第2話

桜が咲き乱れる春。

新しくなる環境に期待と不安を忍ばせて、手をつないで学校に向かった。


――不安なのは桃子だけだろ?


りっくんはいつもバカにするように言うけれど、私が新しい環境が少しだけ苦手ですぐにお腹が痛くなることを知っていて、私が不安にならない様に手を繋いでいてくれる人だった。




蝉の声が咽返る夏。

そうちゃんとりっくんのお気に入りはプールと蝉取りだった。


――モモ、イチゴアイスだよね?


私のお気に入りはその帰りに食べるアイスクリーム。

そうちゃんはいつだって、私が欲しいものを私よりも理解してくれていて。

私が言うよりも先に手に取ってくれる人だった。




銀杏が黄金色に染まる秋。

運動会のヒーローは決まってりっくん。


――陸! 負けるなー!

――りっくんがんばれっ!!


私とそうちゃんは喉が張り裂けんばかりにりっくんの応援をして、りっくんが誰よりも先にゴールテープを切る瞬間、私は自分の事のように誇らしく嬉しかった。


運動があんまり得意ではない私と、普通なそうちゃんにとってりっくんは“自慢”だった。




木枯らしが吹きすさぶ冬。


――モモ、寒くない?

――桃子の手冷たいから嫌だ


二人と手をつないで歩く学校の帰り道が、どの季節よりもいちばんに大好きだった。





家がお隣さんで、生まれた時からずっと傍にいたそうちゃんとりっくん。


私はずっと、三人で一緒にいれると思ってた……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る