2 ずんだの登場

### 1. 面接会場


エレベーターが目的階に到着しないことに落ち着かないずんだもん。普段のずんだなら3階分くらい自力でジャンプするのだが、今日は面接、よそ行きの場でサイバネティクスを披露するわけには行かない。


やがてジョブ・インタビューがはじまる。


「あなたの強みを教えてください」面接官が質問する。


「超音速打撃、垂直12メートルの跳躍、剣術です。戦闘技術なら誰にも負けません。12年の東京大会では優勝しました」ずんだは自信を持って答えた。


「なるほど。では志望動機を伺います。どうして弊社に?」


「凶悪犯との戦闘で、僕の技術が活かせると考えました。僕は経歴書の通りアンドロイドです。普通の意味で死ぬこともありません。キラーコンテンツでなら腕が活きると考えました」


「アンドロイドということですが...現在の社会情勢を考えると...」


「私たちの権利は法で認められています」ずんだの目に一瞬鋭さが宿る。「琴葉市長が築いた基盤があります」


突然、ずんだは人の気配を感じて反応する。試験官のイヤーピースから音声が聞こえ、ドアが開く。武装した男たちが現れ、その後ろから結月が姿を見せる。


「君は合格だ」


### 2. 任務の開始


武装した部隊に案内されたずんだが部屋に入ると、茜と結月が待っていた。


「やあずんだくんだね」結月が笑顔で迎える。


ずんだは茜の存在に驚いた。「どうして茜ちゃんが」


茜は真剣な表情で言った。「ずんだもん、あなたに仕事をしてもらいたいの。キラーコンテンツをやって頂戴」


---


結月はガヴリロの動画を映写する。画面には荒々しい表情の男性が映っていた。


「前の市長を殺したのは俺。ここまではいいよな? 見てねぇ奴は俺の動画を見てくれ。今日は告知だ。あの娘さんは俺にリベンジするらしい。なんと市長選に立候補するんだと。機械の分際でよくもまあ。親の地盤と名声を相続する気らしい。俺は気に入らねえな。だから娘も殺す。だれでもいい、娘を殺した奴を副市長にしてやるよ。みんなのビデオ待ってるぜ」


結月は説明した。「この動画が公開されたのが180分前。琴葉ちゃんへの宣戦布告でキラーコンテンツが成立した」


茜は静かに言った。「ガヴリロを倒すだけよ。あとはずんだもん次第」


ずんだは驚いて目を見開いた。「まさか僕が討伐するんですか」


結月は微笑んだ。「君ならできるさ。友達のために凶悪犯と戦う。いい番組になるよ。それに...」結月は声をひそめる。「アンドロイドの名誉のためでもある」


### 3. ガヴリロの計画


一方、ガヴリロは豪勢な部屋で大きな柑橘類を食べていた。画面に映る自分の動画を満足げに見ながら、ヒットマンに指示を出していた。


「よし、行ってこい」


黒いスーツに身を包んだヒットマンが頭を下げた。「仰せの通りに。未来の市長殿」


「ターゲットはどうする?」ヒットマンが尋ねた。「殺すのか?」


「いや、今回は違う」ガヴリロは果物の汁を拭きながら言った。「まずは娘を捕まえろ。彼女を使ってお友達を誘い出す」


「ずんだを?」


「そうだ」ガヴリロは笑った。「あのアンドロイドだ。あいつは優秀なファイターらしい。俺のショーに最適だ。奴を倒せば、人間の優位性を示すことができる」


ヒットマンは無表情のまま頷いた。「わかりました」


### 4. 戦闘の準備


マイクロテレヴィジョンの特設室で、結月は準備を進めていた。


「太田さん、ずんだちゃんのケアを頼みます」


結月は続けた。「丸ごしで戦えとは言わない。君にアシスタントと装備を貸そう。サイバネティクス戦闘機の使い方は分かるね」


太田は表情の薄い老人だが、職人を思わせる雰囲気を持っていた。「さっそく装着しましょうか」


太田はずんだに最新型のサイバネティクス戦闘機を装着し始めた。「よかった。サイズもいい。あとは肌に合わせるだけですよ」


ずんだは驚きの表情を見せた。「すごい。プロ用の機体はこんなに軽いんですね」


「アンドロイド用に特別調整しました」太田は誇らしげに言った。「君のコア性能を最大限に引き出す設計です」


茜はそれを離れた場所から見守っていた。顔には心配と決意が混ざった表情があった。


一方、テレビ局の外では、石川が周囲を警戒していた。彼は双眼鏡で確認する。「くそっ、ヒットマンだ」


突然、耳を劈くような音が響き、テレビ局の窓が一斉に砕け始めた。


### 5. 襲撃


テレビ局内部では、計器が鳴り響き、異常値を示していた。


スタッフが叫んだ。「接敵まで時間がありません」


結月は興奮した表情で指示を出した。「カメラはいいな。全部撮影しろ」


その瞬間、ジェットパックで飛来したヒットマンたちが外から窓に機関銃を打ち込んだ。割れる窓。一帯の空間が破壊され始める。


ずんだは咄嗟に前に出て、重力波でシールドを張った。中にいる人々を守るように。


水面をきる石のように弾丸がはじけた。可聴域よりも低い音が振動として建物全体を震わせる。


「結月さん! 茜ちゃんをつれて奥へ」ずんだが叫んだ。


ずんだはヒットマンたちと交戦を始める。結月らは退避する。重サイボーグ同士の容赦のない戦闘が展開された。


石川も戦闘を開始していた。「持ちこたえろ!」彼は指示を出しながら、自らも敵を迎え撃った。

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