第6話

―――

――――……



三寒四温。厳しい寒さの中に恐る恐る近づいてくる春の気配を感じる季節。


怖がらなくていいよ。早くこっちにおいでよ。

そう呼びかけても慣れる前の仔猫の様に逃げてしまう春が近付いてくるのは、まだもう少し先。


そんな季節。



水色の絵の具を汲みたての綺麗な水で溶かしたような空の下、転がる白と黒のボールをぼんやりと眺めていた。



高校三年生の私たちはもう授業らしい授業は無く、受験もあとは国立大学の後期試験を残すのみ。


殆どの生徒は四月からの行く先は決まり、長かった受験戦争から解放されあとは卒業式を迎えるのみ。


登校する目的は仲が良かった友人たちとの春休みの過ごし方の相談だったり、今までは煩わしく思っていた高校の教室や教師が急に愛おしく思えたり。そんな取って付けた様な感傷と思い出作りのため。


特に文系私立か専門学校を目指す生徒がほとんどの私のクラスは呑気に穏やかに、自習と言う名の自由時間を思い思い過ごしていた。



校庭では、男子生徒がサッカーをしている。


あの青色のジャージは私と同じ三年生。

あのクラスは一番教室が遠い理系の特進クラス。


一応授業の題目は“体育”なんだろう。

受験勉強でなまった体を思いっきり動かしている姿はとても楽しそうに見えた。

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