第11話 図書室での密会(H)

例の"あの日"は三カ月前以上前のことであり、新年を迎えてほどなくしたころであった。学生達は冬休み期間であり、部活動をする学生以外学校に出入りすることはない時期であった。俺も陸上部員のため冬休みでも練習があるが、その日は午前のみの練習であった。

午前で練習が終われば普通なら真っすぐ帰宅する者もいれば、友人同士で遊びに行く物もいた。そんな中、俺は図書室へと向かった。冬休み期間は図書室が閉鎖されているということを冬休み前に宇美から聞いていが、鍵の隠し場所を宇美から教えて貰っていた。図書委員が代々教師に内緒で合鍵を隠している。この鍵は、数年前の図書委員が作成し現在に至るまで代々受け継いでいると宇美は語っていた。


俺は図書室に着いて扉を開けようとしたが、案の定鍵は閉まっていた。予想通りであるため特に驚きもせず、宇美から聞いていた鍵の隠し場所であるアンケート投票箱の中から出し、鍵を開けた。このアンケート投票箱は図書室で購入してほしい本がないかというアンケートで、俺も何度か投票し購入して貰ったことがあった。このような場所に隠すのは大胆不敵だなと宇美から聞いた時は思ったが、今は感謝しなければ…。俺は鍵をアンケート箱の中に戻してから、図書室の中に入り鍵を閉めた。

万が一誰かが図書室に入ろうとした時に言い訳が出来ないから、念のためである。


冬休みの図書室は暖房が切れているためか少し肌寒かった。そして図書室は元々静かではあるが、学校にいる学生が少ないためか普段よりも静かであるように思った。

改めて俺は”愛という物を知りたい”ので、図書室ではよく恋愛物の小説を読んでいた。主に女性が好き好んで読みそうなものである。だが女側の視点での心理描写なども書かれていることが多いため、参考になる事が多いのだ。


本を読むことが好きな俺ではあるが流石にシリーズ物の恋愛小説を購入していては、小遣いが足りないのだ。そして冬休み前に借りていた本の続編がどうしても読みたくて、本日図書室にこっそりと入っているというわけだ。


進学校であるためか我が校の図書室は、それなりの規模であり蔵書数も多いので本を探す時に時間がかかる事も多々ある。今回の小説は宇美が渡してくれたものであるため、俺はどこに本があるのかを知らないため一から探さなければならないのだ。彼女は大人しい性格であり熱心な読書家であるためか、俺に毎回のように本の感想を求めてくることがあるが、彼女との会話は不思議と楽しいものであった。



「えーと確かこの辺に……これだな」


十分程探しているとお目当ての本を見つけた。俺は続きを読もうと椅子と机がある場所に向かおうとすると、図書室の外から声が聞こえた。その声は次第に大きくなり図書室に向かってきていた。誰かが来るとは思っていなかったのでとても焦った。

だが学生だとしても図書室の鍵は閉めているため、開けることが出来るのは教員と図書委員くらいだろう。

しかし俺の思惑は外れ図書室の鍵がガチャガチャと開けられる音がした。


(誰だ……声は男であり若かったようだから、男の図書委員か?)


「お、本当に開けれるじゃねーか!こんな合鍵を持っているなんてなぁ~」


図書室の扉を開けられて、声がハッキリ聞こえたため誰なのかが分かった。

一人は俺と同じ一年の”竹内”だ。


「……少し静かにして下さい。誰かに図書室に入るところ見られると後が面倒ですから…」

もう一人も同じ一年の"宇美"であった。


「いやぁ悪い悪い。少し期待しているからか色々と高ぶっていてよ」

「……流石に今回限りですからね。万が一誰かに見られたら私たち最低でも停学になってしまいますから」

「分かっているって!」

「はぁ……それより図書室少し寒いですね、奥の部屋にしませんか?」

「あぁ~……嫌だ。だってよぉ、普段学生が使っているところの方が興奮するだろう?」

俺の視点からは見えないが竹内がニヤニヤとしながら笑っているのが分かった。


(ここまでの会話で二人が”ナニ”をしようとしているかは概ね理解出来たが、行為が終わるまで図書室で待機かな…)








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