昨日見た場所と今日見た場所は同じなのに違う場所。

結論無理ですね。ステータス画面が出てきません。

NPCなら専用のそういう系統の何か持ってないんですかね。

仕方ないのでやはりここは、鑑定の魔法を覚えるまで待ちましょう。諦めきれていなかった私が言うのもあれですが。


ではこちらはどうでしょうかね。

口はないしステータスも反応しないから試していませんでしたが、試せるなら試しておこう。

そうそれは、プレイヤーなら誰でも知るもう1つのあれ。


「メニュー」


するとその声に反応して、ヴォンという音と共に見慣れたメニュー画面が目の前に展開された。


「お、おおっ。これはNPCになっても使えるんだっ」


これは紛うことなきメニュー画面。

第1生ではお世話になりました。これからもお世話になります。どうぞよろしく。

ただよく見れば項目は4つ。フレンド一覧・フレンド申請・メッセージ作成・メッセージボックスだけ。そこに掲示板や通報、ましてやログアウトの文字はない。


「ま、まあそうだよね」


これはまあ受け入れるしかない。

逆にログアウトしてどうするんだ。そのまま天に召されるのでは?

死んだのに自我も自意識も記憶も消されずに第2の生を貰えたんだ、感謝せねば。

はい一応フレンドリストをちらり。


「やっぱりゼロ⋯」


以前のフレンド達の名前はなく、ただ空白のみを表示している。

少し寂しい気持ちもある。一緒に冒険した日々、記憶はもう皆にはないだろうから。

とはいえ別に過去へと戻ったはずなのだから、もう一度会いに行ってフレンドになればいいだけの話なのだが、それはなんか違う。それは第1生の時の思い出だ。

これから先あの肉体になることは無いし、今はもう第2生。

せっかくなら新しい生では新しい生の妖精生人生を行きたい。もう一度同じことを繰り返すのではなく。


え?勝手に行動すると過去が変わる可能性があるって?いいや、そもそも私というイレギュラーがいるのだ。もはや同じ道を辿るとは考えずらい。

ならば私は私の我が道を行く。自由と私はともだーち。




さあ、という事でまずは自分のことを知らないと。

そのためには鑑定の魔法がいる。あと、水系統の魔法は覚えておきたい。もしくは魔術でも可。

ただこのまま鑑定の魔法を覚えに始まりの町に行ったとて、お金が無い現状無駄足になる。

なので行く道すがら、どこかで採取なり狩りなりをしてアイテムをゲットして行かなければならない。その集めたアイテムを売って、魔法を覚える代金にするのだ。


「ただなぁ、この両手で持てるものって少ないよね」


この妖精の体はとにかく小さい。恐らく木の実とか2つ3つで限界だろう。

それだけを持っていったとてそれほどのお金は貰えない。

何か高価そうでできるだけ軽いものがいい。

周りには何ていう名前か分からない草と、同族の成長した木の方々と、穴だらけの同族もとい赤と黒と茶の混じった木に成長した同族の方のみ。

可哀想なくらい穴だらけだったあの方は、今や立派な不気味な木へと変貌。赤黒い花も咲いてしまっている。


ああ言い忘れていましたが、あの不気味な同族の方、だったみたいです。

この方が関わってくるのは、かの有名な可哀想なNPCセルンの絆イベントの時。イベント最後にこの方と戦うらしい。

会ったことも倒したこともなかったので、この状態の見た目だけしか知らなかった。しかもネットで流れていた写真で見ただけ。

まさか穴だらけの同族の方がイベントモンスターに成長するとは思いもしなかった。

名前が何だったか覚えてないけど、トレント系だったはず。

今もウネウネと枝を動かす厳つい顔のついたその木。どうしてそんな姿になったのでしょうね。

妖精ではなくモンスターへの道を歩むあなた。その下にセルンの骨が埋まっていることは知っています。成長の過程で飲み込まれていくのを見てましたから。

きっとそれを取り返すために戦うのかな?

ちなみにこの方は、私を含む妖精の森に住むもの達へ攻撃をしてきたりはしない。なぜかは知らないけど。

もしかしたら、仲間意識があるのかもしれないですね。


それで言うと、あの雀もどき妖焔雀ジャービルも攻撃してきたりしない。妖精になった私を見ても襲いかかって来る素振りすらなし。

何となく、我が縄張りにいるものは等しく守護する対象、みたいな感じで守ってくれている気配を感じます。

何せここの主ですからね。人間で言うところの王様に近いのかな?雀もどきに攻撃を仕掛けなきゃあっちも何もしてこない関係です。

そもそもレイドモンスターになるくらいの強さですから、ここに住んでいるもの達は誰も逆らわないけど。



と、話が逸れてしまった。結局何を売るのが一番稼げるのか。軽くて高いもの。

ゲームやってた頃は、そんなに気にしたこと無かったからなぁ。とにかく狩って売ればどんどん貯まっていったし。

そう悩みながら、ふと上を見上げる。


「本体の葉っぱって売れるんだろうか」


それを見て何となく呟いた。

少なくとも妖精が生まれた?宿っている?木だし、その葉っぱとなればそこそこのお金になるのでは?

