あとの祭り

プロローグ~盗~

第1話

右には闇。

 左には光。

 目の前には扉。




 右手には住宅街が広がるが、丑三つ時を過ぎているので明かりはほとんどない。



 左手には商店街の大通りがあり、ある程度のあかりで地面や建物を照らし出している。



 そして目の前には店の裏手の扉。





 深夜の商店街には、二人の男がいた。



 一人は扉の前に。


 一人は商店街の角に。




 扉の前にいるのは髭を生やした年配の男。


 地味な服装で、周囲に溶け込むかのような装い。



 その男は今、扉の鍵に何かの道具をあてて微かな金属音をさせている。





 もうひとりの男は若く、眼鏡をかけていて服装は年配の男と同じ。



 緊張しているのか、辺りをキョロキョロとしている。




 商店街には人っ子一人いないが、念の為に気を配り続ける。



 日曜日をえらんだのは今日という日のためだが、人がこないとも限らない。




 左右から人がこないか、路地の角から誰かこないか。


 視覚や聴覚を研ぎ澄まして、神経質な挙動で警戒を欠かさない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る