第33話

妾の娘って時点ですでに詰んでるのにさ。世間体もなにもあったもんじゃないのにねえ。



 

「来週の週末、水都家の食事会があります。」



運転する今朝丸さんから、一枚のカードを渡された。見れば『聖王ホテル』と書かれた名刺サイズのカードだ。



「18時までにお越しください。」


「ママは?」


「美里さんは所謂第二夫人。呼ぶわけ無いでしょう。」


「なら私も行かなーい。」


「光姫さんは正式な社長の娘です。来なければ生活費が打ち切られることになります。」


「最低じゃん。」


「なんとでも。」


         

ママは水都と名乗っていても、所詮は他人。水都の誰とも血は繋がっていない。でも私は違う。不運にもパパと、そしてお婆ちゃんとも血が繋がっているのだ。



医療機器メーカー『フォープラント』の社員として働いていたママが、たまたまパパと社内で出会い、うっかり私を作ってしまったらしい。



妾にしかなれないのに、なぜかママはパパと離婚はしない。私に苦労をかけたくないんだろうね。



壱正いっせいさんと仁太じんたさんだって光姫さんに会いたがっています。」


「……まあ。お兄らには私も会いたいけど。」

  

「いいですか。くれぐれも時間厳守、決してドレスコードを間違えませんよう。」


「んもう。分かってるってえ。」


「お婆様の誕生日に上下スウェットで来た馬鹿野郎はどこのどなたでしたっけ?」


「はあい、光姫ちゃんでーす。」



棒読みで返事をして、鞄からリップを取り出しぬりぬりする。ほんのりストロベリーミルクの香り付きで、色もほんのりストロベリーミルク色のやつ。



靴を脱いで、後部座席で体操座りをすれば、今朝丸さんに「パンツ見えてます。」とツッコまれた。

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