この作品の冒頭は、不気味な静けさと異様な団地の描写によって、強烈な興味を引き起こされる導入となっていました。封筒のしつこい勧誘、団地という閉鎖空間、誰も答えようとしない住人たち――それらが、主人公の「怒り」と「無関心を許せない正義感」のような感情と交差することで、物語に不穏な引力を与えていると感じました。
初めに受けた悲しみはなんとも理不尽なもので、乙女の心の空虚さと焦燥感を、読みながら心を一つにして感じてしまいました。しかしそれでも小さな一歩を踏み出して、他者と積極的に関わることで、彼女の見える景色が少しずつ明るいものに変わってゆく。誰の心にもあるかも知れない、ささやかな前進の記憶。それを思い出させてくれます。こういう小さな一歩こそが、人生の次のステージへつなげてゆく、大切なものなんですよね。