異世界を全クリしたので、現実世界を攻略しようと思います。

エイデン帝国民

00.

 ゴトゴトと、車輪は石畳を打ち付けている。

 馬車が進むのは、舗装された街道。帝都はすぐそこだ。

「戦いは、終わったんだな」

 そう、しみじみと感じる。五年間にわたる長い戦いの日々も、漸く終わりを迎える。この世界には、真の平和が訪れたのだ。

「みんなは、これからどうする?」

 俺は仲間に尋ねた。

 彼らも、俺と同じようにこの世界へ召喚された戦士たちだ。

 苦楽を共にした、最高のパーティーだった。

 質問をしながら、俺自身、悩んでいたことがあった。この五年間、魔王軍の討伐だけを考えて過ごしてきたものだから、いざ平和な世界になると、何をすべきか見当もつかない。

 それは、仲間たちも同じだったようだ。彼らも腕を組んだまま、唸ってはいるものの、明確な答えは出せないでいた。

「……そうだよな。考えてみれば、俺たちは戦いの為に呼び出された存在だからな。でも、きっと直ぐに答えは出さなくていい」

 答えは要らない。ある意味で、それが俺の出した答えだった。

 きっと俺たちの日常に、これからの生活に、人生の意味が詰まっている。

 大丈夫だ。何故なら、俺たちは世界を救った勇者パーティーなのだから。

 ふと空を見上げると、一直線に走る白い雲があった。俺の元いた世界では「飛行機雲」と呼ばれていた。この世界では、翼竜が滑空するとあの雲ができるという。ドラゴンたちも魔王の呪縛から解き放たれ、今や空を自由に、優雅に、飛びまわっている。

 穏やかな日差しの下で――少し、眠たくなってきた。仲間の顔を見ると、やはり彼らも、うつらうつらと頷いている。

 帝都まで、もう少し眠っていよう。

 そう思い、目を閉じた瞬間――――。

「……ッ!?」

 馬車が、その車体を大きく傾ける。

 反動で、俺たちの身体は、宙へ投げ出された。

 突然の出来事。何が起きたのかも理解できていない俺は、飛び上がった視界のまま、受け身を取ることもできず――――そこで、俺の記憶は途絶えた。


 そして、目を開けると、そこにあったのは――五年ぶりの、現実世界だった。

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