よ」
優子は笑顔で応えたが、その目は麗子を値踏みするように見ていた。彼女は知らなかった。麗子が既に夫の秘密を握っていることを。
パーティーは盛大に進み、会社の社長によるスピーチが行われた。その間、麗子は静かに場の雰囲気を観察していた。哲也は同僚たちと話しているが、どこか緊張している様子だった。
「麗子さん、お久しぶりです」
背後から声がした。振り返ると、そこには哲也の同僚・鈴木がいた。彼は哲也と同期で、今は別の部署の部長を務めていた。
「鈴木さん、元気にしてた?」
「ええ。ところで、哲也君の具合はどうですか?」
麗子は鈴木の質問に、一瞬驚いた。それから、演技の才能を発揮して悲しそうな表情をした。
「実は...」麗子は声を低くした。「最近、精神的に不安定で...」
鈴木は驚いた様子で麗子の話を聞いていた。麗子は計算通り、哲也の精神状態についての噂が会社内で広まっていることを確認した。
***
パーティーの最中、麗子はバルコニーに出た。夜風が彼女の髪を揺らす。
「一人でいいかな?」
声がした。振り返ると、そこには健太郎がいた。
「もちろん」麗子は微笑んだ。「今日は素敵なパーティーね」
「麗子さん...」健太郎は真剣な表情をした。「実は、話があるんです」
麗子は健太郎の話に耳を傾けた。彼は哲也の仕事について、詳細に報告してくれた。田中専務が哲也から重要な仕事を取り上げ始めていること、同僚たちが彼を避け始めていること、そして何より、哲也自身が自信を失い始めていることを。
「あなたが教えてくれて、本当に助かるわ」
麗子は健太郎の手を取った。彼はその温もりに、胸が高鳴るのを感じた。
「何でも言ってください。僕にできることなら...」
「本当に?」麗子は健太郎の目をじっと見つめた。「じゃあ、お願いがあるの」
健太郎は麗子の言葉に、思わず息を呑んだ。
***
パーティーが終わり、タクシーで帰宅する哲也と麗子。哲也は妻の美しさに見とれていた。
「今日は楽しかったな」
「そうね」麗子は微笑んだ。「久しぶりに社交の場に出たわ」
哲也は麗子の手を取った。彼女は抵抗しなかった。
「最近、俺は...」哲也は言葉に詰まった。「何か、うまくいかないことばかりで...」
「大丈夫よ」麗子は優しく微笑んだ。「私がついているわ」
哲也は麗子の言葉に、涙が出そうになった。彼は妻の温かさに、久しぶりに安心感を覚えた。
「麗子、俺は...」
哲也が何か言いかけた時、彼のスマートフォンが鳴った。画面には「鈴木」と表示されている。
「今?」哲也は時計を見た。既に夜11時を過ぎていた。「すまない、ちょっと出るよ」
哲也が電話に出ている間、麗子はウインドウから夜景を眺めていた。街の明かりが、彼女の冷たい瞳に映り込んでいる。
「悪い、緊急の仕事が入ったんだ」哲也は電話を切って言った。「今から会社に行かなきゃならない」
「今から?」麗子は驚いたふりをした。「気をつけてね」
哲也はタクシーを会社近くで降り、麗子は一人で帰宅した。
玄関に入ると、麗子は直接リビングに向かい、ノートパソコンを開いた。画面には監視カメラの映像が映し出されている。それは、哲也の会社のオフィスの映像だった。
「さあ、始まるわね」
麗子は満足げに微笑んだ。彼女は知っていた。哲也を呼び出したのは鈴木ではなく、健太郎だということを。そして、その場所には既に罠が仕掛けられていることを。
画面に映るオフィスに、哲也が入ってきた。そこには、健太郎の姿があった。彼らは何か話し始めたが、麗子には音声が聞こえない。しかし、それは問題なかった。彼女の計画は既に動き出していたからだ。
***
翌朝、麗子は早起きして朝食を準備していた。哲也は午前2時に帰宅し、疲れ切った様子で眠り込んでいた。
「おはよう」
リビングに現れた哲也は、憔悴しきった表情をしていた。
「おはよう。コーヒーを入れたわ」
麗子は微笑んだ。哲也は感謝の言葉を述べ、コーヒーを一口飲んだ。
「昨夜は...」
「言わなくていいわ」麗子は哲也の言葉を遮った。「仕事のことでしょう?」
