第12話

ふと近くの公園で、膨らみ始めた桜の蕾がライトアップされているのが目についた。


例年より遅い桜の開花に時期を少し間違えた管理者がいるようだ。




「今年も桜の季節だね。お花見、やるかな?」



「やるだろ。課長花見好きじゃん」




そんな事を考えながら口にするたわいない言葉にごく当たり前に和泉が相槌を打つ。




「課長胃弱いもんね。桜くらい見て癒された方がいいよね。あ。けど散桜だときっと泣いちゃうから早目にしないと」



「お前、そーゆー事言ってやんなって」




なんて、綺麗事言う和泉はコツンとあたしの頭に拳を置いて、けど耐えきれずに笑ってる。




「今日のあたしは課長に何言っても許されるよ」



「まあな。けど散々世話になっただろ」



「分かってる。尊敬してる。課長の為じゃなかったら今日こんなに頑張ってないわよ」




そう言えば、今度は少し苦笑いをした。

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