んー、なんか良さげな気がしてきた。


「本体の活動に支障をきたさないように、3枚だけ持っていきますか。あと足りなければ町付近で採取。よしこれで行こう」


そう決めて本体の上まで飛んでいく。

願わくば痛くありませんように。葉っぱを持って目を瞑りながら1枚枝から取る。


「い、たくない」


痛みは感じなかった。ただ視覚的に、自分の体からそれを取るという行為がちょっとんーってなった。ゾワっとする。

人間で言う健康な髪を抜くに近いのかな。

なんか嫌だなと思ったので、自然に抜けて落ちた自分の葉っぱを持っていくことにする。

少し茶色っぽいけど、ほとんど緑だ。大丈夫だと信じましょう。


「さ、売る用のアイテムも持ったし、始まりの町へ出発じゃ!」


いざ参ろう始まりの町へ。羽を羽ばたかせて上昇。

そこそこのスピードで空を飛ぶ。触れる空気は冷たいものの、飛ぶこと自体が楽しくてあまり気にならない。

こんな気持ちを味わうことは、人間の頃であったらまず体験できないだろう。

時折回転しながら空の旅を楽しむ。自然と笑みがこぼれていた。







どれくらいの時間飛んだのか分からないが、その町を遠目に捉える所まで来ていた。

少しスピードを落として降下していく。

そして門が近くなった時、はたとその存在を思い出した。


「あ、入町金にゅうちょうきんどうしよう⋯」


入るためにはギルドカードとかの身分証かお金が必要だったはず。

ただどちらも持っていない時はどうしたら?

街から町へと移動しながら商品を売る行商人でも捕まえて売るか?

少し上に飛んで辺りを見回すがそれらしき魔道馬車はない。

いっそ門兵に聞いてみますか。その場で買い取りしてもらって、そこから差し引いてもらえるかどうか。


「しかしあれだなぁ⋯。あんなに町大きかったっけか」


近づいて行く度に大きくなっていく町。それ自体は別におかしくはない。普通の事。

ただそもそも話、マラトスという町ははずである。記憶にある町と違う。

何度も来たことがあるので間違えるはずはない。


「もしやここは別の街?」


ふーむ、そこも門兵さんに聞いてみようか。

違う街だとしても、それはそれでオーケー。

生活魔法である鑑定の魔法を覚えるのに、どの町でなんて関係ないですからね。

再度降下し、町に入るために並ぶ人の列の最後尾に行く。


「結構人いるなぁ」


正式リリースされたことが原因だろうか。

このゲーム(Mystery Of Life3)は、2日前にリリースされているはずなので。

そう、β版配信からほぼ2ヶ月後に正式リリースだった、はず。

そうだ、私がこのゲームを知って始めたのは、リリースされて3ヶ月後くらい経ってからだったな。そのくらいしたら第1生の時の私が見れるんだろうか。

いや会うつもりはないけども。


「おや、どうも。妖精族とは珍しい。観光ですか?」


思い出にふけっていると、前に並ぶ男性に声をかけられた。隣には同じ年齢くらいの女性。夫婦かな?

頭上にプレイヤーネームがないので一般人NPCか。


「おはようございます。ちょっとこの町のギルドに用がありまして」


「そうですか。あまり妖精族の方は見かけないもので、つい気になってしまって。突然声をかけて申し訳ない」


「主人がすみませんねぇ」


「いえいえ。⋯あ、そうだ。お聞きしたいことがあるのですが、この町の名前ってマラトスで合っていますか?」


ついでとばかりに気になっていたことを質問。

どうせならこのままこの人に聞いてしまった方が手間が省ける。


「ええ、マラトスで合ってますよ。まあ町というには、ちと大きすぎる気もしますがなぁ」


その言葉を聞いて少し固まる。

やはりここが始まりの町、マラトスだった。

大きさに違和感があるのは、単に記憶違いなだけ?それとも、これから小さくなる何かが起きる?

