箱庭という閉ざされた世界の中で紡がれる、静かで残酷、それでいてどこか優しい物語です。
園芸師・木守調と、額から枝を伸ばし花を咲かせる異形の少女・花窪散という設定だけでも強く惹きつけられますが、「守り育て、やがて灰になる最期まで見届ける」という役割が、最初から切なさを帯びています。
「恋がしたい」と願う散の想いはとても人間的で、その願いを叶えるために調が相手を探そうとする姿が、ひたすらに不器用で誠実でした。
彼女を想うがゆえに、努力を惜しまない調の優しさが、読んでいて胸に迫ります。
救いを願いながらも、その行為自体が残酷にも感じられる構図が印象的で、読み進めるほどに余韻が深まっていく作品です。
恋愛モノの和風作品が多い中で、こちらは"特別な"尊い関係が築かれているのが推したいポイント。
村に根付く伝奇物語のクオリティが高く、現代にまで続く関係性がきれいにまとまっており、読了感が爽快です。
以下、あらすじ。
美しく花のように妖しいお嬢様:花窪 散。
実際、額から花枝を生やす異形の彼女は、身の回りの男性を虜にする程美しい「花窪」と呼ばれる存在。また、あらゆる面での成功や富を動かす恩恵の力を宿している。
それ故に、男女問わず争いの渦中に巻き込まれた痛々しい歴史があった。
目の色を変え襲おうとする者達から遠ざけ、そのお嬢様のお世話をするのは、作中の語り部である園芸師の青年:木守 調。
ある日「恋がしたい」と唐突に話したお嬢様の要望に、彼は応えようと奔走していく──。
この作品は様々な愛のカタチを教えてくれます。
愛か金か──を閉鎖的な空間で選ばねばならぬなら、どちらを選ぶか考えさせられます。
愛ではなく「"恋"がしたい」と願ったお嬢様の、ささやかな想いの行き先を見届けてほしいです。
彼らの置かれる状況は穏やかなだけではありません。
和やかな時間のあたたかな雰囲気。
一転して、人間の秘めている本性がじわりじわり垣間見える描写。
なにより作者様のていねいな綴りは読書好きを唸らせるものです。
そして、再読を強くおすすめしたい。
それが真の意味で物語の完成になることでしょう。
全15話の中編作品。
是非、ご一読を❀