俺はいとこのあいつに勝てない
@inunoroyniki
われないたまご
いとこに勝てるところなんて、俺にはない。
あいつは女のくせに強い。頭がいい。友達もいっぱいいて、年賀状もいっぱいもらってる。
そんなあいつに勝てるところ。ただ一つある。たった一つ。
「ゆで卵の殻剥き王」
それは俺に与えられたった一つの称号だ。
これならあいつに勝てる。ぶちのめしてやる。
にどと俺にむかって「おまえ」なんて言えないようにしてやる。
そう言って俺はゆで卵の殻をひっぺがした。
昨晩この戦いのために茹でためた、鍋いっぱいの白い宝玉。
穴のあいた滑り台と遊び方のわからない遊具だけが残された公園にいとこを呼び出した。
鼻くそを2粒ほどほじり終えたころ、いとこがあらわれた。
みたくもねぇアホヅラをぐしゃぐしゃにしてやるぜ。
鍋からゆで卵を一つ取り出し、いとこに投げ渡す。
雄叫びをあげ自分を鼓舞する
糸のような目で蔑まれても今は苦しくない。
戦いの火蓋は今落とされる。
俺はおもむろに卵を額にぶつけヒビを入れた。
卵の丸みが膨らんでる側に指を入れ殻の内側の薄皮ごとひっぺがす。
この世の中の万事には「向き」がある。
風の流れしかり、川の流れしかり、必ず終着点に落ち着き、綺麗に収まっている。
卵の殻にも向きがある。作られる過程にも生まれるという終着点へ向かうからだ。
その流れにそえば、全てが綺麗にスムーズに進むのだ!!
これを奴は知らない。どうせのうのうと生きてやがらぁ!!
「勝ったゼェ!!」
そう叫ぶ僕の目の前には、すでに殻をむき終えているいとこがいた、しかも片手で。三つも。
まだだ。決着は5つだ。先に5つ剥いた方の勝ちだ。
俺は全力で剥いた。
空気を揺らすアスファルトに伏した日も、
涙が氷柱に変わる夜も。
決して卵の殻を剥くことをやめなかった。
俺が3つ目に手を伸ばした頃にはもう、
いとこは四つ目をむき終えていた。
負けるか。
俺が殻を剥くことは、
生きるってことだ。
殻を剥くことをやめたら、
死ぬことと一緒だぁ!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
べりりりりりり!!
4っ!!
だが見ろよあれ。
俺が一生懸命剥いてるってのによ。
あいつは完成させてヤガラァ____。
トランプタワー。
その鉄塔にカードを重ねる片手には白い宝玉。
ニヤリと笑い人差し指と親指にちょいと力を入れた。
パリッ。ペリリリン。
まるで、枯れ落ちる桜のように、殻が剥けた。
くそおおおおおおおおおおおおお!!!
卵を握りしめなんども地面を叩く。
破れてぐちゃぐちゃになったゆで卵に紛れ突っ伏した。
あいつは慈悲のない歩みで俺に近づく。
「おい、おまえ。」
透き通った声に意地を張っていたはずの俺は顔をむけていた。
その声には卑しい感情なんて一つも感じれない。
向けた目の先にずる剥けの卵。
一口頬張った断面には二つの黄色い魂があった。
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