いざ突撃、高級魔道具店。
門兵こと、カイさんについて町中を歩く。
門から入ってすぐには大通り。左右に店が軒を連ね、呼び掛けしている所もあれば、夜営業へ向けて仕込みのための早仕舞いをしている所も。どの店も客入りが良さそうで活気がある。
もう少し進めば十字路に突き当たり、記憶が確かなら左が住宅街、右がギルド関連や役所等が立ち並ぶエリア、このまま真っ直ぐ行けば店が続き、最終的にそこそこ大きい町長の家に辿り着く。
ただやはり気になるのはこの町の規模。周りを見ても見覚えのない店が多く見受けられる。
うーむ。ただ単純に過去へと転生したということではないのかもしれない。
それプラス、パラレルワールド的な所に来てないかこれ?正解に近い気がするけど、確証は少なくてほぼなし。
ま、別に無理して知らなくても困りはしないけど。
しかしあれだ。皆チラ見しすぎでは?
いや、皆と言うと大袈裟か。見てない人もいるし。
でも今見てる人、あなた私の何が気になるんですか?妖精がいるからですかね?
あまり見かけないだけで、それなりにこの町にも来ているはずだけどなぁ。
まだ目ガンギマリでジーっと見られるよりはいいけど。
「があって胡桃が入っていて美味しいんですよ。おすすめです。で、あれがジュエリーショップで」
私が周りを見ながらふよふよと飛んでいる横で、門兵の彼はひたすらに町の案内をしてくれています。
一つ一つ建物を紹介されるので、もはや覚えきれません。看板の絵がその店を示すものだと覚えられたんですが、それ以外は覚えていない。
「なんですよ。あ、それで
カイさん、あなたちゃんと人の顔を見て話した方がいいと思いますよ。
教えてくれるのはありがたいのですが、情報が多すぎて途中顔を引きつらせながら覚えるのを諦めた私がいたことに気がついていなかったでしょう?
途中から周りを見て、美味しそうなものを見つけておりましたよ私。
うん、彼優しいし親切だけど⋯ちょっと違うなって思った。いい人止まりというか⋯。
いえ別に恋愛したいわけじゃないし、ここら辺にしておきましょう。
ともあれ、私が来たかった所に連れてきてくださってありがとうございます。
どうやらここが魔道具店。全体的に黒色が多く使われた建物って感じ。
看板には〈ソナ・ディアス魔道具〉と書かれています。
「ここが魔道具を売っている所か⋯ありがとうございます」
カイさんがドアを開けてくれたので、店内へと入ります。自力で開けられないので助かりました。
この問題もいずれ解決しておきたいな。一人で行動するなら、今後も似たような場面があってもおかしくないし。
念力あたりを覚えておけば楽だろうか。
「いらっしゃいませ。ソナ・ディアス魔道具へようこそ」
店内に入るのと同時に、その言葉と共にお辞儀をしてきた店員へ会釈して、商品を展示している所へ進む。
高級品を取り扱ってそうなシックな内装に、上品な音楽が聞こえてくる店内。⋯⋯お金足りるかな?
