第17話 告白された後の二人

あれから図書室を後にした俺は少し宇美と出口の事が気がかりではあったが、そのまま普段通りに練習をした。普段から時々サボるが概ね真面目に参加しているので、遅れてやってきたからか、部員達から小言を言われた。

「おいおい、部活始まっても全然来ないから今日はサボりかと思ったぜ」

俺の一つ上の先輩がそう言った。

全員というわけではないが、近くにいる部員達が聞き耳を立てていた。


「えぇ、少し諸事情がありましてね…」


俺は少し疲れた表情を隠さないで話すと先輩も悟ったのかそれ以上の追求はしなかった。時々教員に手伝いを頼まれたりすることを部員達は知っているので、今回も教師の手伝いをしていたと勝手に勘違いしてくれた。


(さて残り時間も少ないけど今日も頑張りますかね…)


「そういや門脇先輩って受験失敗したって聞いたか?」

準備運動をしていた俺に先輩が聞いてきたので、身体を動かしながらも答えた。

「はい、どうやら医学部全部落ちてしまったようですね」

「あぁ…あの人も後輩の女と遊んでばかりいたから失敗したんだろうな。俺もそうならねーようにしないとな」

「頑張ってください」


後輩の女とは宇美のことだろう。門脇の恋人ということで陸上部の全員に認知されていた。


「愛想ないな…いいよな、お前は学年トップだから内部進学でも医学部に行けるだろうし外部受験でもお前の成績なら余裕だろうしよ」

「日頃の努力の賜物ですよ」

「うぅ…俺が努力していないみいたな言い方しやがって……」

「……大声でお喋りしているからコーチに見られてますね…」

俺は背中に刺さる視線を感じたので少し後ろを向くとコーチが睨んでいたので、そっと先輩に教えた。

「…マジだ…俺そろそろ戻るわ。お前も早く参加しろよ」

「了解です」


****


「———徹〜飯食おうぜ〜」

「良いね、何処で食べる?」

三浦から誘われない限り、俺は一人教室で食事をすることが多い。時々校内のおすすめスポットで食事をすることもあるが。


「そういえば知っているか?お前の陸上部にいた、門脇先輩だっけ?その人の元彼女が髪をバッサリ切ったんだってよ」


何てケラケラ笑いつつ弁当を持って俺のの席に椅子を持っていきた。

(出口君に任せた後の話を一切聞いていないから分からないが、何か宇美さんに心境の変化でもあったのだろう)


「なるほど、春にもなったし髪でも切りたくなったんじゃない」

「は?あれそんなレベルじゃないと思うんだけどよ…ロングの髪の女がベリーショートだぞ?マジで驚きだよ」

「あ…俺もそろそろ髪切りたいな…」

思い出したように自分の髪を触ると、それなりに伸びていた。別に見た目を気にするほどではないが、陸上をしていると時々目に髪が入るので伸ばしすぎるのが嫌なのだ。


「はぁ…相変わらずマイペースなやつだな…。こんなの絶対失恋とかそういうのがあったからだろうに……お前はそういう話が好きだから食いつくと思ったんだけどな」


(おや、変なところで鋭いな三浦君は…。俺は宇美が何故切ったかの凡その予想も付いているので、気にならないというのが理由だが三浦君が知るはずもないか…)


「そういう事もあるさ」

「…………」

「何か言ったらどうだい?」

「いや、何か引っ掛る気がしただけだ…」


(まずいな…話題を変えよう)


「そういえば今日は姫宮さん学校に来ていないね」


「露骨に話題を変えるなよ…そうだな、というか今朝担任が欠席理由言ってだろう?モデルの仕事で都内外に行ってるんだってよ」


「へぇ忙しくしてるね!」

「あぁ…ネットでの人気が先行しているが、そろそろテレビの方にも出るんじゃないかって話だぜ」

「テレビか…」

「そういえばお前テレビ全く見ないもんな。もし今度姫宮が出てきてたら教えてやるよ」

「ありがとう」

三浦は本当に女に興味ないやつとボヤいていたが、俺にだって興味はある。ちょっと、他の人より感性が違うだけなのだ。姫宮だって非常に綺麗な顔をしているし魅力的だと思っている。ただ意思が強い女の人に興味がそそられるだけなのだ。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る