『ローバの休日』〜ノコピヨオンステージ《featuringモニカ》〜 in広島
かごのぼっち
第1話 ローバの憂鬱
はあ⋯⋯。
ローバのため息は加齢臭がすると思われがちだが、歯周病対策はバッチリしているので問題ない⋯⋯はずだ。
あたしは一枚の封筒を見つめていた。
『親愛なるローバちゃんへ ノコピヨより』
明日は知る人ぞ知る、否、知る人しか知らない、ノコピヨライブの日なのだ。この封筒にはその特別席のライブチケットが入っている。前乗りで現地入りする為に、このあと孫娘が迎えに来る事になっている。
気持ちで言えば行きたい、めちゃくちゃ行きたいのだ。
でも⋯⋯。
「怖いのよ⋯⋯ノコちゃん⋯⋯」
あたしは年金暮らしの老いぼれババァで、足も心臓もポンコツなんだよ。こんな状態でライブなんか行った日にゃ⋯⋯きっと皆に迷惑かけちまうことになる。
あたしはそれが怖い。
憂鬱だ。不安だ。アンニュイだ。気持ちがぐちゃぐちゃして気持ち悪い。こうなったら仮病を使って断ろう。
──ピンポーン♪
〚ローバちゃん、迎えに来ましたよ〜♪〛
嗚呼⋯⋯来ちまった。
孫娘のユイネちゃんの声だ。
孫娘に残念な思いをさせるのは気が引けるが、それ以上に迷惑をかけるよりマシと言うものだろう。
ユイネちゃんの顔見ると断りにくくなるので、モニターを観ずにインターホン越しに会話するとしよう。
「ごめんねぇ、ユイネちゃん? ちょいと体の調子が悪くてねぇ⋯⋯今回はやめとくよ」
〚ローバちゃん、調子悪いってほんと!? どこ? どこが悪いの!?〛
⋯⋯。
「ゲホッ! ゲホッ! 風邪かも知れないねえ」
〚それは大変!! ローバちゃん、病院行こう!!〛
駄目だ。裏目に出ちまった⋯⋯。こうなったら強行手段だ。
「病院なんて行かないよ!! 風邪なんか寝てたら治るんだい!! ほらっ!
〚もう、ローバちゃん!?
うっ⋯⋯これは効くねぇ。心が折れそうだよ、ほんと。
でも!
「連れてくってんなら力尽くで連れてったらどうだい!! やれるもんならやってみな!?」
〚もう! 仕方ないなぁ⋯⋯〛
⋯⋯諦めた?
──ゴソゴソ。
⋯⋯何やってんだい?
〚こんな事もあろうかと、カゴノさんから預かって来たんだからねっ!?〛
えっ!? ボッチちゃまが!? ユイネちゃんに一体全体何を持たせたってんだろう!?
〚超絶可憐天真爛漫幼女姫召喚!!〛
へっ!? 何!? 超絶可憐⋯⋯なにっ?
モニターを観ると無数のハートのエフェクトの中に、光輝く小さな人影が浮かび上がる。
キュルキュルキュピキュピキュルルンルン♪ ドアの向こうでとても可愛らしい効果音がした。
〚はわわわわわっ♡ モニカたんっ!?〛
〚あい! モニカでつ! 5つでつ! むふん! おねぇたまがよんだでつか?〛
〚うんうん! 私、ユイネが喚んだんだよ! こんにちはモニカたん♡〛
〚あい、こんにちわでつ!〛
も、も、も、モニカちゃん!? 本物!? いや、本物だよねっ!? これはいけない!! 見た目天使過ぎて、モニター越しなのに心臓がキュン死寸前だよっ!! 止まるからっ!!
〚モニカたん、来てもらって早々に悪いんだけど、お願いをひとつ聞いてもらえるかな?〛
〚なんでつか!?〛
〚この中にいるローバちゃんを助けてほしいの! ローバちゃん、お風邪で苦しいんだって!〛
〚それはたいへんでつ! ケルス! おねがいでつ!〛
〚任しときや!〛
ドカン!
「ぎゃん!!」コテ⋯⋯。
「あっ⋯⋯、ローバちゃん!?」
「むにゅ? ローバたん?」
「お嬢、これはアカン! おいっ、
「あ、そうだ!」
──ゴソゴソ。
「超絶回復系魔法生物召喚!!」
──シュルルンフワフワポワポワプリリン♪ 旋回する泡沫の中から乳白色のマシュマロボディをしたスライムが現れた!
「はわわっ!? マシュマロでつ!」
「お嬢、あれはホワイトスライムでっせ? それにしても超絶回復て⋯⋯?」
「ミルクちゃん! ローバちゃんをお願いします!」
「ミルク、わかった!」
⋯⋯今、ミルクって言った? フワフワして温かい⋯⋯心が⋯⋯ううん、心臓がとても楽になって来た。ああ⋯⋯何だろうこの優しい爽やかなハーブのような香り⋯⋯とても心が安らぐ。
「ローバちゃん、だいじょぶ?」
このスベスベしたマシュマロボディはまさか本当に!?
