Re:Start~君がいるから死ねない

@Ihaveaweakbody

第1話 幸せな朝

カーテンの隙間から差し込む柔らかな朝日が、部屋の隅を静かに照らしていた。

ベッドの上には、妻の沙希と1歳になったばかりの凛が寄り添うように眠っている。

沙希は白いTシャツを着たまま無防備な寝顔をさらし、凛は丸いほっぺたを沙希の腕に埋めて小さく寝息を立てていた。


「パパぁ……」


凛が寝言でそう呟くと、優斗はふっと微笑む。

自分の小さな娘が夢の中で父を呼ぶ。それだけで胸がいっぱいになった。


「どんな夢、見てんだよ……」


彼はそっと娘の髪を撫でた。

妻と娘がそばにいる。

それだけで幸せだった。


眠そうに目をこすりながら沙希が顔を上げる。

「ん……もう出るの?」


「ああ、ちょっと走ってくる」


彼はバイクジャケットを羽織りながら返事をする。

今日は久しぶりの休日だった。

午前中は一人でバイクを走らせて気分転換し、午後は家族で買い物に出かけるつもりだった。


「凛とちゃんと留守番してろよ?」

「うん……行ってらっしゃい」


沙希はまだ眠そうな瞳で微笑んだ。

凛はまどろみながらも、目を細めて小さな手を振った。


「パパ、ばいばーい!」


優斗は「行ってきます」と手を振り返し、玄関を出た。

あの日、当たり前だった朝の光景。

それが、二度と戻らない日常だとは知らずに――。

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