もしそうだとしたら、これから先3ヶ月以内に起きるんだろうけども⋯そんなの見たことも聞いたこともない。あったらネットで話題が出て盛り上がっていたはずだ。

分からなすぎる⋯。

うん、謎だけど考えても分からないことは考えない。


「あ、あともう1つ。門の所で素材の買い取りとかしてたりするか分かりますか?」


「ん?お金が足りないんで?まあ、確かやっていたような気がしましたが、一応門兵さんに聞いた方がいいと思いますよ」


「分かりました。ありがとうございます。聞けて良かったです」


「いや、こちらこそ貴女と会話ができて良かった。この歳になって妖精族と話す機会があろうとは思わなんだ」


「あなた、私たちの番ですよ。妖精さん、お話ありがとうねぇ。また会ったら気軽に声かけてくれていいからね」


「ワシはハラルド、こっちは妻のハンナだ。また話が出来ることを楽しみにしているよ。では先に失礼」


「はい、また」


ハラルドさんとハンナさんはそう言って、門兵に身分証を見せて町へ入っていった。

親切な人だったな。またいずれどこかで会うだろう。たぶん。


「次のか⋯妖精っ!?あ、いえ失礼しました。次の方どうぞ」


何か声が上擦ってるけど大丈夫ですか?私は化け物じゃありませんよ。


「み、身分証か、なければ入町金を」


「あ、どちらもないので⋯これ買取ってもらうことってできますか⋯?」


ふよふよと近づいて、抱きしめていた本体の葉っぱを見せる。

傍から見たらただの葉っぱよな。門兵さんも目を丸くしている。


「分かりました。おーいっ、鑑定出来るやつ今日いるーっ?」


「俺できるよ。妖精さんこちらへどうぞ。そちらを鑑定しますんで」


門兵さんが仲間の兵士に声をかけると、すぐに鑑定魔法を使える人が声を上げた。隠れてちらちらこちらを見てた兵士だ。

そんなに気になります?ただの妖精ですよ。


「あ、はい」


名残惜しそうに見つめる門兵さんに一礼して、鑑定してくれる別の門兵さんについて行く。

と言ってもすぐ隣、門わきの小屋の中だ。

簡素な作りで、中にあるものも至ってシンプル。飾り気のない机と椅子が数脚のみ。扉もないんですよね。

中の様子が見れるようにかな。防犯的な。


「ではそちらの椅子に⋯⋯いえ、こちらのトレーにそちらを乗せてください」


ええ、座ったら机の下の景色しか見えなくなりますからね。あなたの足と会話することになります。

気を使わせて悪いですねぇ。

ふよふよと飛んでトレーの上へ葉っぱを乗せる。


「よろしくお願いします」


「はい。では始めますね」


そう言って門兵さんは1枚葉っぱを持って見つめる。見つめ続けてしばらくしてから葉っぱをトレーに置き、また違う葉っぱを見つめる。

それをもう一度繰り返してからこちらを向いた。


「3枚ともこちらで買い取りという事でよろしいですか?」


「はい。それで、入町金足りますか?」


「ええ、これは貴重な素材ですからね。珍しいポーションとかが作れます。ああ、お金今持ってきますんで、少しお待ちください」


門兵さんはそのまま外に出ると、それ程時間を置かずに袋を2つ持って戻って来た。

それお金ですか?そんなにいい値段になりました?

でもそれがお金だとしたら、私持てませんね。


「こちら買い取りの代金になります。あ、入町金分は引いてありますんで」


当たっていた。お金でしたねそれ。どうしましょうか⋯。あ、そういえばあれは妖精用のあるのか?


「すみません。私それ重くて持てないので、あの⋯妖精族用の魔法の袋マジックサックとかってあったりしませんか⋯?もしくは売ってるお店とか知りませんか⋯?」


「え、ああ、そうですよね。言われてみれば⋯気が付かず申し訳ない。妖精族用のものがあるかどうかは分からないですけど、売ってる店なら知っていますよ」


魔法の袋マジックサックなら中に入れれば重さも関係ないし、持ち運びが楽でいいと思ったのだ。

妖精族用のものがあるかどうかは知らなかったけど、この門兵さんは売っている場所をご存知の様子。

マラトスのお店はあまり立寄ったことがなかったから、覚えてないんだよなぁ。

正直知ってくれていてありがたい。


「これから案内しますよ。俺でよければ。もうすぐ交代の時間なんで」


おや、思いかけず私のお金を持ち運んでくれる奇特な方をゲット。

ただ兵士さんだからと言って油断はしない。もちろん安心なことを前提に、一応、そう一応盗まれることがないようきちんと監視しながら、お店を案内してもらおう。


「それはありがたいです。お店までの案内、よろしくお願いします」


久しぶりのマラトス。されど知らぬマラトス。何か変わっているかな。









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入町金にゅうちょうきん入街金にゅうがいきんシステム〙

町や街に入るために必要なお金。

王民カード(○○王国に住む民だと示すもの)や、神民カード、ギルドカード等の身分証があるとお金を払わずに入ることが出来る。

ただし、王民カード等の国籍を示す身分証は、その国内でしか効力を発揮しない。他国ではお金を払って入るべし。

集めたお金は公共事業等に使われている。

ちなみに村には徴収システムがない。出入りし放題なので、盗賊歓喜。


〘猫〙

気にいった人を主とし、寄り添って一生を過ごす種族。

現実と違いペットショップなんてものはないため、家族になるには野生の猫に自分を気にいってもらうしか方法がない。

この野生で暮らしていける猫とはつまり、猫に非常に似たモンスターのことである。

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