カイさんの耳元に行き、耳打ちする。
「ここ高そうなもの取り扱ってそうですけど、お金足りそうですか?」
「魔道具ってそもそも高級品ですからね。でも妖精さんのこのお金は合計2万マニー。一番小さい
彼は私のお金が入った袋をポンと叩く。
てか買い取り金額2万超えてたのね。聞くの忘れてた。
でもそれだけ余裕があるなら、確かに安心して品定めができる。
早速と魔道具を見ていく。
カメラに、火つけ棒に、冷蔵庫に、エアコンに⋯⋯。種類が多すぎて目移りする。今は必要ないはずなのに。
「種類多いし、すごい⋯。って、ダメダメ。
立ち尽くしているとカイさんが寄って来て、
そこへ行くと、大小色形様々な
が、選ぶのは当然小さくて持ち運びができるもの。
今後を考えれば、モンスターの素材を入れれる大きいサイズのものがいいのだが、それだと持ち運べない。入れたものの重量がなくなるとはいえ、
「やっぱり小さいのがいいよね」
素材は何かのモンスターの皮。上手く加工されているため表面はつやつやつるつるで、色はブラウン。
肩に掛けれてまるで鞄のように開け閉めが⋯⋯よく見たらこれ、
値段は3,500マニー。買えなくはない。
元々お金と、換金用に
肩にかけられるのであれば、その方が持ち運びも楽になる。
大きさは縦8cm横10cmくらい。まさしく妖精用もしくは精霊用の
さすが高級店。どの種族にも対応できるように取り揃えているのだろう。
人間にとったら小さすぎて作るの大変だと思う。なのにこんなに小さいものも丁寧に作られていて、さすが職人と感嘆した。
さすがにこれ以下は、妖精等の小さい種族の職人でないと難しいだろう。そんなの見た事ないけど。
「うん、これに決めた」
「お、いいのありましたか。気に入るものがあって良かったですね」
「ええ、これなら肩にもかけられるし飛ぶ時も邪魔にならなそうです」
斜めにかけたら羽を邪魔しちゃうので片側がけになるんだけど、
それに他の持ち方として、この肩がけベルトを首にかけた状態で鞄部分を前に持ってきて抱えれば、安定飛行が可能だ。
「じゃあこの袋からその魔道具の代金をお支払いしますけど、いいですか?」
「大丈夫です。お願いします」
カイさんに支払いをおまかせしつつ、念の為の監視。
うん、お支払い終わったけど何も問題なかったな。
店員さんに見送られながらお店を出ると、少しだけ進んでから立ち止まり、彼の方へと振り向く。
「カイさんのおかげで、目的のものを買うことが出来ました。ありがとうございました」
お礼を言ってから、
軽くて高い。大事に使わないとな。
この体が消えたら
「いえ、お礼は不要です。俺は案内しただけですから。⋯そうだ、早速そちらの
「そ、うですね。そうしましょう。今開けます」
彼は私の付き人ではない。鞄持ちならぬお金持ち(本当にお金を持つこと)ではないのだ。
目的を果たした今、ここで全てを終わらせて、せっかくの仕事終わりの時間を遊ぶなりなんなりで、しっかり休みに当ててもらわなければ。
民を守る仕事に就いていても、今は彼も休息の時間。この案内も仕事の延長だろう。
私がホワイトをブラックへと変えさせてはいけない。
感謝を述べたことで少し恥ずかしくなったのか、頬をかきながら提案してきたカイさんへ、留め具を回して開けた
それを見るとカイさんは袋を持ち、その中へとお金をドバドバ入れた。
袋ごと入れないのかって?いや入りませんよそんな大きさのもの。
「これで終わりですね」
「何から何まで感謝です」
「俺は妖精さんに、自分が生まれたこの町を案内できて良かったです。自慢の町なので。案内しきれなかった所もぜひ見ていってくださいね。素晴らしいんで」
「あ、はい⋯。後で行ってみますね」
「それでは俺はここで」
「本当にありがとうございました」
去っていく彼の背中を見つめる。地元愛がすごいカイさん。
最後の捲し立てるような押しが強すぎて、顔が引きつりましたよ。
さて、これで当初の目的を果たしに行ける。お金を手に入れたら終わりでは無いのだ。
次は魔法師ギルドに行って、鑑定の魔法を教えてもらわなければ。
スイーッと飛んで目的の場所へ直行。
そんなに時間をかけずに到着。紫の屋根が目に悪い建物へと入っていく。
入口に設置されているのはウエスタンドアなので、上の空いている部分を通って中へと入ります。
中はまあまあの大きさ。右手に売店、右斜めに探索者ギルドと共有された討伐依頼が貼ってあるボード、左に受付と正面に酒場のホール。
周りに見られていますね。特にプレイヤーからの視線がすごい。何をコソコソと話しているので?