哲也は黙って頷いた。彼は知らなかった。昨夜の出来事が、麗子の計画の一部だということを。
「今日も出勤するの?」
「ああ...行かなきゃ」
哲也の返事には、迷いがあった。麗子はそれを見逃さなかった。
「無理しないでね」
麗子の言葉に、哲也は弱々しく微笑んだ。彼は出勤の準備を始めた。
彼が家を出ると、麗子はスマートフォンを取り出した。画面には「健太郎」からのメッセージが表示されている。
「計画通り進みました。今日、田中専務が哲也さんを呼び出します」
麗子は満足げに微笑んだ。彼女の罠は、着実に哲也を追い込んでいた。
***
昼過ぎ、麗子は再び田中専務と会っていた。今回は、彼のオフィスだった。
「麗子さん、こんなところに来てもらって申し訳ない」
田中専務は緊張した様子で麗子を迎えた。
「いえ、こちらこそ」麗子は優雅に微笑んだ。「お時間を取らせてすみません」
「それで、例の件だが...」
「ええ、約束通り」麗子はスマートフォンを取り出した。「削除しました。もう証拠はありません」
田中専務は安堵の表情を浮かべた。彼は麗子に借りができたことを知っていた。そして、それが彼女の計画の一部だということも。
「それで、哲也のことだが...」
「ええ、お願いします」麗子は真剣な表情をした。「彼を会社から遠ざけてください。精神的に不安定になっているんです」
田中専務は頷いた。彼は約束を守るつもりだった。麗子の秘密を守る代わりに、哲也を会社から追い出すことを。
***
夕方、麗子は小雪に電話をかけた。
「どう?元気?」
「はい...」小雪の声は弱々しかった。「でも、もう限界です。東京に戻りたいんです」
「まだよ」麗子の声は冷たかった。「哲也の状態が悪化しているの。あなたを見つけたら、危険よ」
「でも...」
「もう少し待って」麗子は優しく言った。「私があなたを守るから」
小雪は泣きながら電話を切った。麗子は満足げに微笑んだ。彼女の計画は順調に進んでいた。
***
夜、麗子は庭のバラを眺めていた。月明かりに照らされた真紅の花びらが、妖しく輝いている。
「もう少しね」
麗子は微笑んだ。彼女の復讐は、次の段階に入ろうとしていた。
そして、哲也が帰宅したのは夜中の1時だった。彼は玄関から入るなり、リビングのソファに倒れ込んだ。
「どうしたの?」
麗子はリビングに姿を現した。彼女は既に寝巻きに着替えていたが、哲也を待っていたのだ。
「麗子...」哲也の声には、絶望が滲んでいた。「俺は...会社を辞めることにした」
麗子は驚いたふりをした。しかし、彼女の心の中は喜びで満ちていた。計画が予想以上に早く進んでいるのだ。
「どうして?」
「もう...限界なんだ」哲也は顔を手で覆った。「最近、仕事がうまくいかない。同僚たちも俺を避けている。そして、今日は...」
哲也は言葉を詰まらせた。麗子は彼の側に座り、肩に手を置いた。
「何があったの?」
「田中専務が...俺に休職を勧めてきたんだ」哲也の声は震えていた。「精神的に不安定だから、しばらく休んだ方がいいって...」
麗子は哲也を抱きしめた。彼の肩が震えている。彼は泣いていた。
「大丈夫よ」麗子は優しく囁いた。「私がついているわ」
哲也は麗子の温かさに、全てを委ねた。彼は知らなかった。妻が彼の破滅を計画し、実行していることを。
麗子は哲也を抱きしめながら、満足げに微笑んだ。彼女の復讐は、着実に進んでいた。夜に咲く復讐の花は、これからもっと鮮やかに咲き誇るだろう。
「麗子...」哲也は麗子の肩に顔を埋めたまま、呟いた。「俺は...何かおかしくなっているのかな」
「そんなことないわ」麗子は優しく哲也の背中をさすった。「あなたは立派よ」
哲也は麗子の言葉に、わずかに安心したように見えた。彼は妻の腕の中で、次第に眠りに落ちていった。
麗子は眠る哲也を見下ろし、冷たい笑みを浮かべた。
「これはまだ始まりに過ぎないわ」
彼女の復讐は、次の段階へと進もうとしていた。
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