「ミルクちゃん!?」
「ローバちゃん、ミルク、ここにいる、よ?」
「まさかミルクちゃんにまで会えるなんて!? ユイネちゃん、どんな魔法を使ったんだい?」
「え? カゴノさんから預かって来た召喚陣を機動させただけだよ? なんでも博士に作っていただいたみたいだけど、召喚出来るのは二日間だけと言う制約があるみたいだね?」
「まあ! フミヤ博士がっ!?」
「うんうん♪ みんなローバちゃんの為に頑張ってくれたんだよ♪」
「⋯⋯でも、あたしゃ行かないよ!?」
「えっ⋯⋯どうして?」
「だってほら! あんたたちが玄関を壊しちまったんじゃないか! このまま行くわけには行かないねっ!?」
「そっか⋯⋯ローバちゃん、任せて?」
「任せるったっていったい⋯⋯」
ユイネちゃんはもうひとつ召喚陣を取り出して
「超絶技巧修繕大工召喚!!」
ボワワワワワワワンワンワ〜ン⋯⋯。真っ白な煙に包まれて、少し筋肉質なテカテカツヤツヤのオッサンが、テッテレ〜♪と言う効果音と共に召喚された!
何故かパンツ一枚だ。
「え⋯⋯?」
「え⋯⋯?」
「え⋯⋯?」
「ほえ⋯⋯?」
「回復する?」
「変態やがな!」
バッと、男はしゃがみ込んだ!
「いゃん! 誰が変態なんすか!? お風呂から出て着替えしてたらこんな所に⋯⋯って、ここ何処?」
「ローバちゃんのお家だよ?」
「おじたんはだれでつか!?」
「おう? はっ⋯⋯ま、まさか⋯⋯このキュンキュンと胸を刺激しまくる愛らし過ぎるお方は⋯⋯天下御免のモニカ姫にあらせられますか!?」
「あい! モニカはモニカなのでつ!」
「不肖私めは、大工職人のゲンと申します! 以後、お見知り置きを!!」敬礼!
「ゲンたんでつか、ゲンたんはげんかんをなおちてくれるでつか!?」
「ははっ! 姫のご意向とあらば、喜んで!!」最敬礼!
ゲンさんは一緒に召喚された大工道具を取り出して、玄関を修繕し始めた。とりあえず見るに堪えないので、ウマさんの着物でも着せてやるとするか。
「補修と言う形になるが、頑丈に仕上げておくよ!!」
「さすがゲンさん手際が良い!!」
「そっ、そんなに褒めても何も出ねえかんな!?」
「あんた、くだらないモノを出すんじゃないよ!?」
「とにかくこれでローバちゃん、ライブに行けるよね?」
⋯⋯まだ諦めてなかったのかい。
「ユイネちゃん悪いけどねえ、脚が萎えて上手く動かないし、混雑する人混みが怖いんだよ。それに行ったら行ったで感激して大泣きするに決まっているし、ただでさえブスだの何だの云われるのに、不細工面が余計に醜くなるに違いないよ。その上ポンコツエンジン搭載してるんだ、いつこの
「ローバちゃん、体、悪い、ミルク、いるよ? どうしても、行かない?」
「そ、それは⋯⋯」
「モニカといっしょだとイヤでつか!?」
モニカちゃんが、首をコテンと
「っ!? ⋯⋯そんなわけじゃあ⋯⋯ほ、ほら! ウマさんがこんなだろ? あたしゃ、ウマさんを放っちらかして、自分だけ良い想いをしようなんて事は、出来ねぇんだよ⋯⋯わかっておくれよ?」
バン! 机を叩く音。
⋯⋯ウマさん?
「おいブス!! そりゃあ違えんじゃねえか!? さっきから聴いてりゃ、なにしょぼくれたこと言ってやがんでぇ、べらぼうめぇ!! 勝手に俺を出しに使いやがってテメェの
「あんた⋯⋯」
「⋯⋯ああ、良いから行って来なよ?」
「はっ⋯⋯はははっ! ああ、どこの馬の骨だが鹿の骨だか分かんなくなったジジィに、ラッキョウやら説教やら喰わされちまったら情けないねぇ? わかったよ、行けば良いんだろ? こうなっちまったらガンジス川だろうが三途の川だろうが渡ってやろうじゃないの!! あんたたち、何処へでも連れて行きなっ!!」
──やったあ!!
⋯⋯ふふ。
どうしてこんな耄碌ババァにそんな真剣になれるんだか⋯⋯ああ、駄目だ駄目だ、歳なんてとるもんじゃないねえ、どうにも
こんな素敵な笑顔に囲まれて
素直になれないなんて、ねぇ?
──────────────────
友情出演
ローバ:@88chamaさま
ノコピヨ・ノコ:この美のこさま
ユイネ:結音(Yuine)さま
モニカ:歩さまの「モニかな」のキャラ
ケルス:歩さまの「モニかな」のキャラ
博士・フミヤ:@fumiya57さま
ゲン:🔨大木 げんさま
共演のご協力、ありがとうございます。
作品へのご意見、修正依頼などは随時受け付けますので、ご遠慮なくお申し付けください。
なお、このあとのお話にも登場いたします。
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