目的の人物を見つけるためにとりあえず受付へ。
「魔法師ギルドへようこそ。ご要件はなんですか?」
「鑑定の魔法を覚えたいんですが、教えてくれる人は今日いますか?」
「それでしたら⋯⋯あ、あの方にお願いしてみてください。初心者指導歴が長い優しい方ですよ」
紹介された方の元へ行くと、そこにはプレイヤーに囲まれたTHE魔法使いという格好をしたおじいちゃん。
確かに優しそう。
とりあえずプレイヤー達が要件を終えて離れるのを待つ。
「あの、あの、わたしも鑑定魔法を教えてくださいっ」
「オレもお願いします」
「はいはい、皆さんに教えますよ。ほらほら、用件が終わった者は他の者と場所を代わってあげなさい」
この周りにいたプレイヤー達も同じ用件だったみたいだ。
おじいちゃん魔法使いが次の人に場所を変わるように言うと、囲っていた人が離れて次の人が囲う。
私もとその隙間から覗くと、おじいちゃんと目が合った。
「おや、珍しい。そこの妖精族の方もワシに用がおありですかな?」
本日2度目の、「おや、珍しい」いただきました。
おじいちゃんがその発言をしたことによって、私がいることにプレイヤー達も気づいたようだ。
「鑑定の魔法を教えてもらいたくて来ました」
「え、本物の精霊?」「いや、妖精だって言ってたろ。NPCか?」「かわいーっ」「ペット枠か?」「モンスターじゃないよね。倒したらまずい?素材何落とすんだろ」「やめとけ牢屋行きだぞ」
「イベントキャラかな」「こんな種族いるんだ。初めて見た」「仲良くなったら仲間にできるか?」
おじいちゃん魔法使いの質問に答えたのだが、その声はプレイヤー達の声によってかき消されてしまった。
聖徳太子ではないので全部は聞き取れませんでしたが、物騒なことを言ったヤツがいるのは分かりましたよ。
そこのあなたですね。
名前も物騒。PKでも専門でやってるんですか?怖いですね。
「こらこら、そんなに詰め寄ったらいけないだろう。ほれ離れなさい」
おじいちゃんは、私に群がっていたプレイヤー達を散らしてくれた。感謝感謝。
こうして囲まれて気づく自分の小ささ。人間って大きい。この体の何倍でしょうね。
「それで、ワシに何の用事でしたかな?」
やはりさっきの返答は聞こえていなかったみたい。もう一度要件を言う。
「あ、はい。鑑定の魔法を教えてもらいたくて来ました」
「そうですか。それならばちょうどいい。他の探索者も学びたいと言っていましてな、これから外へ行って勉強会を開こうと思っておったところです」
一緒に来るかい?そう聞かれて一も二もなく頷いた。
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〘探索者ギルド〙
採取・討伐・護衛等種類を問わず住民などからの依頼を受け付け、壁にあるたくさんのボードに張り出している。
受けたい依頼の紙をボードから剥がして、受付に持っていけば受けられるぞ。
依頼の受注条件なし。ただしリアルタイム進行の
このギルドは、依頼を受け付け紙に書きボードに張り出すだけの施設なので、ギルド加入は出来ない。
稀に人手が足らず、受付の仕事を募集していることはある。
〘魔道具店〙
魔力を使用して動かすことの出来る商品等を販売しているお店。
商品を一つ作るのにとても時間と手間がかかる上に、使用する素材も厳選して良質なものを使う。それに職人の腕がものをいうので、当然扱う商品は高級品。
とはいえそこまでこだわらないそこそこのお店も存在する。ただ商品の効果もそれなりになる。
〘アクセサリーアイテム︰
鞄にしたことでより高級品に見えるようになった。鞄職人の腕が光る逸品。
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