くだけぬいし
次は負けない___
緩やかに川が流れる河川敷。
深く息をし、ゆっくり目をあける。
足元に転がる石を一つ拾いあげ、
向こう岸に積み上げられた石を見つめた。
しなやかな投球フォームから繰り出された石は、
回転し風をきった。
そして、川の水面を拒絶するかのごとく、しぶきをあげ跳ねる。
対岸にどっしりと構える石積みは、鋭く飛んでくる一石に、
弾き飛ばし壊された。
ニヤリと浮かべた笑みは少しずつ笑いに変わる。
ジャシ、ジャシ。
「おそいなぁ。」
近づく足音に目も向けず、話しかける。
…。
黙りこける いとこに言葉を浴びせ続ける。
「俺の新しい神業。水切り!!
これなら負けない。だから勝負だ!!」
俺はそう言い放つと一息で対岸に飛び移り、
石積みを5つ作り上げる。
「水切りをして、お互いの対岸にある
この"ストーンタワー"を全部倒した方が勝ちだ。」
するとあいつも無言でストーンタワーを作り始めた。
「へへっ…いままでの俺の気持ち、味あわせてやるぜ!!」
風が流れる中、戦いの火蓋が落とされた。
「いくぜぇぇええ!!」
投げた石はまっすぐ水を削り、
いとこのストーンタワーを破壊した。
崩れゆくストーンタワーをながめるいとこ。すると、
2つ目の投石がすでにストーンタワーを捉えた。
咄嗟に向かってくる石に石をぶつけた。
だが、ぶつかった衝撃で砕けた石が2つ目と3つ目のストーンタワーを破壊した。
「みたか!!敢えて砕けやすい石を選んだんだよ!!お前がそうしてくると思ったからなぁ!!」
あいつは口をつぐんだまま、そっと石を拾い上げる。
容赦なくおれは攻撃の手を止めない。
「くらえ!おまえに勝つための奥義!!」
地に広がる石をわしづかんだ。
「
叫びをあげるとともに、手の中の石々を投げ弾く。
3粒の石が川の上で広がり、
いとこ共々ストーンタワーめがけて飛んでいく。
「よけねぇとぶつかっちまうぜ!!」
だがあいつは微動だにしないはおろか、川岸へと近づく。
「
胸元あたりでおいた腕を空気を優しく撫でるように広げる。
ほろり、ほろりと落ちる粒。
水面に触れると、廻りはじめ、波を立てた。
すると三天投石は軌道を外れ、いとこの頬をかすめ、ストーンタワーを避けた。
「なんだと?!」
驚くのもつかの間。
水面上の旋廻流にいとこは数粒の石をこぼす。
そして、石が旋廻流の波紋に触れた途端。鋭い閃光とともに弾け飛ぶ。
そして俺のストーンタワーを4つ破壊した。
目の前に散る石の粒。俺はゴツゴツの砂利に膝をおとした。
でたらめだ。
いつもそうだ。
あのでたらめに散々負けてきた。
負けることが当たり前だった。
だけど、勝てないことを前提にしたことはなかった。
いつも勝利は敗北の現実よりも大きく輝かしく俺の目の前にあった。
血が流れるほど、絶望の淵に立った時ほど立ち上がってきた。
勝つまで、俺は負けないんだ。
うおおおおおおおおおおお!!
俺の手の中で石が廻り出す。
そしてけたたましく光を放ち。
手から離れ、水面を突き進むその姿はまるで__
ユニコーン
水を掻き分け、空気とこすれあう。
あいつの足元で廻り続ける石を破壊し、ストーンタワーを破壊した。
「!?」
決して破られることのな旋廻流が目の前で散り散りになる。
だがいとこは攻撃の姿勢を崩さない。残っている旋廻流の廻転が激しくなる。
「
両手で大きめの石を頭の上まで持ち上げ、川底へと叩きつけた。
地が揺れ、弾ける飛沫は草木を切る。
波と波がぶつかり合い、大きな衝撃波に俺は怯む。
「くそっ!!なんだこれ!!」
霞む目をそらすまいと必死に顔を上げる。
目の前で肥大し続ける川の波はまさに、
龍
濁流は襲いかかる。
おおきな水柱がたった対岸を眺めるいとこ。
だが荒波に小さな光が見えた。
そして一粒の希望が向かってくる。
旋廻流の結界もなくなっている。
いとこは投石を放つ。
目の前で弾ける石の衝撃に吹き飛ばされた。
水が引き、俺のストーンタワーは影すらなかった。__また。また、勝てなかった。やっぱりあいつはでたらめだ。
気持ちのいいはずのそよ風も、今の俺には冷たくて痛い。
くそおおおおおおおお!!!
咽び泣く俺に歩み寄るあいつ。
「私は勝てなかった」
意味がわからない。最後の一石が破壊された時点であいつの勝ちは決まっていたはず。
あいつは指をさす。その先には、崩れたストーンタワー。
吹き飛ばされたときに崩れてしまったのだ。
よしゃああああああああああ!!
俺は立ち上がり雄叫びをあげた。
「だがお前の勝ちでもない」
冷たい言葉を投げかけさっていく。
ムカつく。だけど、少しあいつとの溝が埋まりつつある。
いつか勝つ。その時まで。
この意志のまま。
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