第18話 宇美のその後

先日、宇美に告白されてから初めて図書館に来た。流石に少し行きづらいのは否定出来ないが俺だって読みたい本と返却しないといけない本があるのだから仕方ない。

残念ながらと言うべきか、本日の図書室の受付は宇美であった。返却する本を渡し彼女へ話しかけた。放課後の図書室であり、来ている人も少ないので少しくらいなら小声で話しても聞こえないだろう。


「やぁあれから元気してたかい?」

「……こういうのって気まずいから話しかけたりしないもんじゃないですか?」

「そうしようかとも思ったけど、変に気を使うと後々関係の修復難しくなりそうだからな」

「……私とまた一緒に話してくれるんですか?」


宇美は不安そうな瞳を目に宿していた。


「ん?もちろん…君が嫌でなければだけどね…。そういえば髪切ったんだね…少しスッキリしたね!」


宇美の髪は背中にも届く程の長さであったが今ではベリーショートである。俺より髪の毛が短かった。


「……フォローになってないですよ…。徹君と出口君と話して、少し心境の変化がありまして、どうせなら見た目から変えてみようかと思いまして」

「へぇ……」

「……出口君とあれからどうなったか気にならないんですか?」

「気にならないと言ったら嘘になるけど、まぁ話したくなったら話してくれればいいよ」


嘘である、俺としては彼らの恋に進展したのかが凄く気になっているが、口や態度には出さない。少しダサいような気がしたからだ。


「私としてもケジメのつもりで髪を切りました。それを徹君に聞いて欲しいです……それと、ここでは話にくいので奥の部屋に来てくれませんか?」

「あぁ…」

俺と宇美は先日告白された時と同じ部屋である図書室の受付の奥の部屋に入った。

中には出口がいた……予想外の人物がいたため少し驚いた。


「出口君は図書委員として加わることになったので部外者ではないんですよ…」

「そうか……」

「何から話せばいいだろうか……宇美さんから色々聞いたよ。宇美さんがお前のことを好きだったことや、門脇先輩以外の男達とも肉体関係にあったってこと……」

出口は流石に直ぐに受け止められないのだろう、かなり辛そうな表情をしていた。

「……」

「……それでも俺は宇美さんのことが好きだ、この気持ちに偽りはない。だからお前が出て行ったあと、告白したよ……まぁ振られちまったけどな」

「え、振られたのかい?なら、なんで図書委員なんか……」

「振られたけど友達からって言われてさ…どうせアピールするなら一緒にいる時間が長くなる図書委員になった方がいいだろ?だから入ることにしたんだ…」


出口は宇美が多くの男と関係を持っていた過去があるにも関わらず、好きであり続けたのだ。これは正しく性愛の一つ上のステージなのだろう……。俺が求めていた、恋という物の証明の一つであることに違いないのだ。


「素晴らしいと思うよ、出口君……」

「え、なんでお前泣いているの?キモ……」

「いやぁ素晴らしい物を見せて貰ったからね……感動の涙と言うやつさ」

「そんな頭のイカれた奴だったのか……」


(これで出口君から宇美さんへの恋というベクトルはあるのだが、宇美さんはどうなのだろうか?)


「出口君から告白を受けても振るとはね……以前の君なら受けていただろうね」

俺はそう言って宇美に話しかけた。


「そうですね……出口君が私のことを想ってくれていることは分かりましたが、私は彼のことを何も知りません。ですが、これから少しずつ彼の事を知っていこうと思うんです……まだまだ高校生活は長いですから」

「なるほど…髪を切ったのはやはり過去との決別かな?」

「……はい。私は自身の孤独に耐えきれなくて、竹内君達と沢山ヤってきました…。ですが今は私の内面を見てくれる出口君がいます……今後は私が彼に対しての”好き”を探す番みたいです」


「どうやら過去を乗り越えたみたいだな……」


様々な障害があるだろうが、辛い過去を乗り越えた二人なら問題ないのだろうと、俺はなんとなくだが確信していた。二人は過去にあった辛いことばかりではなく、これからの”未来”を見ているのだから。


後の話ではあるが、出口と宇美は数カ月の時を経て付き合うことになった。学校でも有名なラブラブカップルと言われており、図書室には男女問わず恋愛相談に来る人が後を絶たないとか……。
















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