第22話 五輪強行


 東京五輪は加部政権が一年延期を決めたが流行は収まらず、世論は中止を支持する声が圧倒的で、八割の国民が中止を求めていたが強行に至った。

 五輪をやれば国民は五輪に熱狂し、内閣支持率も上がり、次の総裁選で自身が再選され衆院選でも勝つだろうとの見立てだった。

 確かに五輪に国民は熱狂したが、巣火内閣の支持率は下がる一方だった。

 コロナ感染者もかつてないほど増え、流行第五波に入っていた。

 感染者が増えると専門家会議の数度に及ぶ提言の前に、抵抗の末渋々緊急事態宣言を出すが、飲食店に自粛を求めるばかりで補償はしない。さらに、欧米諸国のような強制的な都市封鎖をできないのは憲法に規定がないせいだ、だから憲法に緊急事態条項を入れる必要がある、と人民党悲願の、主権を国民から国家・政府へと移すための憲法改正へと強引に結び付けようとする。

 巣火政権の支持率は落ちる一方だが、かと言って野党の支持率も上向かない。民衆党は護憲民衆党となってからも政権を担うのには失格、とのレッテルを国民から貼られたままで、国民からは愛想を尽かされているようだった。

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